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使えば使うほど「好かれる言葉」

【「ありがとう」で両者ほっこり】

川上氏が「使えば使うほど、まわりから好かれる最強の言葉」と紹介しているのが、「ありがとう」です。自分が「ありがとう」と言われた人が、やさしく穏やかな気分になるのは、自分の行為が相手の役に立ったことを確認できるから。人間には「承認欲求」があり、「ありがとう」と言われると、相手から認められたという承認欲求が満たされるそうです。そして言った側も、相手が喜んでくれると承認欲求が満たされます。つまり、「ありがとう」を言った人も言われた人も、どちらもハッピーになるのです。

「ありがとう」の語源は、仏教用語の「有り難し(ありがたし)」だといわれます。川上氏は、『法句経(ほっくぎょう)』という経典から、釈迦の言葉として次のフレーズを紹介しています。「人の生(しょう)をうくるは難(かた)くやがて死すべきものの、いま生命(いのち)あるは有難し」ここでいう「有難し」は「滅多にない貴重なこと」という意味です。いかに人として生まれることが有り難く、奇跡的なことかを伝えています。この「有り難し」の連用形「有り難く」が変化し、感謝の意を表す「ありがとう」となったと考えられているそうです。「どんな人に対しても、『ありがとう』という言葉が自然に出てくるようになると、自然にまわりから好かれるようになるでしょう」と川上氏は書いています。

また「ありがとう」の言い方にもコツがあります。例えば「いつも」を付け加えて「いつもありがとう」とすると、今回だけではなく、これまでもずっとありがとうと思っていた、という気持ちが相手に伝わります。川上氏は、これを「まだそんなに親しい関係ではない相手」に使うことも勧めています。「そんなに感謝されることをしたっけ?」「過去に援助したということは、私はこの人のことを好きだったのかも」と意識させることで、親しくなれるかもしれないからです。

POINT

「ありがとう」は、言われた側も言った側も穏やかになれる言葉。「いつも」を付ければさらに価値が上がる

【男性は「頼りになる」に弱い?】

ここでは、友人や同僚との会話で重宝する「飾らない褒め言葉」を紹介します。上手に活用できれば、プライベートや仕事でのコミュニケーションが円滑になります。

1.よかった

不安や心配が好ましい方向に解決し、安堵したときに使う「よかった」です。「誰かからよい報告を聞いたときは、心から『よかった』『よかったね』と言ってあげましょう」と川上氏は書いています。例えば、職場の同僚や部下の仕事に「よかった」と心から喜ぶと、一体感が生まれます。なお、上司や得意先など、上の立場の相手に「よかった」はカジュアル過ぎるため、「何よりです」というフレーズが重宝します。

2.楽しみにしています

川上氏によると、「楽しみにしています」とは、「未来のことを心から待っている」という意味です。口頭やメールで、「お会いすることを楽しみにしています」と加えれば、相手は好感を持ちます。一度も会っていない相手にも「お仕事をさせていただくのを楽しみにしています」と使えます。「心待ちにしています」というのも、やわらかで知性が感じられる表現です。

3.頼りになる

「頼りになる」は、主に男性が言われてうれしい表現です。「決断力がある」「トラブルに対処できる」「感情的にならない」「正義感がある」などの意味が含まれています。現実にはなかなかそうはいかないものですが、だからこそ、「頼りになる」と声をかけられると、人は承認欲求が満たされ、「期待に応えよう」とさらに頑張るのです。

4.センスがいい

「その手帳、かわいいですね」などと、物をただほめるよりも、「その手帳、センスがいいですね」と、物を選んだ本人のセンスをほめると、より好感をもたれるかもしれません。川上氏によれば、「センス」とは物事の味わいや微妙な機微がわかっていることをいいます。「説明しづらい理由や理屈をぬきにして、何となく感じる印象のよさを表す表現なので、便利な言葉です」と勧めています。

POINT

相手が言われてうれしい言葉を使えば、相手との距離感を縮めたり、チームの連帯感を向上させたりできる

【「これに懲りず」は使い方に注意】

最後に、上司へのお願いごとや友人へのお断りの言葉など、「言いにくいこと」をやわらかく伝える表現を紹介します。状況に合わせて正しく使い分けましょう。

1.折入って

「折入ってご相談があります」のように、上司などへ困りごとを相談するときに使います。これには「ふたりきりで」「特別な相談やお願いをする」というニュアンスが含まれ、結婚や退職などの報告で用いられることが多い言葉でもあります。とはいえ、仕事の話題で使ってはいけないものではありません。「あなたのことを信頼して相談したい」という尊敬のニュアンスも、相手に伝わります。

2.これに懲りず

「これに懲りず、またお誘いください」など、相手の期待や誘いを断りつつも、相手との関係を良好に保つ際に使います。ただし、「これに懲りず」には、「今回は失敗したけれど、これにめげることなく」という意味が含まれています。そのため使い方を間違うと、失敗したのは誘った相手になってしまいます。川上氏によれば、そこで重要なのは「失敗したのは自分だと明確にして使うこと」です。はじめに謝罪の言葉を添えて、「誘いに応じられなかったのは、あなたのせいではありません」という気持ちをきちんと伝えましょう。

3.おこがましい

あらたまった会議の場で意見を言うときなどに、「私が申し上げるのもおこがましいですが」のように使います。「自分を謙遜する言葉なので、何か意見を言うときはもちろん、お願いや提案、自慢話まで、クッションの役割を果たす表現として使えます」と川上氏は書いています。また、「自分で言うのもおこがましいですが、根性だけは誰にも負けません」のように、面接や営業で自分や商品をアピールする際にも使えます。

4.さしでがましい

上記の「おこがましい」と似た言葉ですが、ニュアンスが変わります。「おこがましいですが、意見します」は、「自分は目下なのに身のほどをわきまえず」とのニュアンスがありますが、「さしでがましいですが、意見します」は、「自分が直接の関係者でないのに出しゃばって」とのニュアンスになります。「このことから『さしでがましいですが』と前置きをすると、自分としては、『部外者なのに、出しゃばったことをしていることは重々承知している』というニュアンスが出ます。そのあとに多少キツいことを言っても、緩和されるのです」と、川上氏は解説しています。

POINT

「言いにくいこと」も、好かれる言葉を一言添えるだけで自分の印象を良くできる

参考文献:『使えば使うほど好かれる言葉』(川上徹也著/三笠書房)2021年6月出版


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