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アゼルバイジャンがニューカレドニアに干渉

ニューカレドニアで大規模な暴動が発生し、混乱が起きている。世界のあらゆる混乱はデジタル影響工作のターゲットになる。ニューカレドニアの混乱はアゼルバイジャンのデジタル影響工作のターゲットになった。
日本ではあまり知られていないが、アゼルバイジャンは中露イランには及ばないものの、デジタル影響工作能力では世界の中でも中より上に位置している。以前、ニューズウィーク日本版にこまごま書いたが、国内世論の統制と、国外への干渉の両方を行っている。

ロシア、アゼルバイジャン、アルメニアが入り乱れるネット世論操作激戦地帯
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/10/post-13.php

●アゼルバイジャンは以前からフランス領の分離独立を支援

もともとフランスがアゼルバイジャンと摩擦の絶えない隣国アルメニアを支援していることから、両国の関係は悪化している。
2023年7月、アゼルバイジャンはマルティニーク、ギアナ、ニューカレドニア、ポリネシアといったフランス領の分離主義者たちを首都バクーに招き、会議を開いた。この会議ではフランスからの分離独立と、反植民地主義を標榜するバクー・イニシアティブ・グループが結成された。このグループは今回の混乱のきっかけとなったニューカレドニアの憲法改正案を非難している。

フランスは、アゼルバイジャンが以前からニューカレドニアの分離主義者たちを支援し、今回も資金その他の援助を行っている他、デジタル影響工作を仕掛けていると抗議している。真偽は定かでないが、ニューカレドニアで抗議活動に参加している中にアゼルバイジャンの国旗を持っていたり、国旗をプリントしたTシャツを着た者がいたという話や画像が出回っている。
アゼルバイジャンはフランスの抗議を否定しているが、少なくともデジタル影響工作が行われていることは確実であり、フランスはそれらもアゼルバイジャンのしわざと考えている。

●混乱にはデジタル影響工作

世界のどこかで暴動、自然災害、紛争、事件などで混乱が起きれば、それを煽るデジタル影響工作が行われるようになってきて久しい。さまざまな予防策や対抗策が考えられ、実施されているが、実効性には疑問がある。また、真偽だけでなく、民主主義的価値感における善悪の判断の難しいことも増えてきている。この難しさは対策の内容やバランスにも影響してくる。
その一方で、誤・偽情報やデジタル影響工作の効果への疑問や、対策の効果への疑問、そもそも対策が逆効果という指摘も増えてきている。
これは単にデジタル影響工作対策の見直しや、岐路ではなくて、社会のあり方の見直しになりそうな気がする。

出典

Sur X et Facebook, plusieurs manœuvres informationnelles d’origine azerbaïdjanaise ciblent la France dans le contexte des émeutes en Nouvelle-Calédonie.
https://www.sgdsn.gouv.fr/files/files/Publications/20240517_NP_SGDSN_VIGINUM_Fiche%20Technique_RecognizeNewCaledonia.pdf

Why is France accusing Azerbaijan of meddling in its Pacific territory of New Caledonia?
https://www.france24.com/en/europe/20240517-why-is-france-accusing-azerbaijan-of-meddling-in-its-pacific-territory-of-new-caledonia

France accuses Azerbaijan of fomenting deadly riots in overseas territory New Caledonia
https://www.politico.eu/article/france-accuse-azerbaijan-fomenting-deadly-riot-overseas-territory-new-caledonia/

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