光を待つひと #ナイトソングスミューズ
駅のホームのへりに立ち、遠ざかっていく電車の後ろ姿に手袋をした親指をあてる。羽虫でも押し潰すみたいに鉄の塊が見えなくなって、やがて雪景色の中へ溶けていく。絵画のように動かなくなった景色を眺めて、やっぱり乗ればよかったと今更に思う。
時刻は午後十時。乗客の途切れたホームはコンクリートの無機質さが凶暴に足元を冷やし、座面の固いベンチにじっと座っているのさえ辛く感じた。わたしはカサついた赤切れの手を白い息で温めながら、あてもなく狭いホームの上を歩き回る。じっとしていると際限なく体