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嫌いな人を切り離す

職場に厄介なおばさんがいる。

今年度末で定年になるおばさんで、私よりもかなりの先輩にあたる。だけど、厄介だと感じる。
電話は出ない、出ないどころか見向きもしない、担当の仕事はかなり軽めなのに残業ばかり、他の人の担当の割り振りに文句を言う、別係の若手を下に見る、いらないチェックばかりして仕事が先に進まない、人の話に聞き耳を立てる…など、あげればキリがない。


要するに仕事ができないくせに文句は一丁前なおばさんで、嫌いだ。



1年以上同じ係で仕事をしている。
それで分かったことは、このおばさんは徹底的に非協力的だということ。
仕事のことで質問することももちろんある。そうすると「この前こうだって言ったけど、忘れちゃったのかな?」と返ってくる。しかも半笑いだ。
私は態度に出すかどうかはともかく攻撃的なタイプなので、「一言言わないと気が済まねえのか?」と思いながら、「忘れちゃいました〜!」とおどけている。今は4月で一番慌ただしい時期なのだから、この時期くらい電話出ろ!と思う。思うどころか毎日心の中で舌打ちしている。たまに出てしまうようになったので、ここは直さねばならない。同期に愚痴りながら、心の中で舌打ちしながら、飲み会のネタにしながら、なんとかやっている。上司からも「あの人はもうどうにもならないから」と言われているような人に、自分なんかが怒っても意味がない上に、上司が困るから怒っていないだけで、いつでも背負投げできる気持ちだ。



ただ、「どうにもならないから」と言われても納得はいかない。そうすると「なぜやらないの?」「どうしてやらせないの?」と不満ばかり溜まっていく。毎日顔を合わせる相手の、一挙一動に腹が立ち、改善できない状況にストレスが溜まる。かといって自分はおばさんの上司じゃないから、直接注意できる立場じゃない。その上司が諦めているのだから、自分ではどうしようもないのだ。


少し前、上司に「なぜやらせられないのか?」といった旨を尋ねたことがある。上司は「随分前のことだけど、精神的に負荷がかかると、誰の言うことも聞かなくなって、手がつけられなくなったみたい。そうなると係全体に悪影響だから、あまり強く言えない」と言ってから、本当はどうにかしたいんだけどねと呟いた。そのとき、上司と私では視点が全く異なると気付いた。


上司は係全体のことを考えて仕事を回している。そこに不公平が生じても、係全体が回るためには多少目をつぶらないといけない。本当は公平にやりたくても、人によって能力値も適正も異なるから仕方ないのだろう。上司は上司でもどかしいのだ。


ここに気づいてから、「あれ?じゃあ文句ばっかり言っても仕方なくね?」と気付いた。上司にあの人はなぜ非協力的なのかと問い詰めても意味がない。過去のことを教えてもらった現状では、本人を強く問い詰めることもできない。できる立場でもない。じゃあ文句を言っても仕方がない。自分の仕事を淡々とこなすのみだ。


ただ、腹は立つ。

元々嫌悪感があるから余計に目につく。


このことを彼氏に愚痴ると、「その人っていたら何かプラスになることあるの?」と聞かれた。なかなか辛辣な質問だ。考えてみても思いつかない。そう言うと、「じゃあいてもいなくても一緒なんだから、いないと思ってみたら?」と言われた。なかなかどころか、かなり辛辣なアドバイスだった。


いないと思ってみるっていうその言葉の強さが面白くて、声をあげて笑った。「そんなこと言ったって、目につくんだから無理かもしんないよ」と言いながらも、明日からそうやってみるかと思いついた。無理なら無理で笑い話にすればいいのだ。



その翌日から本日に至るまで、おばさんがいないものと考えて行動するようにした。いないから電話を取るのを待つ必要はない。いないから何か文句を言っていても雑踏の一部と考える。いないから席に散らかった書類を見なくていい。見ても無視できる。


すごく楽だ。


ストレス源をわざわざ視界に入れて、わざわざイライラしに行く必要はないのだ。30歳になって、人から言われて、やっと気づくことができた。
なにか違うと感じた人と無理に付き合う必要はない。嫌いな職場の同僚も、いないものと考えて、自分と切り離すとこんなにも気が楽なのかと思い知った。


でも決して、無視するわけじゃない。


挨拶もするし、質問を受けたら答えるし、自分から話しかけることだってある。ただし踏み込むとイライラすることは分かってるので、自分から一定以上の距離を縮めない。そうすると、関係性が悪化して余計な悩みにつながらない。


このことに気づけただけで、どこの職場に行っても少しは楽に過ごせそうだ。








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