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台北国立芸大の関渡美術館での黄先生との再会は何の予兆か?/一日一微発見416

台北の最終日。午後イチに、コロナの最中に士林にオープンした台北パフォーミングアーツセンターTPACを見に行った。レム・コールハースが設計し、10年間かかって出現した「異様」な施設である。黒いキューブから「球」がはみ出し、それを細い2本の足が支えている。それが駅の正面に出現しているのだ。

士林と言えば夜市で有名だ。その雑然とした食の屋台の魅力で、多くの観光客を集めてきた。その駅前に、異様な「デコンストラクティブ」な建物が出現しているのは圧巻である。

僕はレム・コールハースの戦略的思考や、彼が構想して実現化した建築物に魅かれて「建築巡礼」してきた。この夏もポルトガルのポルトにある音楽センターであるカーサ・ダ・ムジカを見たばかりだ。それは不揃いの多面体、まあ、いびつな結晶体であった。

台北パフォーミングアーツセンターは、コロナのさなかにオープンして、SNSで話題になっていたのでぜひ見たいと思っていた。
コールハースの建築の面白さは、彼の究極的な「合理性的」な思考の結果、逆にアンチ美学的な結果になっているところだ。

僕と渚はネットでこの建物の見学ツアーがあることを知って出かけた。劇場の1階で集合時間をまって、建物の細部を見る。

ヘルツォーク&ド・ムーロンならばキチンと仕上げるところをコールハースは「はしょる」。
合理のポイントがはっきりしていて、ポイント以外は「どうでもよく」見える。それを僕はアンチ美学だと言うのである。

よく知られているようにコールハースの建築のメソッドは都市をリサーチしつくし、その解として建築を提出するところにある。
本当かウソかどうかはわからないが、コールハースはこの建物の球のアイデアを士林の夜市の屋台で使われている火鍋から得たというギャグのような話もある。

ともあれ入口には、ツアー用のエレベーターがある。つまりはこの建築物はその内側を外通路が貫通しているところが彼がこだわったコンセプトのようだ。内と外を錯乱させること。

長いエレベーターを乗った果てにそれを降りると、今度は長い階段が続く。やがて急にレストランの中に出て、我々は店の客にジロジロ見られながら、さらに続くエレベーターで上方に向かうのだ。
やがて上に出ると、そこにはのぞき窓があり劇場の内部を見ることができるのだ。
言いわすれたがこのツアーは、なぜか屋上をのぞいて、途中に撮影禁止なのである。

今回の台北ビエンナーレでも印象的で共感したのだが、絵画や立体作品というより、非物質的なテンポラリーのアート、つまり音響や映画が生成する時空に次なるモデルを見ようとしていたことだ。

コミューナル再構築であり、ぶっちゃけ言えば「お祭り」への志向と言ってもいい。それは士林の喧騒とパフォーマンスはよく似合う。誰が考えたのかは知らないが悪くない。そしてそこにデコンストラクション脱構築的なレム・コールハースの建築とはよくできた話だ。

さて、この流れで「ふと」思いついて近所の国立台北芸大学の附属美術館である関渡を渚が検索したところ、なんと台北ビエンナーレで出会ったリ・イファンの作品が出ているではないか。

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