狭間の喫茶店。1.空。

口をぽかんと開けながら、空を見上げていた。
灰色雲がひしめいてるからそろそろ雨が降るだろう。
この場を離れなきゃなと思いつつ、面倒くさくて起き上がる気力もない。

どのくらい時間が経ったのだろうか。
知らない土地を行ったり来たり。
疲れたから自然と大の字になっていた。
頬が濡れた。
傘がない。
困った。此処は一体どこなんだ。

記憶がない。
此処へ来た記憶がない。

降り始めた雨は、体温より少し暖かく感じた。
いや、多分気のせいかもしれない。

手持ちもなし。あてもなし。
どうすればよいの?
漠然とした今、この状況。困った。
ほんと、ここ何処?

「あれ?迷子?」

人の声がした。
幻覚か?と一瞬怖くなったけども、大の字な私を見て驚いていたので、ちゃんとそこにいるようだ

「雨降ってきたよ!風邪ひいちゃうから、一緒に喫茶店へ行こう!」

可愛い声、小さな手、小柄な女の子が私の両手を引っ張り身体を引きずろうと一生懸命である。
そうだ私今大の字なんだ。そりゃそうなるよな。

「ちょ、ちょっと、起きます!起きますから!」

女の子は足を止めてくれた。
ムクっと起き上がる私を見てクスッと笑う。

「よかった。じゃあ、ひなたちゃん。一緒に喫茶店行こう!」

私の手を掴み、グイグイと前進する。
なんで私の名前を知ってるんだろう?
っというか、喫茶店なんかあったっけ?
だだっ広い道しかなかったんだけど?
ってかこの子誰!??
色んなことが頭の中を駆け巡る中、目の前には一軒の喫茶店が私を待ち侘びていた。

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