見出し画像

竹田理絵『「お茶」を学ぶ人だけが知っている 凜として美しい内面の磨き方』

・本書は、世界30ヵ国の人々に日本の伝統文化を伝え、生徒数が3万人超、また、10ヵ国以上の国々に赴き、さまざまな場所で茶道の点前を披露してきた著者が、40年近くの間茶道を学び、生活の中で実践し続けて得た「置かれた環境に左右されることない、心穏やかに日々を過ごすこと」や「周りの声や自分の感情に左右されず、今、そしてこれからなすべきことを冷静に考え、たゆまずやり続ける」ための考え方について書いた1冊。

忙しい時こそ、丁寧にお茶を点てる-自分と向き合い、心を整えることで豊かな気持ちになれる-
・「心を亡くす」ほどあまりにも忙しいと、平常心や優しい心が失われてしまう。そんな時こそ、「急がば回れ」の精神で、丁寧にお茶を立ててみることを著者は薦めている。著者は、お茶には心の保湿効果があると考えており、忙しさによる心のささくれに潤いを与えるために、目の前の一腕のお茶と丁寧に向き合うことで、心が整い、余裕が生まれてくると語っている。
・おいしいお茶を点てるためには、正しい呼吸と動作が大切。茶筅のリズミカルな音が心地よく、お抹茶の良い香りが立ち始めたら出来上がり、ということができた頃には、焦っていた気持ちが自然と落ち着き、自分のことを一歩引いて客観的に見る余裕が生まれていることと著者は考えている。

目の前のことだけに意識を集中させる-穏やかな心になる-
・スマートフォンで大量の情報を受け取り、多くの仕事を抱える現代人は、心穏やかに過ごせる時間と集中力が、昔よりも減っていると言われる。そんな時こそ、五分でいいので仕事や家事をいったん脇に置き、目の前のことに集中してみること。例えば、お気に入りのお茶をお気に入りのお茶碗で丁寧に淹れてみる。そうするだけで、雑念が取り払われて精神的な余裕が生まれ、心が穏やかになるはず。

執着しない-生きやすくなる-
・毎日の日々の生活の中で、ひとつの失敗や行き違いが気に掛かり、なかなか頭の中から離れないことがあったりするのは人間なので、そういったこともあって当然。しかし、その執着(ひとつのことに心をとらわれて、そこから離れられない状態)をすてることができれば、そのようなストレスから解放され、心の余裕が生まれ、生きやすくなる。本書の中では、お稽古にいらした生徒さんが、「会社で嫌なことがあり、1週間ずっと落ち込んでいたそうだが、無心でお点前を続けていたら、いつの間にかそのことから離れることができて、立ち直るきっかけになった」とお茶のお稽古が、執着を手放すきっかけになったという事例が紹介されている。きっかけは何でも良いので、とにかく他のことに目を向けることが執着を手放すうえで大切なこと、ひとつのことに執着せず、さまざまなことを柔らかな気持ちで受け入れていく毎日が心穏やかで生きやすくなることを著者は語っている。

・本書では、「なぜ、一杯のお茶で、自分と相手の心を満たすのか」「ささいなことで折れない「心」の育て方」「逆境に負けない「生活力」の育て方」「どんな時も美しい「所作」の育て方とは」「選ばれる人になる「コミュニケーション力」の育て方」「世界に通用する「和の知識」とは」といったような章で構成されており、最後の章では、「日日是好日・一期一会」といった500年受け継がれるお茶の言葉と禅語が紹介されるなど、一生枯れない心の美を創るヒント61が掲載されている。

#瞬読アウトプット  #1分書評 #実務教育出版  #茶道

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?