独裁者ノート 独裁を支えるエコシステム

 エコシステムとは生態系のことである。政治や権力にはエコシステムがある。かつてはエコシステムを構築するのに長い年月と多大な労力が必要とされた。関係組織を設立しあるいは取り込み、相互のビジネスがうまく回るようにし、かつ世論操作を行いやすい調整も行わなければならない。政党、企業、圧力団体、市民団体などを考えれば、その面倒くささがわかる。
しかし、今ならネット上でかなりの部分を完結できる。リアルな組織には事務所や電話など物理的な設備などが必要になるが、ウェブサイトやSNSなら必要なのはメールアドレスくらいだ。アメリカの極右サイト、ブライバートや陰謀論のQAnonがよい例だ。手軽に始められ、短期間で組織を拡大し、影響力を広げ、収入も得ることができる。

独裁者を生み出すエコシステムは、中核となる組織(この場合、IT企業)、プロキシ、サードアクター、支持者によって構成される。中核となる組織は全ての情報と資金の流れを計画、管理、運用する。

・プロキシ
プロキシは表向き別組織でありながらも、共同歩調を取り、相互にメッセージの拡散やアクセスの誘導を行う組織である。具体的には、極論サイト、陰謀論サイト、ネット放送、偏ったニュースメディアなどがあげられる。必ずしも全く同じ主張を行うことはなく、必要に応じて作戦に参加する。ひとりで複数の組織を運用することも可能だ。プロキシを複数使うことのメリットは、複数の組織が同調していることで説得力が増すこと、メッセージを増幅しアクセスを誘導しやすくなること、ひとつつぶされても活動を継続できること、異なる主張の組織があることで幅広い層を取り込めることなどがあげられる。
現在は動画の役割が大きくなっているため、YouTubeのチャンネルやZoomでのオンラインイベントなどさまざまな方法を駆使して会員を取り込んでゆく。
ロシアがネット世論操作に用いているプロキシはよい見本である(https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/08/post-5.php)。
日本だと政治知新などがプロキシに当たる。詳しくは日本のネット世論操作を参照(https://note.com/ichi_twnovel/n/n86b4e2069c6b)。

これらのプロキシは、それぞれがアクセスを稼ぎ、会員を募ることで広告収入や会員からの収入を得ることができる。収入を公開し、独裁者のメッセージを拡散すると儲かるというイメージを広げることも重要だ。そこからサードアクターが参入してくる。

・サードアクター
サードアクターは独裁者とは無関係ながらもその主張などを拡散、同調してくれる個人もしくはグループである。主張に共感した場合もあるが、アクセスを稼ぎ、収入につなげることが目的のこともある。後者は増えれば増えるほど効果があがるので、積極的に取り込んでゆきたい。そのためには、プロキシの収益を向上させることが重要となる。
厳密に言うと、サードアクターもプロキシの一種と言えるが、管理上自ら仕掛けたものと外部から参加してきたものを分ける必要がある。

・支持者
支持者は直接の支持者とプロキシの会員の両方を指す。どちらも専用アプリやワレットで囲い込むことが重要。

重要なのは多くの会員を持ち、アクセスの多いプロキシを持つことであるが、ゼロから自分で立ち上げる方法、既存のものを買収する方法などがある。

よき独裁者たらんことを!

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