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「即興のWS&ショーイング」企画を思い立った理由について



【「即興のWS&ショーイング」企画を思い立った理由について】

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4月以降に、「即興のWS&ショーイング」企画を始めようと思い立った理由として、ある日パフォーマンス終演後にお客さんからの質問があったことにはじまります。

質問内容を要約すると、「これまで面白いと感じた即興もあれば、これが即興?と楽しめなかったことがあったり、即興やコラボレーション/セッションと言いながら、全くはそれが実践されていないように感じるパフォーマンスを見たことがあったり、即興は鑑賞者の見方が自由と言われてしまえばその通りではあるのですが‥一平さんはどう思いますか?」と聞かれました。

お客さんのおっしゃる通り即興は鑑賞者の見方が自由なのですが、即興やセッションを企画し実行するのはいつだって演者側なので、即興を言い訳に、鑑賞者との対話に責任を持たないというのは違うかなと思うところはあります。(正直、自分の技術を信用している表現者こそ陥りがちな感じはします)

即興とは、確かに所謂振付や決め事ではないアクションを個人個人が起こすことにあると思いますが、人前で行う即興パフォーマンスは、演者個人が自由に技術や表現する場ではないと自分は思っています。

(大前提として、『ある特定の文化のジャンルに属するパフォーマー同士間で交わされる技術を共通言語とした即興的コミュニケーションをパフォーマンスとする即興』と、今回主題とする『即興』は異なる属性のパフォーマンスと捉えます)

即興は、ジャンル問わず手法としては表現者なら誰しもが経験のあるアクションだと思いますが、即興を鑑賞者の前で行う際には、ある一定の経験と、その場を感じる視野、他者や外の環境を受け入れ取り入れながらいまその場で新しい自分のパフォーマンスを構築していく能力が必要だと思う。

自身のアクションや在り方が他の演者や空間でどんなバランスで作用/関係するのかを考えたり、最も大事なのは、この場におけるパフォーマンスが鑑賞者にどのような対話(問い/答え)を与えているのかを感覚的(或いは直感的)に思考する意識を持つこと。

鑑賞者の思考や想像力の豊かさに、演者のパフォーマンスが救われることはしばしばありますが、それに甘えず、表現者たちは己の哲学や思考を自身の行うパフォーマンスに乗せて、場を表現する一員としての意識、この場に自分も知らない新しい価値観や視点が生まれるための、アクションをする代表者としての責任は持つべきと思う。

ジャンル問わずもし自身をプロの表現者、アーティスト然とするなら、そもそも社会における人前での表現の目的は、すごいパフォーマンス/高い技術の披露ではなく、演者/鑑賞者双方がパフォーマンスの体験を通じて、各々の思考/視野が拡がる場としての自分のできることを考え、またその目的の達成のために行動を起こすことが大きな役割のひとつだと思う。

振付や決まりがないパフォーマンス=即興、ではなく、場の代弁者としていま何か新しい表現することにチャレンジする役割を演者が担い、そこで起こる体験から何か新しい価値を捉える役割を鑑賞者が担うような関係であるかと思う。

即興は、思い描いたものを起こすのではなく、思い描いたものとは違うものが出来上がるクリエイションである。誰かのものではない、誰のものでもないものが、その場に共有され、それぞれのものになっていくことが即興が生み出す価値であると思う。

演者も鑑賞者も何かを持ち帰るためには、それぞれがその場にいまの挑戦を行うことと、自分の表現が自分の為であること同様に誰かに影響するものであることの責任と自信を持つことができると豊かな何かが生まれる気がする。

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(ちなみに私が表現したいことで一貫してるのは『安心と不安/安定と不安定』の状況なんじゃないかなと思う。どんなシチュエーションでもそうした状態を起こすことを意識している気がする。)

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即興の意は『型にとらわれず自由に思うままに作り上げる、作り上げていく動きや演奏、またその手法のこと。‥‥』と、広義であると同時に、共通意識としては曖昧さも孕んでいて、ときに即興に対する意識や価値観のズレが、演者同士だけでなく演者と鑑賞者の間でも何か良くない形として誤認されることもある。

恐らくそもそもパフォーマー間でも、即興について漠然とした捉え方でしかなく、言語化し話し合う機会は多くない。各ジャンル内で用いられる即興も共通言語上での狭義での手法上でしかなく、もっと広義的な形で「即興」を扱うパフォーマーたちは、「即興」についてさまざまな視点や考えがあることをパフォーマー同士がジャンルや世代を超えて話していく責任があるんじゃないかと思った。

今回の企画でやりたいのは、特定の技術の向上ではなく、即興パフォーマンスへの意識、向き合い方、即興を行うことにどんな意味や価値、可能性があるのか、また即興を通じてそれぞれが何を表現したいのかなどを実践とディスカッションを通じて、参加者それぞれの新しい可能性や在り方を見つけていくことです。

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