黄昏の百合の骨 恩田陸

「麦の海に沈む果実」の続編。(シリーズなので順番に読むほうがおすすめです。)麦の海から数年後の話。
水野理瀬は祖母の遺言に従い、留学先から帰国し、祖母の暮らした家に半年間住むことになる。祖母の家には、血のつながらない祖父の連れ子だった、姉妹の梨南子と梨耶子が暮らしていた。
理瀬には祖母が残したある秘密を探り出す目的があったのだが、梨南子と梨耶子悟らずに密かに行動していたが…。


ここから、ネタバレ含む感想

祖母が残した秘密を処分する役割を担っている理瀬ですが、祖母がヒントを残さずに事故死してしまったため祖母の周辺を探ります。しかし、この家に以前から暮らしていた梨南子と梨耶子は祖母が何かの遺産を隠していると考えて理瀬を見張っているのでなかなか思うように動けません。
そんな中、理瀬の学校の同級生脇坂朋子に片思いする男子、田丸賢一が行方不明になり、祖母の法事の日に、梨耶子が事故死します。理瀬の隣の家に住む朋子の病弱な弟は理瀬に意味深な話をするといろいろな事件や出来事が起こりそれらが祖母の秘密につながっていく。
推理という割には伏線が弱いので、サスペンスものとして読みました。このシリーズ、理瀬も含めて出てくる女性がドス黒いので、女性の登場人物の行動に気が抜けない。ちょっとした描写がのちのち重大な意味を持っているので細かいところまで気にして読むと面白いです。
大きな話としては麦の海で理瀬の回想のような形で語られていた人間関係がはっきりしてきますが、稔と亘の立場の違いとか、相変わらず有能だけど謎ばかりの理瀬の父、回想と名前だけの登場のヨハンとかいろいろ謎が残ったままです。個人的には、理瀬の母が気になるのですが、こちらは影もなかったです。そういえば、稔と亘の両親も少し話が出てきただけでしたが、家系の男の子は早死にするとあったので、理瀬父と稔と亘の母が兄弟なのか…にしてもこの二人の両親もかなりブラックな仕事しているのかなとか行間からいろいろ想像してしまいます。
物語の最後に麦の海で登場したヨハンがらみの事件が起き、すべて終わった理瀬は一人イギリスへ旅立ちます。最後に、謎めいた人物が登場しますが朋子の弟かな…?どうだろう。
このシリーズ謎がなかなか解明されないのでどれも読んですっきりという感じにはならないけど何か引っ張るようなそんな物語です。
子の続編が「薔薇のなかの蛇」なのですが2007年からメフィストで連載されていますがまだ完結していないようなので、そちらで謎が回収されるといいなと思います。


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