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石山恒貴、伊達洋駆「越境学習入門 組織を強くする冒険人材の育て方」

・本書は、企業がどうすれば"冒険者たち"を育て、その力を企業が前進する力にできるのかを、企業における越境学習("冒険者"を育てる学習のメカニズム)の研究を通して、越境学習の概要と効果など、体系的な知識について紹介した1冊。

・越境学習=ホームとアウェイを往還する(行き来する)ことによる学び。この学習の原型は、「越境した場で、違和感、葛藤を抱えながらも、なんとかやろうとする」という感覚である。これは、個人だけでなく、コミュニティにも変化をもたらすもの。越境学習者は、「越境」を体験したことをきっかけに、ホームでもある元の職場に働きかけ、従来のやり方を見直し、柔軟に新しいやり方を試すようになったり、異質な人たちと新たな取り組みを始めたりと、周囲を巻き込むダイナミックな変化を生み出すことがある。

・越境学習の特徴として、
①学習のプロセスが直線的ではない
②葛藤がむしろ学習の原動力となる
③もがくことも重要な要素である
④ホームとアウェイを俯瞰する
⑤所属組織でも葛藤は起こる
⑥良い組織でも葛藤は避けにくい
⑦必要な資源を動員できるようになる
がある。

・越境学習の前と後では、
①不安定な状態にあることに持続的に耐えられる
②不確実性の高い状態で探究し続け、それを乗り越えようとする
③全く異なる世界に思い切って飛び込む
といった能力が向上するという変化が見られた。これらは、困難な状況においてもしなやかに対応できる能力であるレジリエンスを促進する要因と重なる。また、起業家に必要だと言われている
①前提を疑う
②解が分からない、不確実な状態に耐えられる
という能力とも重なるところがある。

・越境学習を人材育成に施策として導入するにあたって大切なことは、プログラム導入に関わる関係者が越境学習の考え方を理解したうえで導入すること。仕事経験を通していかに学び、熟達していくかという世界観である経験学習に対して、越境学習はこれまで味わったことのない違和感・葛藤を通じて、いかにして現状を打破し変革を起こすかという世界観なので、目指している方向性が異なる。そのことを理解したうえで越境学習者を受け入れなければ、学習効果が小さくなるだけでなく、越境学習の効果を組織に還元することが難しくなる。越境学習によって人材や組織にどのような変化をもたらしたいのかを、関係者全員で共有しておくことが、人材育成として導入するにあたって欠かせない準備といえる。
※具体的な組織の活かし方については本書をご覧ください。

・本書では、「越境学習とはなにか(越境学習が個人や組織にもたらすもの・越境学習と経験学習の違いなど)」、「なぜ今、越境学習が必要であるのか(働き方改革と越境学習など)」、「越境学習でなにが起きているのか(越境学習のプロセス・越境前に必要な心の準備とはなど)」、「越境した人材を組織に活かすには(企業の人材育成に越境学習をどのように位置づけるのかなど、導入と運用方法について)」、「ハウス食品、パナソニック、大型商業施設などのケーススタディ」などが記載されており、越境学習についてわかりやすく解説した内容となっている。

#瞬読アウトプット  #1分書評 #日本能率協会マネジメントセンター #越境学習

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