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ワコのあるきかた15  手紙・『こゆびのかお』のエピローグ


 逢えてよかった 諦めないでよかった
                  桜乃いちよう

 ワコ、こんにちは。
 この手紙はワコには届かないと思いますが、ワコが読んでくれていると思って書いています。

 
 あれから元気で暮らしていますか。

 あのひとときは、とても楽しい時間でした。
 ワコと会い、ワコと話し、ワコと結論を出していく作業をしてみたら、不思議なことに私の人生は変わりました。
 初めはワコを助けたくて、助けたくて、その気持ちだけだったのに、気がついたら、私の今の気持ちもとてもよく整理できていたのです。
 ワコの「現在」に起きたことを、誰かや環境に任せないで、ワコと話し合えて解決に向かうことができたこと、本当によかった。
 冷静にものごとに向き合い、ひとつひとつ整理することは、私にとって、本当に大切なことだったのです。

 たくさんの、日々起こる出来事は、いつか自分で整理して行かなくてはなりません。
 その時は、自分のせいじゃないと、自分は悪くないと思っても、心が成長していくとすこしずつものをみる視点も変わり、誰かのせいではなかったことや、誰もどうにもできなかったこと、その時の背景がわかってくるのです。
 そして、自分で立ち向かえることがあったかも知れないと、思うことも生まれてきたりします。
 たぶん、多くの人はそういうことができるようになって初めて、
「大人になった」
 と思うのかも知れません。

 ひとは誰も、たぶん、突然おとなにはなれないみたいです。
 いつかこどもを卒業しなくてはいけないのに。
 ワコ、あなたとたくさん話し、あなたと向き合えたおかげで、私もようやく、
「こども」
 の自分とさよならできそうです。

ワコはどんなふうに、これかに生きていくのでしょうね。
 私が生きた、同じ年頃の時と、少しちがう人生は、どんな人生なのでしょう。
 とても不思議で、とてもわくわくしてきます。


 ひとつひとつの出来事に、どんなことを感じるのか、または感じないのか。
今の私からは想像しようもない、ワコの新しい人生がそこにあります。
 どうか、悩みながら、ゆっくり歩いて下さい。

 たくさん本を読んだときに、世界中で生きているこどもたちの環境と、自分の環境を、うまく混ぜ合わせて、いろんな可能性を想像できますように。
 友だちといい時間を過ごせますように。
 たとえ孤独を感じても、退屈な日があったとしても、心の持ち方を少し変えれば、ワコはいつも一人ではなく、いつでもそばに話しかけることのできる人たちがいると思うのです。
私も、心の中にいつもいます。
 どうぞ、それを忘れないでね。

 すねないで、どんどん周りの人に話しかけて、泣いて笑って、感じて、思って、すてきな冒険を続けてね。

 私もワコに笑われないように、これ以上すねないで、さぼらないで、おとなの人生を静かに生き抜いてみようと思います。せっかくの機会だから。

 お互いの人生を、それぞれ別に、そして一緒に、力強く歩いていきましょう。

 ワコ、ありがとう。
 いい経験をさせてくれて。
 大切なことに気付かせてくれて。
 ほんとうにありがとう。

 これからも、よろしく。

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