2020ヘビロテしてた音楽まとめ10選

2020年はめちゃめちゃ音楽を沢山聴くぞ!と意気込んでいたのですが、あまり気分が乗らずほとんど元から好きだった曲を何回も聴く”守りの”リスニングで終わってしまいました。アウトプットの質はインプットの量で決まると思っているので、なるべく多様な音楽を聴きたくて「EDMから民謡まで聴きますよ~」とか人に言っているんですが、そういう意味ではあまりバラエティー豊かなリスニングはできなかったです。

まあ守りのリスニングとは言いましたが、逆に言えば一つのアルバムやアーティストを何度も聴いてその深奥に(ちょっとは)迫ることが出来た一年でもありました。「あ、この曲ってこんなヤバかったんだ」とか「この曲歌詞気にしたこと無かったけどとんでもないな」みたいな気づきを多く得ることが出来たのは良かったと思います。

来年は音楽を聴く時間そのものをもっと増やして、攻めと守りの両方のリスニングを出来たらいいなぁと思います。まだまだ知らない音楽が星の数ほどありますから、少しでも多くその星たちを集めて、自分だけの星座を作っていきたいと思います(?)。

(あまり新しい音楽を掘れなかったので2020年のリリースとそれ以前にリリースされたアルバムとで5枚ずつ紹介させていただきます。)

☆★2020のリリース★☆

米津玄師 - STRAY SHEEP

おそらく今年唯一CDを買ったアルバムです。天邪鬼なので好きだったバンドが有名になるとあんまり聴かなくなっちゃうんですが、米津玄師だけは別です。YANKEEが出たあたりから(ボカロめっちゃ好きだったけど何故かハチは有名どころしか聴いていなかった)ずっと聴いていて、シングルのカップリングなども含めて全曲が大好きです。前作のBOOTLEGと同様に既にシングルカットされている曲が多く、あまり新鮮味がないようにも感じましたが、内容は全部最高でした。

米津玄師はほぼ一人で曲を作っている(たぶん)フットワークの軽さやボカロPだった経歴から、いわゆるバンドものとは一味違ったサウンドが楽しいのですが、海の幽霊や感電でさらにその音世界が進化した印象を受けます。とにかく切り口が豊富で全曲違う色をしていて、それでもちゃんと一聴して米津玄師だと分かるようになっています。J-popを追求しながらもその音楽性を曲を追うごとに進化させていく米津玄師は今までも、これからも僕の憧れの存在であり続けることでしょう。

favorite track - カナリヤ


Shohei Takagi Parallela Botanica - Triptych

ceroの作詞作曲やボーカルを担当している髙木晶平さんのソロアルバムです。ライブは前からやっていたようで、ずっと(ライブ行けないから)早く音源をリリースしてくれよぉ~と思っていたのですが、今年ついに念願のファーストアルバムがリリースされました。

アルバム全体を通してリード曲であるミッドナイト・ランデヴーのMVのように宵の口から夜明けにかけての気怠く現実離れしたような靄のかかった景色が描写されていて、音像もLo-Fiというよりはフォギーだったり湿っぽい感じ。またこのアルバムはコンパクトさも魅力の一つで、さらっと最後まで聴けちゃいます。三部構成で紡がれるメロウな世界観に陶酔する至高の30分をどうぞお楽しみください。

favorite track - オー・ウェル


aiko - 青空

aikoはカブトムシのサビくらいしかしらなかったのですが、友達に勧められてこの曲を聴き、とんでもなくヤバい人だと気づきました。メロディーや譜割が普通そうはならんやろ!みたいなことになっていて、でもそれが強烈なフックになっています。このシングルは青空って感じの気持ちいいアレンジがハマって夏のヘビロテ曲でした。

favorite track - 青空


Frances Quinlan - Likewise

こうしてまとめてみると今年は全然洋楽を聴かなかったんだなぁと感じますが、このアルバムだけはかなりよく聴いていました。アンプラグドで柔らかい質感の音像ですが、どこか冷たくずっしりと重いような感覚も覚えます。ボーカルの表現がとても豊かでさらっと歌い上げるような曲から全力を振り絞るような歌までかなりふり幅があって飽きません。

歌詞を聞き取る英語力は無いですし歌詞を見ながら聴くことも無いので何を言っているかはほぼ分からないですが、それでも遠い場所や過去を想う切なさや人を想う暖かさを感じて良い気持ちになっていました。合ってるかはわかりません。ストリングスを入れた構成のTiny Desk Concertでのパフォーマンスも最高でしたのでぜひ。

favorite track - Your Reply


mei ehara - Ampersands

カクバリズムの繋がりで知り、カクバリズムだから良いに決まってると思っていましたが、この新譜が出たタイミングで聴いてみると、穏やかで優しいギターと声が織りなす音世界がまるで春風のように、一日中寝転んでYouTubeとかを見てた僕の締め切った部屋を換気してくれました。春先から今に至るまで世情や環境に起因して、どうしても活発になれなくて塞ぎがちだったのでこういった肯定も否定もないような、それこそ風や水のようにただそこにあるだけ、とも言えるような柔らかな音楽に何度も救われました。

アルバムを通して優しくて温かいサウンドですが、様々なギミックがそこら中に散りばめられていて聞き飽きません。特にベースやドラムがカチッとしていて、そのドライな音像と柔らかいボーカルとの対比が最高です。

favorite track - 昼間から夜


☆★2019以前のリリース★☆

折坂悠太 - 平成

AppleMusicに今年の再生数ランキングが纏められるのですが、このアルバムの「さびしさ」がダントツで一位でした。折坂悠太がヤバい、というのはもう周知の事実だと思いますが、やはりヤバいです。どこか回顧的で且つ普遍的ななつかしさ、ノスタルジーのような雰囲気を持ち合わせているのに、その中核を成す魂はまさに平成から令和に変わった今現在にチューニングされています。

そして歌もすごいです。まるで自分の体の構造を全て知っていて、完璧にコントロールすることが出来る(当然のように聞こえるけど、実際は私たちは自分が出せる音域がどの音からどの音までなのか、さえ知らない)かのように歌っていて、その深くありながらも軽快で、力強くありながらも優しい、全パラメーターカンストしてるみたいな歌声がそれぞれの曲の詩世界を雄弁に語ります。

激しくて、穏やかで、優しくて、力強くて、温かくて、冷たくて、でも押しつけがましくなくて、飄々としている。そんな「平成」の終盤を引っ張るのが「さびしさ」です。自分が置かれている状況や考えている事と信じられないくらい共振し、一年以上ほぼずっと聴いていました。平成の次の時代の幕開けはまぁこんな感じですけど、令和を締めくくるときには2020年はどんな記憶になっているのでしょうか。

favorite track - さびしさ


七尾旅人 - Stray Dogs

今までも聴いていましたが、春ごろからどんどん自分のモードが合っていって結局今年はずっとめちゃくちゃにヘビロテしていました。歌詞もメロディーもサウンドも全部最高で、それはシンガーソングライターである七尾旅人自身のある意味かなりパーソナルなものなのですが、それが逆に押しつけがましくなくただ優しく肯定してくれるような気がします。

年々、いわゆるJPOPとか歌モノって良いなぁと思うようになっています。もちろんアレンジやサウンドも好きですけど、その根底にある純粋な”歌”ってめっちゃヤバくないですか?そういうフィーリングで今年は七尾旅人とか青葉市子とか原田郁子のソロとかをよく聴いていました。

favorite track - スロウ・スロウ・トレイン


Minuano - 蝶になる夢を見た

Lampのサポートの人のソロで、ボーカルはLampの榊原香保里さん、レコーディングにはLampの染谷太陽さんも参加しているということで、良く分からないまま最初はLampの別名義?と思って聴いていました。エレピの柔らかくも小気味良い響きに跳ねるようなドラム、そこに滲むようなボーカルがどの季節とも時間帯とも違うような、まさに夢の中にいるような音像を作り出していますが、眠気が吹き飛ぶような、ハッとする熱さや冷たさもまた混在しています。

ちなみにLampもサブスク配信しているアルバムを舐めるように聴いていました。新しいのか古いのかよくわからない独特の音世界が大好きです。シングルで出ているブルーが特に好きなので是非きいてほしいです。

favorite track - 春時雨の夜にさよなら


蓮沼執太 - メロディーズ

タブラ奏者のU-zhaanとの繋がりから知ってはいましたが、アンビエントもエレクトロニックもフィルハーモニーも歌ものも何でもアリでコラボや提供もめちゃめちゃ色んな人としていて、知れば知るほどに一体何者なのか分からなくなってしまいました。このアルバムは歌ものをギターを弾きながら作るみたいなコンセプトで作ったものらしいです(たしか)。

スティールパンやストリングス、いい意味でくせの無い歌声がさわやかで、曲や演奏そのものの強度もめちゃくちゃに高く、とくに春から夏にかけては聴きまくっていました。このアルバムのRAW TOWNは初めに一聴した瞬間から完全にハマって蓮沼フィルバージョンのNEWや中村佳穂をボーカルに迎えたCHANCEと共にヘビロテしていました。

favorite track - RAW TOWN


Polaris - Union

春先に友達の家に遊びに行く電車で聴いていたら、このアルバムを再生するたびにその時の暖かい空気、花が咲いた河川敷を横切る車窓の風景などの美しい記憶がフラッシュバックするようになってしまいました。構成もサウンドも必要最低限のシンプルなものですが、シンプルゆえの余白感や風通しの良さがあります。ドラムとギター、ピアノの中に気持ちよくストリングスやクラムボンの原田郁子さんのコーラスが響いていて、まさに冬が明けて空気が緩む春先のサントラにピッタリです。春以降も聴いていましたが、いつ聴いても聴いている間だけは春を感じることが出来ました。

全ての楽器が自分を包み込むように優しく鳴っていて、その全肯定感に救われることが多くありました。どんな曲を作りたいのかと聞かれたらなんでも作りたいのでなんて答えたらいいのか迷いますが、こういう全肯定感は絶対に大事にしたいと思います。できるのかしら。

favorite track - It's all right!