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グーグルがイスラエル政府に提供する1,680億円の監視システム=プロジェクト・ニンバス

しばらく前から一部で話題になっていたグーグルのスキャンダル「プロジェクト・ニンバス(Project Nimbus)」。内部告発者がグーグルを去った。突然、「ブラジルに行くか、会社を辞めるか選べ」と言うのは事実上の解雇通告のようなもの。
「プロジェクトニンバス」は、グーグルとアマゾンがイスラエル政府から受託した$1.2B(およそ1,680億円)だ。決定時にグーグルは「イスラエル政府をデジタル変革するクラウド サービスとして Google Cloud が選出」(https://cloud.google.com/blog/ja/products/gcp/google-cloud-selected-to-provide-cloud-services-to-the-state-of-israel)と題する文書を公開した。しかし、その詳細はイスラエル政府もグーグル、アマゾンいずれも明らかにしていなかった。

●Intercept誌が暴いた「プロジェクト・ニンバス」の正体

2022年7月22日にIntercept誌が「DOCUMENTS REVEAL ADVANCED AI TOOLS GOOGLE IS SELLING TO ISRAEL」(https://theintercept.com/2022/07/24/google-israel-artificial-intelligence-project-nimbus/)という記事で、プロジェクト・ニンバスがAIを使った顔認証、自動画像分類、追跡および、写真、発言、文章の感情分析による監視システムであったことが暴露された。しかも、イスラエル政府のみに提供されたものではなく、こうした広範な監視機能を持ったGoogle Cloudサービスが他にも提供されている可能性を示唆していた。

●内部告発者がブログで経緯を公開

今回の犠牲となった内部告発者が経緯をブログ(https://medium.com/@arielkoren/googles-complicity-in-israeli-apartheid-how-google-weaponizes-diversity-to-silence-palestinians-cb41b24ac423)で公開している。
告発者を支援する人々は社内外に多数存在しているようだ。その一方で、グーグル内のすべてのユダヤ人を支援するグループJewglersが与えられた特権を利用して、パレスチナの自由を支持する社員の声を封じているという。
内部告発者の退職時のツイート

告発ビデオ
Google Employees Speak out about Project Nimbus and Google's Culture of Silencing Diverse Voices
https://www.youtube.com/watch?v=2GI-ePG0rTA

●New York Timesが記事化

このスキャンダルをNew York Timesが「Google Employee Who Played Key Role in Protest of Contract With Israel Quits」(https://www.nytimes.com/2022/08/30/technology/google-employee-israel.html)という記事に取り上げた。

●気になること

プロジェクト・ニンバスはさまざまな方向に広がりそうなスキャンダルである。しかし、メディアはあまり多くは取り上げておらず、日本ではほとんど見かけない。やはりグーグルに遠慮しているのだろうか?
グーグルはジャーナリストを支援している(と自称している)が、あくまでも「都合のいい」ジャーナリストだけを生き残らせたいだけなんじゃないだろうか?
最近、懸念しているのはOSINTブームである。グーグルが自身のサービスでの検索順位やフラグなどを利用して、都合のよい情報を入手しやすく、信頼がおけそうに見えるようにしそうで怖い。

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