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スピルバーグ作品「アミスタッド」と先週思ったこと

 もう何度も観た映画。また観たくなった。

 数多くのヒット作品を生み出してきたスピルバーグ監督。「インディアナジョーンズ最後の聖戦」、「ジュラシックパーク」や「ターミナル」など。彼は、老若男女、誰が見ても面白いと感じるようなヒット作品を繰り出し、その儲けで、監督自身が本当に作りたい映画を作ることで知られている。

 それらの映画は、「ウケ」を狙わずに作られる。そのため、他の彼のメジャー作品のようなエンターテイメント性はないが、観る価値がある作品が多い。私が個人的にとても感動し、心奥深くに浸透した一番好きな作品が、「アミスタッド」だ。メッセージ性がとてもとても深い、実話をもとにしたお話である。あらすじだが、ヤフーの記事を引用すると、

奴隷制度が横行していたかつてのアメリカを舞台に、彼らを救おうとアメリカ法制度に疑問を投げかけた元大統領ジョン・クインシー・アダムズの戦いを描く。

 ここからは、ネタバレが嫌な人は、ご遠慮ください。ですが、どんでん返しや「裁判の結果はいかに??」で魅せるような、そんな作品ではありませんので、最後が分かっていても、観る価値は失われないと思います。

 この映画の見どころは、アダムズ元大統領の、自身の身を守るために殺人を犯したアフリカ人奴隷を弁護する場面。その当時「モノ」としてしか見られていなかった黒人奴隷。その当時、アメリカ経済の利を考えると、彼らは売買されるべき単なる「モノ」に過ぎず、そんな彼らが殺人を犯せば、どんな弁護も通用せず、即刻死刑免れずの状況。そんな当たり前論をどう覆すのか?

彼の弁護のなかに、こんな文句が出てくる。

彼らにも「壮大な物語」がある

「モノ」でしかないはずの黒人奴隷にも、自分たちと同じ美しい壮大な人生の物語があるということ。そして、

 イギリスからの独立を勝ち得たアメリカ人。人に支配されない「人権」を重んじる「血」が我々には流れている。そんなことを聴衆に語りかけつつ、弁護する元大統領。名優アンソニーホプキンズだからこそ、醸せる重厚さがまた良い。このシーンは、何度観ても圧巻される名シーンだ。

 ところで、話はガラッと変わるが、ウクライナ侵攻が悲惨なことになっている。最初民間人に犠牲が出たと報道された時には、衝撃で悲しかった。しかし、ウクライナ人、ロシア兵共々に犠牲者が増えてきて、それが小さくはない数字に置き換わり始めると、何だか感情がマヒしてくるのを否定できない。大きい天災、人災が起きるたび、犠牲者数が増えると、それがひとかたまりになってしまい、感情のマヒが起きる。

 私だけだろう、きっと。こんな非道で薄情な捉え方。こんな時は、いつも「アミスタッド」の元大統領の言葉を想う。そう、犠牲になられた方々ひとりひとりには、美しい壮大な物語が存在した。この世に生を受けた物語。親や友達との物語。愛の物語。いろんな美しい物語を紡ぎだしていた、その途中、思いもよらないかたちで終わりを迎える。

 ひとりの、狂気に満ちた、愚かなプライドのために、たくさんの美しく壮大な物語が終わりを迎えてしまっている。

 バランスのとれた両翼があるからこそ、鳥は前に飛ぶことができる。

 韓国の有名な政治学者の言葉だ。翼が片方もぎとられたしまった独裁国家の恐ろしさ。自分の国の翼は、きちんとバランスのとれたものなんだろうか。自国の政治に関心を向けることの大切さ。

 何だか、まとまりのない文章になってしまった。これらは、この1週間私の頭に浮かんできた、思いの欠片たちだ。

onokojiさま^^すてきな写真使わせていただきました。ありがとうございます。

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