2019劇場映画プレイバック・中編

前編に続きまして。エンドゲームのバレを気にする人はもう観てると思いますけど、気にする方はご注意を。

7. キングダム


原作は人気を知りつつも触れていなかったのですが。佐藤信介監督は思い入れのある方で。

原作が大好きな(というより人生が狂った)「図書館戦争」シリーズは、「最高以上」のメディアミックスでしたし、「GANTZ」も(シナリオは置いておくにしても)映像のインパクトは格別でした。生っぽいけど映えるCG使いと、下村勇二アクション監督と組んでの生身の人間の躍動感が大好きで。

そして今回の「キングダム」は、予告編での誘引力がものすごくて。昔から父が遊んでいた無双・BASARAシリーズに親しみ、様々なバージョンの三国志を読み、「レッドクリフ」での大合戦スペクタクルに歓声を上げていた身としては、日本クリエイターによる古代中国戦記という時点で嬉しいですし、スケール感も剣劇のクオリティも素晴らしくて。

武器による合戦風のぶつかり合いだけでなく、地形を生かしたアクロバティックな立ち回りも満載で。
信(山崎賢人くん)の素早くと野性味あふれる剣さばきをはじめとして、各キャラのスタイルの違いがしっかりと味付けされていたのが素晴らしかったです。「図書館戦争」で玄田隊長を演じていた橋本じゅんさん、「刀剣乱舞」で大太刀を演じていた阿見201さんといった面々も、斬新な戦い方で楽しませてくれた……のですが。

白眉として挙げたいのは、坂口拓(TAK∴)さんによるボス・左慈です。
拓さんというと、アクション業界では無二の存在感を放つ大物(多分)でして。一時期は引退もしていたのですが、RE:BORNというアクション映画と共にスクリーンに舞い戻り。

やっっっばくないですか、この動き!
(今作でのアクション監督)下村さんと共に、「ウェイブ」なる身体操作術を駆使した新次元の近接戦闘を見せてくれた「RE:BORN」に、僕はとてつもない衝撃を受けていまして。

劇場行きの決め手も、拓さん参戦と聞いたからだったんですよね。
そして期待以上でした。序盤での一振り三人殺しに始まり、クライマックスでの王宮戦では剣が分裂したかのような動きを見せ。苦戦する信に説教したり、取り囲んでいた役人たちを邪魔そうに斬り捨てたりと、悪役っぷりも見事でした。

下村さんの「すごいっしょ、彼?」という表情が浮かぶような、熱い文脈の出演でしたね……佐藤組ですし、いつか来るであろう図書戦続編で、岡田師範と日本最強マッチが組まれると信じています。

ONE OK ROCKの主題歌も良かったんですよね。壮大で胸が震えるバラード……「るろうに剣心 伝説の最期編」や「龍が如く 維新!」でもバラードの主題歌だったんですが、とてつもなく画に映える。

8. アベンジャーズ/エンドゲーム

「アイアンマン」公開の頃(中学生)も、それからしばらく後も、MCUの作品タイトルは認知していて(ユニバース構造とは知らないながらも)
ただ、そんなに惹かれなかった、むしろ父や弟が興味を持っているのに反して敬遠していた、そんなスタンスだった記憶があります。

当時、アメリカの超大作から距離を取りたがっていたというか、アンチどメジャー主義、国産カルチャー主義だったんですよね。加えて「キャプテン・アメリカ」とかも、「なんだこのアメリカンなイデオロギー満載のキャラは……」とロクに調べもせずに考えていた記憶があります、その頭を盾で殴りたい。

そんな僕も、「アベンジャーズ」のコンセプトにはオタクアンテナが反応して。「この人たち、集まるのね?」と認知し、それから数年たってやっとMCUの履修を始めて。

まあ、最高に面白かった訳ですよ。
世界トップクラスの環境と創意工夫に満ちたアイデアで放たれる、幼年から憧れ続けた「ヒーロー」の映画に、やっと「どメジャーの力」を再確認しました。

そして「インフィニティ・ウォー」からは劇場に行き、あの衝撃にぶん殴られながら公開を指折り待ち、エンドゲームです。

最高のクライマックス30分。物語の「枠を超え」「集う」クロスオーバーの最高到達点。(全作は観ていないですが)これまでに追ってきた十数作での、数十人のヒーローたちの軌跡と絆が、夢に見た「アッセンブル」の光景と共に涙腺を溶かしていきました。3000回愛してる。

……それはそうと、やはりナターシャの結末は納得いかないんですよね。あれ以外にストーン攻略の道があったかと言われると自信はないのですが、特定キャラに強すぎる思い入れをしてしまう気持ちが分かる身としては、ナターシャファンの心境たるやと案じてしまいます。今度の単独映画で救済あればいいのですが。

後、一次創作で別シリーズをリンクさせようと企んでいる小説書きなので、「絶対にうちの子エンドゲームをやるぞ」という野望が芽生えました。その前に完結させようね。

9. 愛がなんだ

普段は観ないタイプの作品なんですが、口コミが気になって。TBSラジオのアフター6ジャンクション(アトロク)で、映画監督の三宅隆太さんも絶賛していましたし。

若者の一方通行が交錯する恋愛群像劇……というより、「恋は盲目」を深刻に拗らせている人たちが、それを自覚したり指摘しあったり、狂い続けるのか背を向けるのか選んだり、というストーリーだったと思います。

僕自身がカクヨムで恋愛が中心になる話を書いているんですけど、中心にあるのって「好きになっちゃったものは仕方ない」「好きになってもらえないのも仕方ない」なんですよ。
頑張って好きになってもらおうってキャラもいるんですけど、ままならなさが先行することが多くて。

だから今回のテルコ→マモ→すみれの、ままならない片想いの連鎖は刺さって。それでいて、恋人関係ではないのに恋人らしい営みはガッツリ、という風景は(未成年マインドの僕には)奇妙で。
テルコとマモのじゃれ合いが物凄くキュンと来るのが、「けど付き合ってない」の奇妙さや辛さをより引き立てているのが凶悪でした。

最初はテルコに感情移入していた分、マモのつれなさが嫌で、「こんなに可愛い子に、こんの薄情者!」くらいに思っていたんですけれど。
途中のクラブでの飲み会シーン、マモがすみれの隣に座りつつ、すみれと別の男との会話に頑張って入ろうとする……という仕草に、「お前は俺か!?」という感情に襲われて、それがひとつのハイライトでした。何気ない仕草で印象が覆されるの、いいですよね。

とにかく、役者さんたちのキャラとの一体感と、会話の緊張感から来る
「ギュルッギュル」な観賞感は格別でした。演技を楽しみたい人には是非オススメです。
そして監督の今泉さんによる、仙台オールロケの「アイネクライネナハトムジーク」も地元民として気になっている所です。

10. ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

「シン・ゴジラ」こそ生涯ベスト級とはいえ、歴代ゴジラにはそんなに思い入れはないですし、ハリウッドゴジラはなおさらかな……という気分でいたのですが。
TLのカルチャー・キュレーション・オタクの皆さんの反応がすごくて。

加えて、この劇伴制作シーンに度肝を抜かれまして。
オーケストラとクワイヤによる伊福部テーマは分かるとして、法被の男たちに読経するお坊さんですよ? 国産作品でもレアな融合。

それで観てみれば、展開の歪さとかはさておき、
「怪獣! バトル! 祭り! GOD!!」
という熱情が見事にスクリーンに表れていて、最高に楽しかったです。

巨体に神々しさをまとった怪獣たちの激突を描く「角度」が素晴らしかったんですよね。足下からとか、縫うような視点移動とか。肉弾戦に光線の撃ち合いにと、あらゆるアクションを存分に振る舞ってからのラストのゴジラの姿、滾った!


従来の特撮ではできなかったであろう描写を、これでもかと尽くすことで、日本の先人たちへの敬意を表わしているようでした。
あくまでやられ役とはいえ、人間側の兵器描写も楽しかったです。的がデカイ、最高。

アトロクの映画批評でも扱われていたんですけど、そこにゴスペラーズの黒沢さんが「もう脳内で補完しなくていい所まできた」というメールを送っていて、まさにそんな映画だったと思います。実写(というよりはCG)におけるモンスター表現のハイエンドだと思います。

……しかしまあ、ゴジラ奉祝を作中でもぶちまけている振り切りっぷりは清々しいものがありましたね。
後、(渡辺謙さん演じる)博士に関しては「日本人にそれやらせる?」みたいなモヤモヤがなくもなかったんですけど、その後のまさに「神話」的なカットと謙さんの表情に納得させられました。

11. スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム

MCU版スパイダーマンで、ポスト「エンドゲーム」の一発目なのですが。
思い入れとか好みでなく、「面白さ」で選ぶとしたら今年トップです。

サノスの人類半減計画から復活したピーター(スパイダーマン)が、ヒーローのことを忘れて修学旅行に繰り出すはずが、出先で事件に巻き込まれ……という展開なのですが。

まず、ストーリーの捻り方、「なんかアヤシイ」の種明かしからのピーターの追い詰められ方が最高に面白くて。予想を裏切る手際の良さも、そこで使われる仕掛けも、狡すぎる。

結騎さんもこちらで記しているんですが、「ヒーロー愛を逆手に取られた」という、背筋がゾクっとするような筋書きでした。

ただ、ゾクッとさせて終わらないで、その仕掛けに対して「スパイダーマンだからこそ」の技で立ち向かっていくという展開、あまりにも、あまりにも熱すぎた……
勿論、戦闘描写は最高でした。NYのビル街ではなくヨーロッパの観光スポットなので、最初は少し「格好いいけどスウィング足りなくない?」と思ってしまったんですけど。途中からは観たことないような映像体験に突入して、クライマックスでは限界突破な異次元バトルが拝めます。

加えてピーターの、「高校生」「弟子系ヒーロー」としての描かれ方も素晴らしくて。
ヒロイン・MJの魅力がフォトンブラストしていたんですよね……普段の皮肉気味なサバサバ感、有事のときの颯爽としたムードが定着していただけに、照れたりドキドキしているときの可愛さが物凄くて。MCUでこんなに強烈な「萌え」を味わうとは思っていなかったです。
そして、師であるトニーの継承も見事でした。

MCUはコンプはしていないんですが。単作でのクオリティ、総合点でいえば今作が最強の一角だと思います。

12. ザ・ファブル

我らが岡田准一師範による、「殺さない殺し屋」なアクション映画。

「SP」「図書館戦争」を中心に、プロ仕込みの本格的な格闘術を生かした演技をしていることは有名だと思いますが。図書戦で人生を狂わされているオタクにとっては、当然思い入れが物凄い方でして。
そして最近、近接銃撃戦アクションがビシビシに来ていたんですね、「ジョン・ウィック」シリーズが代表になると思うのですが。

そんな僕なので、「劇場一択だ」な作品でした。
図書戦でもSPでも格闘シーンは満載だったのですが、ここまでガッツリと銃撃と絡めた動きはなかった(より間合い取っての射撃だった)ですし。両方とも、特殊とはいえ公務員なので、アウトローさは新しく感じたんですよね。

という訳で、これでもかと期待値を上げて観に行って。
勿論、面白いのは確かで。スピーディーなアクションも、コテコテながらも腹筋にくるギャグも、ヤクザの血生臭いドラマも、間違いなく良かった。

……とはいえ。「この題材でこの陣容なら、もう少し面白くできたしない?」という感覚も強かったんですね。

その原因が、クライマックスの一連の流れでして(ちょっと核心に触れてしまうのですが)

途中からファブルが行動を共にする、いわば相棒ポジのはずのキャラが、
「元からクズだったし、全く空気を読まずに拳を振り回して寧ろファブルの邪魔になる」
みたいな奴でして。その結果、心情的に応援しにくい。
加えて閉所で大量の敵が押し寄せる中の戦闘になっていて。そんな状況で暴れ回るので、さらに状況が混迷して「すごいけど何やってるかは分からん」という見え方になってしまっていて。

ただ、ファブル(岡田さん)からすれば、「暴れる味方をいなしながら」「複数方向から押し寄せる敵たちを」「殺さないように無力化していく」
という、超ハードルの高い芸当をやらされている訳ですよ。

だからテクニック的には凄いんですよ。凄い、けど見えない、あと応援しにくい……という取り合わせが、なんとも勿体ない。止めながらゆっくり観れば印象も変わりそうなので、リベンジしたい所……

とはいえ、この応援しにくいキャラを巡って、安田顕さんが見せる苦い表情が最高にグッときたんですね。この表情だけで納得したのも確か。

他にも、好みの所も沢山あって。そうは言っても岡田アクションのキレは凄まじいですし、ギャグ面とのギャップも最高のファンサービス。
そして敵役の福士蒼汰くんといえば、図書館戦争では上官部下の関係で。岡田さんは現場でアクションを教えていたそうですし、キャラ的にもキャスト的にも夢の「師弟対決」が実現で、それだけでも満点。
高低差を存分に使ってトリッキーに動き回りながらの撃ち合い、見応えバッチリでした。

そして銃の演出も好みで。(実銃でどうなるかは知らないですが)至近距離でハンドガンで撃たれたときの衝撃というのを、ここまできっちり描いたのって日本では珍しいと思います。後、「撃ったときに飛散する血をどうするの問題」へのアンサーが大好き。
冒頭、ファブルの戦闘思考を可視化する演出も面白かったですよね……なぜアレをクライマックスでやらなかった……

……岡田堂上教官、また観たいな!!!(二回目)

今回はここまでです、ありがとうございました!

後編は年明けかな、そして2010年代ベスト的なのもやりたい……



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