高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【280】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
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【随筆】3・11に捧げる緑の雨
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随筆「『おかしな男 渥美清』小林信彦(著) 雑感」
2017/06/09
これを書こうと思ったのは、この本から伝わる熱気でしょうね。
それで引っ張り込まれたから読んで欲しいな、です。
しかし、良く考えたら僕が今四十代後半で何とか当時の状況想像出来るけど、三十代とかならどうかなとも思いましたが、書きますね。
世代のギャップは当然あっても、良いものは良いですよ。
『男はつらいよ』って映画は、多分皆さんも知ってますね。
渥美清と山田洋二監督のコンビの、国民的人気を博した映画です。
全盛期には正月とお盆には必ずやってましたね。
この映画を観て正月とお盆が来たな、と思われてた位の映画です。
映画シリーズだけで四十八作も作られてます。
これって実は、最初はテレビシリーズだったらしいですね。
個人的に僕はこの映画嫌いでしたし、今でも好きではないんですよね。
何故かと言うと、僕が本格的に映画にのめり込み始めた頃はもう古かったし、だけど田舎の映画館には必ず来るんですよ。
とにかく高校生の頃は、来る映画は全て観てました。
市内に二つしか映画館無くて、まだ高校生の頃はビデオは特別でしたし、映画館に行くと言うのが当たり前でした。
小便臭い映画館ですよ。
今は、その街には映画館も無くなりましたね。
二つの映画館は同じ経営者がやってて、片方では日活ロマンポルノもやってました。
この映画館の事を少し書きたいですね。
当時は入れ替え制は無くて、一日居ても良かったです。
僕は学校をサボると、映画館に行くかパチンコしてました。
八十年代の半ばの事なので記憶も曖昧ですが、当時新聞配達しててそうすると無料券を貰えました。
それで、映画に行ってましたし学校をサボってくる奴なんて当時もそれほど居なくて、映画館の人は無料券で一度だけとかで無くて何度も同じ映画なら入れてくれましたよ。
良いなと思ったら同じ映画を何度も観てたし、時間を潰す為に学校をサボって行くと一度観ても余程酷くない限りもう一度は観てましたね。
遊ぶ場所とか無かったしお金がそんなにあるわけ無いので、時には映画館で昼寝してましたよ。
ロマンポルノも高校生でも入れてくれてました。
最初はドキドキでしたが、段々パターン分かるしでドキドキはしなかったけど、性欲は持て余してたから映画館の暗闇で自慰行為をしてましたね。
こう書くと汚ならしいように思われるかも知れないけど、田舎ですし昼間からポルノとか観てるの少なかったし、高校生なんてそんな物ですよ。
一度だけ、警察が来るから今日は帰りなさいと映画館の人に言われた事がありますね。
補導されては不味いので逃げるように出ました。
完全に顔見知りになってたし、時間が空くとロビーに置いてるスクリーンやロードショーの雑誌を読んだり本を読んだりしてました。
土曜の夜はナイトショーってあって、それでも十時過ぎ位迄かなはっきり覚えていないけど、遅くまでやってました。
この時は他の学校の不良も来てて、トイレで一度だけ喧嘩になりましたね。
原因は肩がぶつかったとかそんなのですが、相手がバタフライナイフを出したのには驚きましたが、使えないんですね。
そういう物に憧れてただけのようで、そのままトイレの大きい方をするのに連れ込んで頭を突っ込ませました。
まあ、そういう事は珍しく無くてね。
学校同士の抗争みたいなのは馴れてましたが、興味も無かったですよ。
僕は不良だったかも知れないけど、そういう連中と付き合うの面倒でした。
それでも身に降る火の粉は払うって感じですね。
今の映画館のようにおしゃれでも無かったし、当時も既に映画は落ち目で何とかお客を入れようとはしてたようですが、なかなか入って無かったです。
ジャッキー・チェンが人気で、ジャッキー・チェン三本立てとかやってたけど、古いジャッキーの映画で二本は端役で出てるだけとかね。
まあ、地方に来る映画はそんな感じですよ。
必ず二本立てで一本が『男はつらいよ』なら、もう一本は洋画のアクションとかでした。
バランスなんて考えてないですよ。
それでもその映画館で色々過ごしたのは、今思えば良かったです。
そういうアットホームで小便臭い映画館等は、今はほとんど無いでしょうからね。
当時も既に映画は時代遅れでしたが、僕は映画が好きでしたしキネマ旬報は読んでました。
しかしキネマ旬報に載るようなのがなかなか来なくてそれは、苛立ちもありましたね。
そういう苛立ちの象徴が必ず来る『男はつらいよ』でした。
当時の高校生が、『男はつらいよ』観たい訳はないんですよね。
八十年代と言えば華やかな時代でナウな時代でしたし、これから来るだろう未来を明るく考える時代でした。
何かと言えば「ナウ」ですよ。
ナウなとか実際は使わなかったけど、テクノポップが流行り、この先コンピューターの時代になっても輝かしい未来が待ってると若い人は思ってたと思いますよ。
少なくとも今のようになるなんて、当時の高校生は思ってなかったですよ。
そういう時代に、『男はつらいよ』は全くマッチして無かったですし、実際八十年代の『男はつらいよ』は、完全にマンネリ化してたと思います。
もう渥美清のあの顔を観るだけで拒否反応と迄はいかないけど、とりあえず我慢の時間だな、でした。
二本立てで、もう一つは目当ての映画が有るからね。
だから僕はこの頃見たのは大抵覚えてるのに、『男はつらいよ』だけはほとんど覚えていないんですよ。
キネマ旬報等でも『男はつらいよ』は無視してる感じでしたし、もう良いだろうでしたね。
同年代の人間で、『男はつらいよ』が好きって人はまず居なかったです。
その流れか知らないけど、『釣りバカ日誌』も乗れなかったって同年代多いですね。
それか、『男はつらいよ』のせいで変なトラウマが残ってて、逆に『釣りバカ日誌』は良いよ、とかですね。
『男はつらいよ』は嫌いだけど、『釣りバカ』はましだよって事ですね。
僕の世代はそんな人が多いです。
僕は、どちらも苦手でしたから五、六才年下の女の子が『釣りバカ日誌』好きとか言うと、え!?でしたね。
映画をきちんと観ろよ、とか内心思ってましたよ。
そういう僕が今回小林信彦の「おかしな男 渥美清」を手に取ったのは、昭和の喜劇人の渥美清を描いてるのと小林信彦のこういう本は好きなんですよ。
小林信彦の小説も一時期は読みましたよ。
筒井康隆の影響からです。
当時は筒井康雄の推薦する物は、僕の中では外しませんでしたね。
色川武大、井上ひさし、大江健三郎、安部公房と、筒井さんが推薦するから読みましたよ。
小林信彦はこの中で、小説では珍しく外した人です。
それとキネマ旬報に、確か連載を当時は持ってたと思います。
はっきりしませんけどね。
それで小林信彦の本はけっこう読んだけど、いまいちハマるとかなかったです。
小林信彦のエッセイは良く読んだけど、小説家小林信彦は評価してないです。
小林信彦の『極東セレナーデ』は、確か新聞連載で最初は楽しみに毎回読んでたけど、段々飽きたのを覚えてますね。
『ぼくたちの好きな戦争』は、確か当時は小林信彦の大作として出されてますが、これもピンと来なかったし『唐獅子株式会社』も笑いが空転してるように思えました。
しかし、小林信彦の映画や本に対するエッセイは良かったです。
これから映画や文学は楽しいんだ、を教えられましたね。
小林信彦の小説は多分五、六冊以上読んでるけど、もう一度読みたいってないです。
エッセイは良いんですが、小説家としての小林信彦は僕は評価してないです。
横山やすしの事を書いた『天才伝説 横山やすし』は、まあまあでした。
偏りが大きすぎますよ。
横山やすしの全容を捉えてると言うより小林信彦自身が関わった部分を書いてるので、うーんって部分の方が多かったです。
横山やすしの生き方や彼の全容を知りたかったし、横山やすしは良く知ってましたから彼がどう生きたかを知りたかったですね。
『おかしな男 渥美清』は、僕にとっては渥美清に愛着もないのに読み始めたんですね。
しかし、当時の喜劇人には興味があったし、映画界にも興味があったから読み始めたのかも知れないです。
読み始めたら面白いのに驚きましたね。
一気に数時間で読みましたよ。
どうもこの作品はNHKか何かでドラマ化されたようで、新潮社から出てた文庫からちくま文庫に変わってますね。
内容は同じようなのでどちらを手にとっても良いのでは、と思います。
僕はちくま文庫を読みました。
NHKのドラマは観てないんです。
それでも渥美清と小林信彦の交流が面白いし、渥美清が『男はつらいよ』を掴むまでの様子は面白いです。
そこに重点を置いてる点が良いですね。
『男はつらいよ』も書いてるけど、それ以前の渥美清を主にしてるが今回成功してますね。
『男はつらいよ』以前の生々しい渥美清を描いてて綺麗事ばかりで無いけど、才気溢れる人物を上手く描いてます。
これが、『男はつらいよ』を中心にするとどうしても「車 寅次郎」ってキャラクターを崩さないように書いたと思います。
それでは面白くないですからね。
人間渥美清を描いてる所がとても良いですね。
綺麗なだけの渥美清でなくてね。
渥美清は、独特の立ち位置と凄みを持ってたようですね。
亡くなった時には寅さんが亡くなった寅さんがと言われたけど、渥美清という人物が独特だっのが分かり、寅さんでなくて渥美清或いは本名の田所康雄をもっと知るべきではと思いました。
彼は、相当な変わり者ですし独特の人物ですね。
それを小林信彦は見事に捉えてます。
これを小林信彦の最高作品では、と言う人が居ましたがそうかも知れないです。
小説家小林信彦としては不本意かも知れないけど、小林信彦ってこういうのでツボにハマると非常に上手く人物を浮き上がらせますね。
渥美清と小林信彦は、渥美清が五歳ほど年上ですが、初めて会って二人で朝まで話し込んだシーン等は面白いし、その後も付かず離れずで付き合ってるんですね。
小林信彦は、喜劇好きで鋭い観察眼を持っていたからこそ二十代後半の小林信彦と三十代初めの渥美清が、学生のように朝まで語り合うんでしょうね。
『男はつらいよ』に関しても小林信彦は冷静に観てますね。
初期の数作品と後期の数作品しか評価してないですね。
この頃の小林信彦の観察眼は信用できるのでは、と思わせます。
僕は、こういう書評は一番苦手なんですよ。
だからブログでも小説サイトでも滅多にやりません。
映画や音楽はある程度書けても本になると完全に駄目ですが、それでもたまには、チャレンジすべきではと書いてます。
当時の喜劇人が沢山出るけど、実際に見てる人はほとんどいません。
萩本欽一が少し出るくらいで後は古い喜劇人ばかりです。
有名な所では森繁久彌や藤山美や植木等が出ますが、細かい仕事などは知らないですからね。
それでもこれが読ませるのは当時の映画やテレビのシステムを書いてるのと、渥美清と言う独特なキャラクターのせいでしょうね。
それと渥美清が『男はつらいよ』によってどんどん国民的スターになるのに、小林信彦は作家として決して恵まれる訳ではないです。
その辺りの対比が面白いです。
それ、と国民的スターに一気になったかと言えばそうでも無いのに驚きますね。
徐々に火が着いていって、って感じです。
晩年の病と戦いながらの渥美清の状態は、読んでて辛くなるけど仕方ないですね。
僕も亡くなった時に最新作を観たけど、こんなに衰えてるのと驚きました。
しばらく観てないから尚更それを感じましたね。
小林信彦は、何処かに自分自身はブレイク出来ないのに、同時代の渥美清がブレイク出来たのを素直に喜んでないです。
何処かでひねくれながらも、小林信彦は冷静に渥美清を捉えようとしてます。
その辺りの心境も面白いです。
粘着質にここまで書いてるのは、他には無いのではと思います。
愛着が有りながらも、何処かで突き放して書いてますよ。
ラストの方で渥美清と最後に会った時の事を書いてるけど、ここがこの作品のポイントかも知れないです。
渥美清から、昔は二人とも気鋭だったのにね、と言われて小林信彦が本音を吐露する所ですね。
国民的スターになった渥美清が昔は新進気鋭だったと言うのは分かるが、自分自身はそんな物ではないと思う所に、成功した物と小説家として成功出来なかった人の差を感じます。
ある種の嫉妬心がこの作品には出てて、小林信彦の心情を渥美清を通して描いてるようにさえ思えます。
一人の役者、或いは男の伝記で有りながらも一種の私小説なのかとさえ思えます。
だけど、僕は小林信彦も渥美清もそれほど詳しくないしファンでは無いんですよ。
その僕を引っ張りこんで読ませた辺り、小林信彦の筆力でしょうね。
『男はつらいよ』と、渥美清の映画を幾つか見直してみようかと思わせます。
それと私見ですが、山田洋二監督も『男はつらいよ』の呪縛からなかなか離れられ無かったのでは、と思います。
『男はつらいよ』やりながらも、『幸福の黄色ハンカチ』等を撮ってるけど、年二作で国民的映画をどうするかに悩んだのでは、と思います。
『男はつらいよ』が終わってからの山田洋二監督の活躍を見ると、呪縛から解き放たれたのかなと思います。
山田洋二監督はそれほど好きでは無いけど、やはり良い監督ですよ。
批判されやすいのも分かるし、作品によってはまたこういうパターンかと思いますが、『たそがれ清兵衛』等は好きですね。
センチメンタルに流される癖が有るけど、少なくとも悪い監督ではないと思います。
僕の中では、絶対観たいって監督でも無いけどね。
喜劇人と言うか、戦後の一人の役者を冷静な目で捉えた良い本だと僕は思いますよ。
「寅さん」のイメージを見事に覆してますし、おかしな男と言うか異様な男、と言う部分もえぐってますよ。
様々な読み方が出来るし、特に知識が無くても読めます。
僕も、名前は知ってるけどって人が沢山でますからね。
『男はつらいよ』も苦手で、小林信彦もそれほど好きでない僕が面白く読めたんですからね。
昭和の映画史や喜劇史が好きな人は読んで欲しいですね。
それと。一人の奇妙とも言える映画スターがどうやって出来たかも興味深いです。
おわり
高山の作品紹介
次回は随筆「母に対して思う事 雑感」
「ガーターベルトの女」~映画化のために
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「新・ガーターベルトの女 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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