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僕が誰だかわからない

「我々に不用意に近寄ると火傷をするぞ」と言われた。

こんな漫画の台詞みたいな言葉を向けられるとは思わなかった。
言葉の威勢の良さに反してこれはマクドナルドでコーヒーを飲みながらの一幕で、それもあってなんだかシュールな気分になった。

僕はそんな言葉では動じない。
でも動じなかったのが不味かった。
結局その後ずいぶん長いこと説教された。

平均化訓練はもともとシステマを学んでいる人達の勉強会から始まった。
システマ関係の人達の他、その繋がりで動作術という身体の稽古を学ぶ人達も多かった。
要するに甲野善紀先生の系譜と言えばいいのかもしれない、僕もそのひとりだ。
なんだかんだで最初はわりと見知った人達が最初は多かった。

もちろん知らない人もいた。
もともと先生の元で整体を学んでいる人達や大阪のテニス部の人達はもちろん、たまたま興味を持って来た人がいたり、変わったところでは催眠術師であったり、カリスマナンパ師とその門下と言った人達がいた。
初めて会う人達は武術関係とはまったく違う感性で、その人達の話を聞くのは新鮮で楽しかった。

最初の頃はシステマと動作術の企画の一環として講座があったのだけど、ゆっくりとそこから平均化訓練というひとつのメソッドとして自立していった。
一歩進んだ内容の実習を行う集中講座などが企画されたころには見知った顔よりも知らない人のほうが多かったのではないだろうか。
多少さみしさは感じたりもしたけど、新たな場所で新たな仲間だと思うことにしていた。
多少正体不明だがこの人達と共に平均化訓練を学んでいくのだろう……という気でいた。

彼等はいったいどんな人達なのか。
とりあえず話を聞いてみることにしようと講座で横にいた人や帰り際に一緒になった人に積極的に話しかけてみたりした。
しかし、僕はここで本当に困ってしまった。
周囲の人達にとってみれば、僕こそがまったく正体不明の人物だったのだ。


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