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トリカゴ 辻堂ゆめ

あらすじ

鎌田署の刑事森垣里穂子は、傷害事件の捜査で叶内花を逮捕する。住所、生年月日尋問するがハナは自分が無戸籍で苗字も誕生日も分からないと答える。
釈放されたハナの後をつけた里穂子は、ハナが暮らす場所を探り当てるがそこは無戸籍の人々が密かに暮らしている「ユートピア」と名付けられた場所だった。さらに、ハナにはリョウという兄がいることがわかる。そのことを知った里穂子は自分が幼い時に起こった「鳥籠事件」で行方不明になった兄弟ではないか思うが…。


ここからネタバレ含む感想

ユートピアの住民からこの場所を内密にするように懇願された里穂子はその約束を守ろうとするが、鳥籠事件のことが気になり、現在の担当者である羽山に密かに連絡を取る。これを重要情報と考えた羽山は強引に捜査を進めようとする。
テーマが無戸籍なのでミステリーの要素のある社会派小説という位置づけになるのかなと思った。
ユートピアにはさまざまな理由で現在無戸籍の人々が暮らし、中には無戸籍2世、3世も存在する。小説の形態をとっているが無戸籍についてのかなりリアルなエピソードが出てくるのでユートピアという現実離れしているような設定ではあるが逆にリアリティが出ているような感じがした。登場人物の人間像も小さい頃に捨てられたハナとリョウ、混血で日本人離れしているので役所をたらいまわしされたタクロー、無戸籍のまま子どもを産み育てているアツシとルミカ、年長者のテッペイとヨシコ…。
そして、主人公の里穂子は育休明けすぐの刑事だが、夫が在宅勤務のため、子どもを夫に任せてかなり無謀な勤務を続けることになり、家族に対する後ろめたい、でも、事件を解決したいという複雑な気持ちの描写もリアル感が感じられた。
いろいろ考えさせられる物語だった。

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