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平均化訓練に出会うより少し前のはなし

平均化訓練に出会う前は武術の稽古会に顔を出していました。
その頃のことでなんだか懐かしいことを思い出したので書いておきたいと思います。

僕が初めて武術の講座に参加したのはもう10年以上前になるのか、甲野善紀先生の講習会。
綾瀬の武道館で行われていた講習会でした。
それまで数年間は本で読むばかりで、実際に講習会に行くのは結構勇気のいることだった。

面白いことに本で読むばかりだった数年間の間にしていた漠然とした工夫が、いざ講座に参加してから自分の稽古を進めていくためのギフトとして機能してくれた。
不思議だけどそういうものかもしれません。

いざ講習会にいったはいいが僕はもともと運動なんてからっきしな人種だったし、その日は結局のところ甲野先生が人を投げてるのを遠巻きに眺めるだけの壁際の人達のひとりだった。
そして、眺めるだけで講習会が終わって後は帰るだけ、武道館を出て駅への道を歩いていた。

その時、僕の前をもうひとり講習会の最中に、僕と同じように遠巻きに先生の動きを眺めるだけだった人が歩いているのが見えてふと足が止まってしまった。
「これでいいのかな」と思って、なんとなく引き返したら、ちょうど甲野先生の他、いつものみなさんが武道館から出てくるところにちょうど出くわして、そのまま話しかけて、その場で技を受けることができたし、一緒に食事行くこともできた。

あの時そのまま帰ってたら、どうなっていただろうか。

引き返す判断ができたのは、前を歩く彼の姿がさみしげで、失礼な感想だけど、情けなかったからだ。
正直に言うと「このまま帰るとこいつと同じだぞ」と思って引き返す決意をした。
この時の決断は今もまだ自分の中にあって、自分の行動を決めている気がする。

そのおかげで何度となく痛い目にもあっているのだけど、「この情けないやつと同じになるのは嫌だ」という自分の偏見を後悔してるのかなとも思う。
彼の姿はよく覚えているが、はたして元気にしているのだろうか。

数年後に別の、甲野先生とも平均化訓練ともあまり関係ない場所でその彼によく似た人と一緒に稽古することがあって、その時もしかしてと思って聞いたけど、判然としなかった。
もしかしたら、同じ人だったのかも。
なんでも稽古を重ねていくうちに苦手だった野菜も食べられるようになったと言っていて、稽古の後に一緒に食事に行った時もりもり食べてて立派だなと思った。

補足

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