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三月は深き紅の淵を 恩田陸

「三月は深き紅の淵を」という本をめぐる4つの物語。続編というか、関連本が「麦の海に沈む果実」、「黒と茶の幻想 上・下」、「黄昏の百合の骨」と続きます。順に読むことをお勧めします。
続編のもとになっているのがこの本なのですが、重要なのがこの「三月は深き紅の淵を」というタイトルの本がキーワードになっています。


ここからネタバレ含む感想

「待っている人々」
会社員の鮫島巧一は、趣味欄に書いた「読書」がきっかけとなり会長の「春のお茶会」に招待された。お茶会には会長の金子以外に、鴨志田、一色、水越の3人が同席していた。鮫島は会長の別邸にまつわる話から、この家の中に「三月は深き紅の淵を」という本が隠されているのでそれを探してほしいという依頼を受ける。4人の話を聞きながら鮫島はある事実から本が存在しないという推理を披露するがそこで本の山を見せられるが…。
この話の中では「三月は深き紅の淵を」という本のあらすじが言及されています。

「出雲夜想曲」
編集者の堂垣隆子は、以前に一度だけ読んだ「三月は深き紅の淵を」の作者に、同じく編集者の江藤朱音を誘い夜行列車へ出雲へ向かった。この話の中では、この本は存在していて、隆子の父が本を持っていて、その父が若いころ参加していた同人誌から推理を巡らせある作家の娘が作者ではないかと推理する。しかし、ついた家には人影がなく無人だった。その帰り道、朱音からある告白をされる。

「虹と雲と鳥と」
公園の展望台から落下した死亡事故の発生から物語が始まる。死亡したのは高校生の篠田美佐緒と林祥子、それぞれ違う学校に通う二人だった。美佐緒の元彼の廣田啓輔は事故の真相に迫るために美佐緒の家庭教師だった野上奈央子と部活の後輩の早坂詠子と3人で篠田美佐緒と林祥子の周辺を調査したそこから、二人が異母姉妹でその父親の起こした事件を知ることになる。
「三月は深き紅の淵を」の本は出てきませんが、美佐緒の残したノートの中にその構想のようなものが書かれているようです。この話の中だと野上奈央子が後日、書くのかな…という感じかな…。

「回転木馬」
タイトルの小説を書いている途中の作者の日常と話が交互に出てくる展開。小説の内容は関連作品の「麦の海に沈む果実」のパラレルワールド的な展開です。登場するキャラクターはそのままなのですが、話の展開はかなり違ってきています。

4作品、それぞれ小説でつながっていますがそれぞれ話の展開は違っているのでこの小説を基にしたパラレルワールドという位置づけになるのでしょうか。それとも物語の中の物語で外側にもう一つ物語が隠れているのかもしれないかな…と思いました。

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