現実のイスラーム金融を無視する中沢新一『緑の資本論』って正直どうなのか問題
どこが問題か?
中沢新一の『緑の資本論』は、キリスト教圏から発達した資本主義とは異なる原理で働くイスラーム経済について考察している。
……のだけど、
①イスラム教は利子(リバー)を禁じているが、商売で利潤が発生することは否定してないことがわかっていない
②イスラーム経済を一枚岩のものとして捉えている
③今日のイスラーム金融の実態が踏まえられてない
という、なかなかに問題含みの書である。
中沢はキリスト教圏から発達した資本主義と、資本主義を自前では生みださなかったイスラームの経済のありようとを分析する。キリスト教は父と子と精霊という三位一体という考えがあったので、利子の存在を容認するこよになり、資本主義を発展させた。しかしイスラームは厳格な一神教で精霊など認めない。よって実態的なブツの取引を伴わない、高利貸しの存在は否定される、云々と論じている。
さて、北村歳治/吉田悦章『現代のイスラム金融』を参考にしながら、中沢の問題点を指摘してみますね。
ここから先は
2,330字
¥ 100
サポートいただいたお金は次の調査・取材・執筆のために使わせていただきます。