〜第2回〜「茅の輪神話」
日本各地の神社で、6月になると夏越(なごし)の祓が行われます。
穢れを祓い、疫病退散を祈るこの行事。
ここで行われるのが「茅の輪くぐり神事」です。
鳥居に設置された大きな輪っかを、一度は見たことがあるのではないでしょうか。
なぜ輪っかをくぐると「祓い」になるのか。
実はこれ、氷川神社の御祭神・スサノオノミコトの神話に基づいた行事なのです。
時は古代。
昔、北の海に住んでいた武塔の神(スサノオノミコト)が、南海の神の娘に求婚をするために出かけ、途中で日が暮れてしまいました。
そこでその地で暮らす将来という二人の兄弟に「泊めてほしい」とお願いをしたところ、豊かな弟・巨旦将来は宿を貸さず、
一方、貧しい兄・蘇民将来は宿を貸し、粟柄で席を作り、粟飯などの御馳走でもてなしました。
その後、何年か過ぎ、武塔の神は八人の子供を連れて再訪。
そして蘇民に「昔の親切に応えたい。お前の子供や家族は?」とお尋ねになりました。
蘇民が「私には娘と妻がおります」と答えると、「では茅の輪を作って腰の上に着けなさい」とおっしゃいました。
蘇民は言われた通り、茅の輪を作って腰に着けさせました。
そしてその夜、蘇民の娘ひとりを残し悉く死んでしまったのです。
そして武塔の神は「私はスサノオノミコトである。後の世に疫病があった時には、蘇民将来の子孫だと云い、茅の輪を腰に着けた者だけは疫病から逃げることができよう」とおっしゃいました。
腰につけていた茅の輪が、時が過ぎるにつれ大きくなり、今は鳥居に設置されるようになりましたが、それは同時に、私たち日本人の「疫病が消えてほしい祈り」の強さに他なりません。
そしてその祈りに応え、古代からスサノオノミコトは見守ってくださっているのです。
〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕
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