蒲公英草紙 常野物語 恩田陸

常野物語の第2弾。ときは、戦前、東北の農村のお話。語り手は、その村に住む峰子という娘。村の旧家槙村家の次女聡子の話し相手になったことから始まる。
聡子は小さい頃から体が弱く長く生きられないといわれていた。家からも出ることができず学校も通えなかった。それでも、年とともに少しずつ元気を取り戻し、同じ年ごろの話相手が欲しくなり主治医の娘だった峰子が話し相手を務めることになった。


ここからネタバレ含む

槙村家は村の中心的な家で、常に何人かのお客様がいるようなお家です。発明家の池端先生、画家の椎名様は長く逗留していました。そこへ、仏師の永慶様が加わりさらに離れの天聴館に春田家一家が身を寄せました。
常野物語シリーズなので、常野の人がどこで出てくるかと思っていたら、「しまう」能力を持つ春田家が越してきて話が動き始めます。天聴会の夜、春田家の子ども光比古が、引き起こしたトラブルをきっかけとして、槙村家に昔、常野の「遠目」の能力を持つ娘が嫁に入っていたことがわかります。聡子も時々不思議なことを口にしていた理由がこれではっきりしますが、なにか不吉なことが起こりそうな感じがします。
終わりは突然に、聡子のつぶやきが現実として起こり、悲しい結末を迎えます。それでも、聡子をしまった光比古により少し救われるラストです。
常野物語なので、出てきた能力は、「しまう」と「遠目」です。春田家は1弾の短編にも入っていたのでそのご先祖様でしょう。そのうち槙村家の末裔も登場するかもしれません…。

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