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言語圏が小さい国での事例研究、フィンランドの欧州議会選挙におけるTIKTOK効果

THE TIKTOK EFFECT
https://faktabaari.fi/assets/TheTiktokEffect.pdf

よく知られているようにSNSプラットフォームでモデレーターなどの要員がもっとも多く割り当てられているのは英語圏だ。それ以外、特に言語圏の小さな国にはあまりスタッフが割り当てられていない。フィンランドのこの事例は、言語圏が小さい国の事例として貴重である。TikTok の透明性レポートによると、EUの6,287人のコンテンツモデレーターのうち、フィンランド語を話せるのはわずか4人 (0.05%)でその処理能力には限界があるのがわかる。……とこのレポートの冒頭に書いてあった。

このレポートは、データボイド脆弱性と、ラベル付けにフォーカスしている。データボイド脆弱性については英語や中国語でもまともに対応できていないので、マイナーな言語ではなおさらひどい状況だろうと予想がつく。データボイド脆弱性については下記にくわしい。

5年間ほとんど放置されていた情報戦兵器データ・ボイド脆弱性とはなにか? その1https://note.com/ichi_twnovel/n/nf5e0789e96e1

実態編 データ・ボイド脆弱性とはなにか? その2https://note.com/ichi_twnovel/n/n3523739724f1

Adobeがアメリカで実施した調査によると、アメリカ人の40%以上が検索エンジンとしてTikTokを利用しています。Z世代のユーザーの約10%は、Googleなどの従来の検索エンジンよりも検索ニーズにTikTokを利用する傾向があるそうだ。

TikTokで検索を行う際、検索候補を勝手に表示してくれる(検索エンジンやSNSの検索ではだいたいそうなっている)。この候補が妥当ではないことが多々ある。選挙の場合、候補者に対して不利な印象を与えることにもつながる。

THE TIKTOK EFFECT、https://faktabaari.fi/assets/TheTiktokEffect.pdf

このレポートでは、検索候補とTikTokの政治ラベルの適用について調査している。その結果、検索候補には政治における女性や少数派に対する敵意のある言葉が含まれていることがわかった。一部の政治家については、否定的な検索候補ばかりが表示された。
投稿への政治ラベルには一貫性がなく、選挙関連のハッシュタグの投稿のうち政治的とマークされているのは3分の2だけだった。

THE TIKTOK EFFECT、https://faktabaari.fi/assets/TheTiktokEffect.pdf
THE TIKTOK EFFECT、https://faktabaari.fi/assets/TheTiktokEffect.pdf

TikTokは主に検索インターフェースを通じて使用されるわけではないが、検索は依然として重要なインターフェースである可能性がある。特に、利用者が候補者や関心のある政党を見つけようとする選挙期間 中はなおさらだ。
TikTokはハッシュタグに基づいて検索候補を作成する。調査では、投稿数が比較的少ないハッシュタグが検索候補に含まれる可能性があることが示唆されていた。悪意のある人物は、自分の選んだハッシュタグで動画を簡単に投稿できるため、他のユーザーの検索候補を操作することが可能になる。簡単な解決策としては、長期間アクティブで、多数のユーザーが参加しているハッシュタグのみを候補に使用することが挙げられるが、少なくとも現在はそのような対策は取られていないようだ。

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