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~第105回~「天之冬衣神の話」

天之冬衣神(あめのふゆきぬのかみ)をご存じでしょうか。
氷川神社の主祭神である須佐之男命(以下、スサノオノミコト)の系譜に見え、淤美豆奴神(オミヅヌノカミ)と布帝耳神(フテミミノカミ)との間に生まれた神で、刺国若比売を娶られ、そして生まれた神様が大国主神です(※『日本書紀』正伝ではスサノオノミコトの息子)。
『古事記』においてはスサノオノミコトの5世孫とされております。

『日本書紀』に5世孫は天之葺根神(アマノフキネノカミ)とあり、『日本書紀』八段一書四に、スサノオノミコトが草薙剣を天上に奉献するのに遣わしたのが「五世の孫、天之葺根神」と記されています。
つまり、天上界である高天原を追われたスサノオノミコトに代わって草薙剣を天照大神に奉納した神こそ、この天之葺根神。
天之冬衣神は、この天之葺根神と同一とみる説もあります。

ここで天之冬衣神の「冬衣」に注目しますが、冬衣とは文字通り冬に用いる衣服であると言われております(※衣(キヌ)は、一般に衣類の生地を指します)。
そして冬は「フユ」と読みますが、これは「増ゆ」や「殖ゆ」という意味を内包しており、この神様の名前は衣類の豊饒を称えているものであると解する説もあります。
さらにこの神名については、そもそも名前を誤写し、元来「由布衣神」(木綿の衣の神格化)だったものとする説もあります。

スサノオノミコトは姉神の体から私たちの生活を支える食物(穀類)を産み出し、御身体からは様々な樹木を産み、その使い方を私たちに導いてくださった神様です。
その子孫神が私たちの体を守ってくれる衣の神様であることを考えると、改めて日々の生活にスサノオノミコトやその子孫の神々が深く関わっていることに気がつきます。

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〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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