多数算 選挙、コンテスト…多数決の結果を決めるのは、数ではなく選出方法である

(本稿は2012年に別の場所で公開したものをそのまま転載したものです)


■ 多数算とは ■

多数決を式で表すことで普段見えないものが見えてこないかと思って『多数算』というのを考えてみました。
ここで書いていることは、おそらくいろいろな方がいろいろな方法ですでに考えて発表しているものです。多数算という計算方式も似たようなのが過去にあったかもしれません。
過去に誰も考えつかなかった独創的なものというよりは、ものの見方をよりすっきりとわかりやすくするためのツールと思ってください。

■ 多数算の基本 ■

多数算は、複数の項目の中からもっとも数の多いものを選ぶという計算です。

項目はアルファベットで表しています。
例えば、山と海のどちらに行きたいかという多数決をするとします。
 山に行きたいはA
 海に行きたいはB
 と表すことにします。

3人で多数決を行う場合、下記のように表記します。

1.ひとりが1票ずつ投票する場合

 +A,B,B=B

 カンマで区切られたそれぞれがひとりの意見を表します。
 +は、賛成での投票を表します。
 一人目はA=山、2人目と3人目はB=海を指示しました。
 Bの支持者の方が多いので、結果はBとなります。

2.ひとりが10ポイントを持ち、割り振るパターン
 では、3人がそれぞれひとつ選ぶのではなく、ひとりが10ポイントもっていて、割り振る場合はどうなるでしょう。

  1人目 山に10ポイント、海に0ポイント
  2人目 山に4ポイント、海に6ポイント
  3人目 山に3ポイント、海に7ポイント

 +A10,B0,A4,B6,A3,B7
 =+A17,B13 A山とB海、それぞれのポイントを足します。
 =A すると一番多いのはAです。

 不思議なことに、「1.ひとりが1票ずつ投票する場合」と違う結果になりました。もし、ポイントを割り振らずにひとりが1票ずつ投票していたらBになったはずです。

■ イラストコンテストの例 ■

イラストコンテストがあり、3つの作品が最終候補に残りました。
A B C からひとつを選ぶことになります。

3人の審査員がそれぞれれ10点を割り振ったとします。

 1人目 A8,B2,C0
 2人目 A2,B4,C4
 3人目 A2,B4,C4

 全部の点数を合計する方式をとると下記のようになります。
 +A8,B2,C0, A2,B4,C4, A2,B4,C4
 =+A12,B10,C8=A
 Aの作品が選ばれました。

 3人の審査員がそれぞれ、ひとり選ぶ方式をとったとします。
 それぞれの審査員の評価は同じだとすると、下記のようになります。
 1人目の審査員の頭の中では、A8,B4,C0の比較が行われ、その結果Aが選ばれます。これを+(A8,B4,C0)と表記します。普通の計算式で()カッコでくくったものをさきに計算するのと同じです。
 +(A8,B4,C0),+(A2,B3,C4),+(A2,B3,C4)
 =+B,C,C
 =+B,C2
 =C

 評価は同じなのに、今度はCの作品が選ばれました。

 では、今度は3つの作品の中からできの悪いものをひとつ落とし、残りの2つの合計点を競うことを考えてみます。
 いわゆる足きりのようなものを最初に行う選考方式です。

 反対のものを選ぶ計算方法は、-で表します。
 -A1,B3,C5,D2=B3,C5,D2
 こんな感じの表記になります。そして、反対のものをひとつだけ落としますので、答えは、複数の項目になるわけです。

 点の悪い人を落とし=足きり、その後点数を合計して選ぶ方式
 +(-(A8,B4,C0),-(A2,B3,C4),-(A2,B3,C4))
 =+A8,B4, B3,C4, B3,C4
=+A8,B10,C8=B

 おや、今度はBの作品になってしまいました。

 このように、点数をつけて合計する方法、審査員がひとつひとつ推薦作品を選ぶ方法、足きりを行った上で残ったものの合計点で決定する方法、いずれも妥当な方法に思えますが、その結果は全部異なります。

コンテストの選考って、内容よりも選考方法の方が大事なのか! と思ってしまいますね。

■ 小選挙区制 選挙の例 ■

人口100人の地域に5つの政党があると仮定します。
どの政党が決定権を持つかを考えてみましょう。
アルファベットの横の数字は、その政党を支持している人数を示します。前回は、投票ポイント数を示しましたが、数式の意味としては同じです。

政党 A B C D E
人口100人

支持の内訳
 A政党支持者 A36
 B政党支持者 B26
 C政党支持者 C22
 D政党支持者 D12
 E政党支持者 E4

直接民主主義で投票した場合の結果 A
+A36,B26,C22,D12,E4=A

小選挙区制で3つの選挙区に分けた場合の結果
小選挙区制では1選挙区にひとりの議員を選びます。

 平均的に支持者が分布している場合 A
 +(A12,B9,C8,D4,E1)1,(A12,B9,C7,D4,E1)1,(A12,B8,C7,D4,E2)1=
 +A,A,A=A

 じゃっかん地域差のある場合 B
 +(A12,B13,C7,D4,E2)1,(A12,B13,C8,D4,E1)1,(A12,B0,C7,D4,E1)1=
 +B1,B1,A1=B

 地域差の激しい場合 D
 +(A36,B26,C22,D0,E2)1,(A0,B0,C0,D6,E1)1,(A0,B0,C0,D6,E1)1=
 +A1,D1,D1=D

ここで気になるのは、選挙区はあくまで恣意的な区分けであり、ある程度は為政者が自由に決められるということです。選挙区を調整することで支持者が少ない政党でも勝つことが可能かもしれません。

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