深刻化するドイツの亡命・移民政策 ISDが分析した2023年の状況
●概要
ISDが2023年のドイツの亡命・移民についてのSNSの状況を分析したレポート「Changing tides: Discourse towards migrants and asylum seekers on Facebook and X in Germany in 2023」（ https://www.isdglobal.org/digital_dispatches/changing-tides-discourse-towards-migrants-and-asylum-seekers-on-facebook-and-x-in-germany-in-2023/ ）を公開した。
日本ではほとんど報道されなかったが、2023年ドイツ国内では亡命・移民についての議論がさかんに行われていた。亡命・移民はたびたび経済にマイナスな存在とされたり、犯罪者扱いされてきた。
この議論が収まったのは皮肉なことに極右政党AfD関係者などによる移民200万人強制移住計画が暴かれた時だった。
ISDは2023年を通じてフェイスブックとXにおける発言を分析した。フェイスブックとXともに最もシェアされた投稿は移民に対して圧倒的に否定的な感情のもので、肯定的な意見を表明した投稿は5％に満たなかった。反移民を訴える極右政党AfDの台頭も当然と言える。結果としてドイツ政府に対する移民・亡命政策の強化への圧力が高まった。
フェイスブックとXの両方において、60％以上の投稿が移民に対してあからさまに否定的な感情を表わしており、移民を福祉制度への負担、ドイツの安全と治安への脅威、あるいは国の乗っ取りを狙う侵略者として描いている。
フェイスブックで最もシェアされた投稿はAfDの政治家によるものが多かった（48％）。さらに38％は組織アカウントによるもので、そのうちの85％は連邦および州レベルのAfDアカウントによるものだった。
Xでは、インフルエンサーが投稿のほぼ3分の1を占めた。その4分の1は、スイスの雑誌『Die Weltwoche』と右翼ブログ『Die Achse des Guten』に所属するモデル兼ライターが書いたものだった。他のインフルエンサーは、反LGBTQ+、外国人嫌悪、wokeismへの批判を含んでいた。政治家は26％を占め、これらの投稿の60％以上はAfD共同議長によるものだった。
Xの投稿の30％、フェイスブックの投稿の38％が、連邦、州、地方レベルでの大量移民による財政負担を指摘し、移民や亡命希望者への優遇措置に言及することが多かった。よくある不満には、失業手当を受給している亡命希望者がドイツの納税者に与えている経済的負担が含まれていた。
この調査の結果、ドイツのXとフェイスブックでは亡命・移民に対する悪感情の投稿が圧倒的に多かったことがわかる。フェイスブックで極右政党AfDが強い影響力を行使しており、Xでは極右インフルエンサーが活躍していたことがわかる。そして、侵略者といった言葉は、いわゆるGreat Replacementにも通じており、陰謀論へのつながりを暗示している。
●感想
極右の台頭や各地での農家の抗議活動など不穏な状況のドイツだが、一連の問題が単体で起きているのではなく、つながっているのだということがよくわかる。極右グループの移民200万人強制移住計画やその後ドイツ各地で反極右運動がのり上がったことは記事に書いたが、ドイツ国内の多数は反移民に傾いているだろう。
より正確に言うならEU全体が温度差はあっても反移民に傾いている。新しいEUの移民法は移民を生きない各国に割り当てることになっているが、金を払えば受け入れを拒否できるようになっている。このことがないよりEU内の移民に対する姿勢を象徴している。
EUは組織として民主主義を守るための活動を行っているが、後退しているのは確かだ。
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