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微炭酸なテレビ

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M-1グランプリ2023の感想 〜ツカミが一番ウケちゃだめ〜

ツカミが一番ウケる漫才ではだめ 今回敗者復活から決勝に上がってきたコンビ、シシガシラに対して松本人志はこうコメントした。 「ツカミは面白かったんですけどね〜」 もちろん漫才においてツカミは重要だ。一秒でも早くお客さんの心を掴むことが、その後のネタの受け具合を変える効果があるとぼくは思う。しかし一方で、ネタの中で一番面白いのがツカミだとそれはバッド。漫才は後半につれて勢いを増すことが良いとされており、ネタの中でツカミを超えるボケがないのであれば、漫才の印象としては尻すぼみに

M-1グランプリ2022の感想〜8分のネタができた幸運〜

今年のM-1も面白かった。感想をつらつらと書いていく。 決勝の人選 そもそも決勝進出者を見て思ったこと。それは「ボケが強い漫才が勝ち始めている」ということだ。かつては「手数論」なる言葉が生まれた通り、M-1という"競技"を勝つためには、ボケの"手数"が最も重要視されていた。ボケ一つ一つの強さよりも、一つのネタにいくつボケを入れ込めたか。それにより、4分という枠の中で「笑いの数」が「笑いの量」を担保し、高得点につながっていた。 しかしながら、今回残ったのは「手数」とは別の

天才・藤井聡太の前に座った男の物語

将棋の藤井聡太四冠のドキュメンタリーを観た。 タイトルに「藤井聡太」とあるが、内容は豊島九段との竜王戦にフォーカスした内容であり、「藤井聡太」の話というよりは「藤井と豊島」であり、もっと言えば「藤井を前にした豊島」って感じで、なんならこのドキュメンタリーの主人公は豊島九段だった。 やはり藤井聡太は天才のようだ。トップ棋士が100人いたら100人指さないような手を竜王戦の土壇場で繰り出し、「最も自然な手ではないですが、選択肢には入る手だとは思います」と飄々と答える藤井聡太。

THE W2021の感想 〜大会最大の発見は天才ピアニストの竹内さん〜

THE W2021が終わった。決勝は3-2-2の超接戦でオダウエダに決まった。大会全体として序盤なかなか爆発がない中で、実力者がしっかりと結果を出し、最終決戦の3組は本当に良い三つ巴となった。 四番打者が先頭打者になってしまったヨネダ2000 この日、大会にとっても本人たちにとっても最大の不幸になってしまったのは、A組トップがヨネダ2000になってしまったことだった。M-1グランプリの予選動画が配信されたタイミングで、お笑いファンの間で話題となっていた彼女たち。この日も話

オードリー若林になれる男が現れた日

「あちこちオードリー」が面白い。居酒屋を模したセットの中でオードリーの2人がゲストに対し、芸能界での立ち回りや戦略を深く聞き出していくバラエティ番組である。 この番組で大きく発揮されているのはオードリー若林の「聞き出す力」である。もともとは番組プロデューサーの佐久間さんが「オードリーのラジオのゲスト回が面白い」という理由で、ゲストを迎えたトークバラエティをオードリーMCで始めたとのことだったが、その能力が遺憾なく発揮されていて、その狙いが的中したと言える。 そんな中、10

キングオブコント2021の感想 〜伝説の回にはいつもニューヨーク屋敷がいる〜

キングオブコント2021が終わった。終わってみれば、途中で小峠さんが「伝説の回になるんじゃないか」と言っていたが、本当に伝説の回になったように思う。 キングオブコントに関わらず、賞レースというのは主に2つのエンターテイメントが存在すると思っている。それは「ネタの面白さ」と「それがどう評価されるか」という部分だ。賞レースでは各コンビのネタが採点され、それが結果的に優勝者を決めることになる。したがって、「どう評価されるか」が結果を変えてしまうものであり、その意味で審査員の役割は

『キョコロヒー』が面白い。齊藤京子の個性とヒコロヒーの実力

『キョコロヒー』が面白い。日向坂46の齊藤京子と、ピン芸人ヒコロヒーの深夜バラエティ番組。バラバラ大作戦というテレ朝深夜の枠の中で始まったこの番組は、バラバラ総選挙というファン投票企画で1位を取り、この10月から12時台へと「昇格」を果たした。 この番組の魅力はなんだろうか。ヒコロヒーは元彼(本人曰く"グレーな関係")から「あの番組はアイドルの子が面白いだけ。お前(ヒコロヒー)はそれをアシストしているだけ」と言われ、ブチギレて破局したとのことだが、個人的には「そのアシストが