Citizen Labが暴いた中国の偽メディアネットワークPAPERWALL
カナダのCitizen Labが中国の偽メディアネットワークを暴いた。
「Chinese Websites Posing as Local News Outlets Target Global Audiences with Pro-Beijing Content」( https://citizenlab.ca/2024/02/paperwall-chinese-websites-posing-as-local-news-outlets-with-pro-beijing-content/ )だ。
最初、かなり違和感を覚えた。なぜかというと、Citizen Labは偽情報に関する活動も行っているが、人権を守る活動が中心になっている。スパイスウェアPegasusや中国の検閲の告発などが有名だ。市民の言論の権利やプライバシーを侵害することが中心だった。今回は直接的な人権侵害につながるテーマではない。だから違和感を覚えた。
余談になるが、アメリカで偽情報対策が後退している代わりに、カナダでは偽情報対策の活動が目立つようになってきている。政治的あるいは外交的な理由があるんだろうか? 今回のテーマは、以前ならアメリカの民間企業や国務省GECあたりがやりそうなことだった。実際、このレポートではアメリカMandiant社の過去のレポートが参照されている。
●世界30カ国、123以上のサイトをネットワークした偽情報ネットワーク
Citizen LabがPAPERWALLと名付けたネットワークを実施しているのは深圳市海卖云享传媒有限公司( Shenzhen Haimaiyunxiang Media Co., Ltd.、 http://hmedium.net )。多くのコンテンツをTimes Newswireから入手しており、そのコンテンツは問題ないコンテンツの中に親中国のコンテンツを紛れ込ませている。主要なコンテンツのカテゴリーは下記。いずれもローカル情報を標榜している。
すべてのサイトはTencent Cloudにホストされている。
現在までのところ目立ってアクセスを集めていることはない。
ターゲットとなった30カ国は下記。
ご覧のように主要なターゲットは韓国、日本、ロシアの3カ国だけで全体の40%近い。
日本のサイトは下記。それぞれ内容を変えている。ニュースの提供元はバラバラになっているが、とりあえず書いているだけで実際にはTimes Newswireだろう。ターゲットになった地域は、東海、富士山(静岡?)、福井、福岡、銀座、北海道、神奈川、日光、埼玉、仙台、徳島、東京およびはっきりしないサイトが3つだった。なお、「霓虹」はネットスラングで日本を意味するらしい。
●感想
全世界対象とかアジア太平洋地域対象とか言われているけど、このネットワークに関しては明らかに上位数カ国に数は集中している。
なんでなんだろう? 韓国と日本が主要なターゲットなんじゃないの?
同時に、冒頭に書いたようになぜCITIZEN LABなんだという気もする。
【追記】
アメリカでは偽情報対策への風当たりが強く、特に安全保障など政府との関係が重要な企業は慎重にならざるを得ない時期。アメリカのMandiant社が知己(あるいはカナダ政府筋?)を通じてカナダのCITIZEN LABに公開を託した可能性はあるのかも。いや、MandiantからCITIZEN LABに転職したスタッフが勢い余って書いたとか?
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