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深夜ラジオは人生賛歌だ

深夜ラジオが好きだ。
芸人たちの掛け合いに涙が出るほど笑ってしまう。
特にオードリーのオールナイトニッポンは、もうここ数年はほぼ毎週、聞いている。
あとは、テレビ東京の佐久間宣行さんのオールナイトニッポン0、ハライチのターン、宮下草薙の15分、空気階段の踊り場を毎週聞いている。リアタイではなく、ほとんどアプリのタイムフリーなどで聞いているが、オードリーだけは、放送日が土曜日なので、夜更かしを決め込んだ日は布団の中で、笑いをかみ殺して聞いている。若林の誘い水に乗っかってしまいコメントした春日に若林が逆ギレするくだりと、流れるように悪口をいう若林がめちゃくちゃ面白い。春日は、まぁ普通だ。(ごくまれにフリートークがバカ面白い回もある。)

最近、ラジオに関する小説を2本読んだ。
一つ目は、『明るい夜に出かけて』という佐藤多佳子の小説。
これは、近年、ラジオスターと言われているアルコアンドピースのオールナイトニッポン(以下、ANN)のリスナー同士の交流を描いた作品だ。
あらすじを説明すると大学に進んだはいいが、学生生活に身が入らない主人公の富山は、大学を休学しており、コンビニの深夜バイトのみが社会との接点。フリーターのような生活を送っていて、唯一の楽しみは、アルコアンドピースのANN。以前は、熱心なハガキ職人だったが、あることをきっかけで、投稿を辞めてしまう。ある日いつものように働いていると、癖のある女の子の客が、アルコアンドピースの番組グッズをつけていて…。孤独だった青年が、ラジオをきっかけに、人との交流を描いた青春ドラマ。

もう一つは、『どうかこの声があなたに届きますように』という浅葉なつの小説。
地下アイドルだった小松奈々子は、あるショッキングな出来事をきっかけに表舞台から去ってしまう。身を潜めるように生活をしていたある日、前触れもなく、急にラジオのアシスタントのオファーを受ける。突然のことに戸惑う奈々子だが、“小松夏海”という新しい名前と共に新しくラジオの世界に飛び込んでいく。

ザックリだが、『明るい夜に出かけて』はリスナーが主人公で、『どうかこの声があなたに届きますように』は演者が主人公だ。(『どうか~』は、章ごとに語り手の視点が変わり、リスナーや制作チームのスタッフも出てくる。)
どちらも良い作品だった。特に、『どうか~』のほうは、ラジオの制作の話も細かく描かれていた。
『どうか~』の物語のなかでリスナーを経てスタッフとなった青年が、「ラジオが基本的に一方通行で、つけっぱなしにしとけば、勝手に始まって勝手に終わる。けど、投稿などで近づこうと思えば近づける距離感がいい」と話しており、また別のリスナーが「私がどんなに立ち止まっていても、毎日毎日ラジオは流れて日々を更新していきます。~中略~変わらないものは変わりゆくものの中にこそ存在するんじゃないかって」と語る。
どちらもすごく腑に落ちた感覚があった。
その距離感でいてくれるから、ラジオが好きだし、どんなに苦しい時期があってもラジオは日々を更新してくれる。
自分が、本とラジオ・音楽が好きなのは、視覚と聴覚のどちらかしか使わないからなのかなと思った。入力は一つな分、それを補うための想像の余白があるからなのかなと思う。

ラジオを聞いていると、みんな頑張って生きているなと思う。岩井だって、こないだ電動自転車の通販サイトで詐欺にあっていたし、若林も膝を壊すし。関わっている人だってそうだ。
特にツチヤタカユキの『笑いのカイブツ』など、ハガキ職人から放送作家見習いになった青年の話など圧巻だ。
どんなに日々が苦しくてもきつい時期があっても、ラジオのパーソナリティたちが笑わせてくれる。彼らの日々の出来事や苦しみを笑い話にしてくれる。ラジオには本当にいつも救われている。
たくさん笑って日々を生きていきたいと思っている。

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