満願  米澤穂信

米澤氏のちょっと後味の悪い短編集。


ここからネタバレ含む感想

夜警
警察官の川藤浩志が犯人に刺殺され、殉職した。上司だった柳岡は川藤の赴任してきた日から回想する。
殉職した警察官のあまり褒められない真相が解明される。

死人宿
自殺志願者が集まってくる宿の話。
別れた佐和子は山奥の宿で働いていた。佐和子に会いに行った私だったが、佐和子が見つけた遺書の持ち主を探すことに協力することになった。
なんとなく存在しそうな宿なのがリアルである。

柘榴
母さおりとその娘夕子と月子の父をめぐる話。
ある意味女性の嫌な部分が、クローズアップされている現代童話のような話。そのあと、夕子と月子の争いが始まるような予感で終わるところに後味の悪さ残る。

万灯
井桁商事に入社した伊丹は主に発展途上国でのガス田開発に従事していた。これまで数々の修羅場を乗り越えてきた伊丹だったが、新しい赴任地バングラデシュでは更なる困難に見舞われる。
短編にしてしまうにはもったいないようなボリュームの作品である。これで長編もかけそうな…そんな贅沢な短編だけどその後が気になります。

関守
フリーライターの俺は先輩ライターから譲ってもらったネタの取材で伊豆半島南部の桂谷峠へ向かった。ぽつんと立つドライブインで詳しい話を聞くことができたが…。
最初は、世間話のような取材がかなり詳しい話を聞くことができて内心ガッツポーズをとりながら取材を進める俺だったが、ただのドライブインのおばあさんも内心ガッツポーズをしていたんだろうな…と思うとゾッとする話であった…。

満願
学生の頃、下宿した家の奥さん鵜飼妙子が殺人犯として逮捕された。藤井は、その下宿でお世話になったことから妙子の弁護を引き受ける。奥さんが控訴を取り下げたことから8年の刑期が確定となった。妙子の真の犯行の目的は何か…に気が付く。
思いつめた女性は怖い…の一言です。

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