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~第99回~「スサノオノミコトと私たちの暮らし」

『古事記』や『日本書紀』などに記された神話は、私たちに日本の風土を創り育んでくれた神々のお姿を伝えています。
氷川神社の主祭神・スサノオノミコトの逸話も多く記されておりますが、そこには暮らしを支える衣食住の源をお生みになられた姿が書かれています。

まず「衣」と「食」。
『古事記』によると、高天原から追放された後のスサノオがオオゲツヒメという女神に食物を求めた時、オオゲツヒメが自分の鼻と口と尻から様々な美味なものを取り出して調理し盛り付けました。
すると、それを見たスサノオは憤慨してオオゲツヒメを殺してしまいます。
その時、オオゲツヒメの頭から蚕が、目から稲が、耳から粟が、鼻から小豆が、陰部から麦が、尻から大豆が生じました。
この時、蚕=絹つまり「衣」と、さまざまの五穀、つまり「食」が誕生したのです。
※『日本書紀』ではツクヨミノミコト(月の神)がウケモチノカミという女神を殺します。

そして「住」。
「日本書紀」にスサノオノミコトが息子のイソタケルと筑紫の国から始めて大八洲国、つまり日本各地に種をまきはじめる神話が記されております。
スサノオはアゴの毛を抜いてスギに、同様に胸毛をヒノキに、尻の毛をマキに、眉毛をクスノキと御身体の体毛から様々な樹木をお生みになりました。
さらに、それぞれの樹木に役割を与えます。
スギとクスノキは船、ヒノキは家、マキは大事な人が亡くなった時の棺に…と。
こうやって生まれた数多の樹木は、子供たちであるイソタケルとオオヤツヒメ、ツマツヒメの三柱によって全国に植えられました。

スサノオノミコトは荒々しい神様という印象が強いですが、実は私たちの衣食住を整えてくださった神様なのです。

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〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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