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地獄待ち

無産の祖父は六十三
番地は四五九で死方より
風吹き来たる

寺山修司「田園に死す 恐山」より

「四五九」には「ぢごく」とルビが振ってある。
地獄。
そういう番地が恐山にあるかどうか知らない。

麻雀では「場に既に二枚切れている西の単騎待ちのことを地獄待ち」という。
西とは極楽浄土の方角。
本来なら「極楽送り」だが、闇討ちのような待ちなので「地獄待ち」だそうだ。

出目馬券で言うなら、「4・5・9」のBOX買い。
一発逆転の穴馬券、地獄からの帰還のための蜘蛛の糸だ。
ふと思うのは、賭けに関係のない日常で俺は地獄待ちをしていないだろうか、という自戒だ。
吹いているのは死方の風。
渦巻く怨念に目が濁らされていないか。
風景は港町四五九番地。

ゆっくり時間をかけていい。
地獄待ちに気を付けて。

麻薬中毒重婚浮浪不法所持サイコロ賭博われのブルース

寺山修司「血と麦 砒素とブルース」

待ち時間。
罪を数えると歌ができる。
その世界から逃亡するのでなく、定住するような歌声。
汚れた色の息遣い。
この歌を駅のホームの壁に石で刻んだら、また罪が増える。
そしたら、また歌ができる。
終わりがない。
歌を作るな。
待ち時間のルール。
浅瀬を通過しろ。

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