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自転車に乗って川を越えて、戸田球場に行く。(2回裏まで)

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到着したのはローソン戸田美女木六丁目店。美女木(びじょぎ)ってすごい地名ですね。ジャンクションの名前になっているので、車移動する人には馴染みのある地名かもしれません。

たかやまさんは店内仕込みの大きなカツサンドとからあげクンのレモン味、さらにLチキをなぜか3つも買い求め(食欲爆発)、わたしはからあげクンのだし醤油味と、ありあけハーバーとコラボした栗餡とクリームの挟まったパンを買いました。今日の対戦相手はベイスターズです。横浜を食ってやろう、なのです。

ローソンを出て土手に上ると戸田球場は目の前でした。球場の周囲は彩湖・道満グリーンパークという公園です。

この公園は荒川の下流域が氾濫するような大雨が降った場合は調整池として大量の水が流入する仕組みになっていて、最近では2019年に機能しました。そのときは戸田球場のグラウンドが水面下4mに没したのがニュースになりました。選手たちの練習用具から最新の解析機器までぜーんぶ泥水の中…。

そんなこともあって、スワローズは2027年からファームの設備を茨城県の守谷市に移転することが決まりました。わたしたちが戸田球場にやってくる機会はあと何回あるんでしょうか?

バックスクリーンの裏側

ささづかまとめ
「今度こそ着きましたねー!」

たかやまさん
「うん。駐輪場は…、公園の駐輪場を使うのか。向こうだね」

ささづかまとめ
「ああ、球場が遠ざかっていく…」

少し離れたところにある駐輪場に自転車を停めて、徒歩で球場に向かいます。歩きながらたかやまさんは今年のクルーユニフォーム(ファンクラブから一年に一度送られてくる記念品です)を着ます。わたしもそれにならって着て、水色のふたりになります。たかやまさんのユニフォームは背中に奥川投手のネームと背番号が入っています。わたしのは無地です。


球場の敷地に入るところでチケットもぎりがあります。道中、堀ノ内のセブンイレブンで購入したチケットを渡します。係員のお兄さんのすぐ後ろに荷台部分がグッズショップになっているトラックが停まっています。トラックなら万が一大雨が降ってもすぐ移動できそうです。

お手洗いを済ませてから小さなスタンドに入り、指定の座席へ。わたしたちの席はブルペン席という1塁側のチケットです。本当はバックネット裏で観たかったのですが、売り切れていて買えなかったのです。ブルペン席すら、かなり埋まっています。

たった3段しかない観客席の2段目にそろそろと足を踏み入れます。わたしたちの席はベイスターズファンのふくよかなお兄さんのとなりでした。戸田球場の観客席にはホームとビジターの棲み分けがないようです。3塁側に席がないのでしかたありません。
いきなりなにを言い出すか予想できない熱狂的スワローズファンの女とベイスターズファンのふっくらお兄さんの間にわたしという緩衝地帯を設けます。

もう試合は始まっていて、2回表ベイスターズの攻撃中。スワローズの先発は育成右腕の沼田翔平(ぬまた・しょうへい)投手。2アウトランナー2塁。左バッターボックスにはバッティングに定評のあるベイスターズの若手捕手で、今日はDHで出場の上甲凌大(じょうこう・りょうた)選手が向かいます。

というのはこの記事を書くにあたって改めて調べた結果であって、実際のところは、

ささづかまとめ
「今投げてる沼田さんって誰ですか?

たかやまさん
「巨人の育成だった人。一回支配下になったんだけど、巨人あるあるでまた育成に戻って、戦力外になって、そこから拾われた感じ」

ささづかまとめ
ほえー。あのバッターは?」

たかやまさん
DeNAのことは知らない。スポナビ見よう」

という感じでした。自分の応援しているチーム以外の二軍の選手のことまで詳しい方は本当にすごいと思います。

で、その上甲選手がきれいにライト前に打ち返し、2塁ランナーが生還。ベイスターズが先制します。暴投でランナー2塁として、続くバッターがレフト前にタイムリー。これで0-2。

バッターボックスには西浦直亨(にしうら・なおみち)選手。去年の夏までスワローズに所属していた内野手です。かわいい顔して守備の上手な若手選手が同じポジションに台頭してきた影響もあり、ベイスターズにトレードで移籍しました。そんな西浦選手はフォアボールで出塁。

打順は1番に返り、レフト前にヒットを打たれて満塁となったところで、ピッチャー交代。ああ、なんだか試合の雲行きが怪しい…。

たかやまさんは膝の上に今野龍太(こんの・りゅうた)投手の名前が書かれたフェイスタオルを敷いて、その上にローソンのビニール袋を置いて、そこからLチキを取り出してかぶりついています。いつもだいたい無表情ですが、いつにも増して無表情なまま鶏肉を咀嚼します。ちょっと怖いです。

たかやまさん
「育成のピッチャーがあんなふうに打たれるのは、カウントダウンの数字が一気にいくつか減ったってことだから」

たかやまさんがひとつめのLチキを食べ終えて、ぽつりと言いました。育成選手から支配下登録される選手自体がそこまで多くはないですし、そこからさらに一軍の主力選手になれるのはほんの一握り。ファームの試合で活躍できなければいつ戦力外になってもおかしくありません。神宮球場で行われているキラキラした試合を観ているだけでは想像できない、シビアな世界が目の前に広がっています。

沼田投手に代わって柴田大地(しばた・だいち)投手がマウンドに上がり、次の打者をショートゴロに打ち取って、大量失点のピンチを脱します。

ナイスピッチングを見せる柴田大地投手

しかし、ピンチの場面を抑えたにもかかわらず守備から戻ってくる選手たちに送られる拍手はまばら。うーん、ファームの試合ってこんな感じなんでしょうか。たかやまさんに尋ねると、いつもはもうちょっとお客さんの反応がいいらしいです。

たかやまさん
「今日はDeNAのファンが多いんじゃない?」

なるほど、たしかにわたしたちの前の列に座っている人の半分以上はベイスターズファンみたいです。ベイスターズファンのみなさんも、一軍の試合がなくてうずうずして、はるばる埼玉まで来ているんでしょうか。


2回裏のスワローズの攻撃は、2アウトとなってあの三ツ俣大樹(みつまた・たいき)選手がバッターボックスに立ちます。

たかやまさん
「三ツ俣が中日から来たのは知ってる?」

ささづかまとめ
「はい。ドラゴンズ時代はけっこう嫌なバッターでしたよね」

たかやまさん
「うん。田口からサヨナラ打ったのは一生覚えてる。でもね、2022年に中日を戦力外になって、ヤクルトに来たんだよ。最下位のチームを戦力外になって、1位のチームに入ったんだよ? 変だよね?」

ちょっと炎上しそうなことを口走るたかやまさん。まわりがベイスターズファンでよかったです。三ツ俣選手はフルカウントまで追い込まれながら、フォアボールで出塁します。

写真右で走塁の構えを見せる三ツ俣選手

ユニフォーム越しに見るかぎり、ちょっともっちりしてるように見えるお尻と太もも。しかし去年は一軍の試合でこのもちもち下半身を俊敏に動かして、球場全体から拍手が送られるような華麗な守備を見せてくれたときもありました。本当はすごく鍛え上げられているのだと思います。

三ツ俣選手は今のところ、有事の際のバックアップ要員という立ち位置のようですが、個人的には一軍で観たいです。がんばって上がってきてほしいですね!

三ツ俣選手の出塁に続き、ドラフト5位ルーキーの内野手・伊藤琉偉(いとう・りゅうい)選手がライトオーバーのスリーベースタイムリー! さらに一軍では代走の切り札として起用されるあまりバッターボックスに立つ機会の少ない並木秀尊(なみき・ひでたか)選手が、センターにしぶとくゴロヒットを放ち3塁ランナーが悠々生還。これで2-2の同点! さらに並木選手は盗塁も成功させ、観客席では今日一番の歓声が起こります。

ベイスターズファンのみなさんも並木選手の俊足には脱帽、いいもの見られたわ、みたいな感じのようです。


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