EU議会選挙を前にドイツで親露極右政党AfDへの批判が強まる

以前の記事「ロシアの影響工作をチェコ保安情報庁が暴いたのはEU議会選挙対策?」https://note.com/ichi_twnovel/n/n674547fe89b2 )で書いたようにドイツというかEUとしてドイツの極右政党AfDへの警戒を強めているようだ。理由は極右であること。ヨーロッパの極右の多くはロシアとの結びつきがあるが、その中でもAfDはロシアに近いと考えられている。先日、ドイツ国内の移民最大200万人を北アフリカに強制移住させる秘密計画が暴露されたことや、EU全域に広がった農家の抗議活動にも積極的に関与していたことなど警戒すべきことは多々ある。

昨日のNew York Timesの記事「Far Right’s Ties to Russia Sow Rising Alarm in Germany」https://www.nytimes.com/2024/04/15/world/europe/germany-afd-russia.html )はそれを裏付けるような内容になっていた。記事はドイツ国内でAfDとロシアとの結びつきを危惧する声が高まっていることを紹介しており、その根拠として先日のチェコ保安情報庁が暴いた事件やさまざまな疑惑について書いている。
ロシアがこうした影響工作を行っているのは以前から知られており、新しいことではない。記事に書かれている疑惑がすべてほんとうだとしたら、むしろ効果的な対策を怠ってきたことに驚く
Global Project Against Hate and Extremism (GPAHE)の資料( https://globalextremism.org/germany/ )によると、戦後のドイツにはナチの残党が政府や軍の要職(大臣や将軍までいた)、裁判官、弁護士、警察など数多く残っていた。その一部は1960年代のフランクフルト裁判や「Braunbuch」(要職に就いている元ナチ1,800人の詳細を暴露した本)で暴かれた。その後、アメリカで制作されたホロコーストに関するTVシリーズ(日本ではTV朝日で放映)が1979年に西ドイツで放映されたことで国民の意識は大きく変化した。
しかし、変わったはずだったのに、いつの間にかドイツでは再びQAnonなどの陰謀論、人種差別、極右、ネオナチなどの動きが活発になってきている。AfDはその筆頭だ。さらに深刻なのは軍や治安機関のメンバーに極右や陰謀論者が増加していることだ。

多くの疑惑がほんとうならすでにAfDは政党として存続できないくらいの問題を抱えているように見えるのだが、まだ決定的な証拠が足りないのかもしれない。
しかし、こうしたやり方はかえって分断と対立を激しくするような気がしなくもない。

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