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なりきりチャットに人生を捧げていた大人の思い出話13

19歳。
大学のサークルで飲み会があった。
まだ20歳になっていない自分はお酒が飲めないが、テンションの上がったサークル仲間とくだらない話をするのは楽しかった。

それと同時に、胃がねじ切れるような思いにかられる。
ラインハルトだ。
ラインハルトは私が大学の仲間と遊ぶことをひどく嫌がる。

「今日は大学のサークルの飲み会があるから夜は(オンラインゲームに)インできないよ」

そうラインハルトにメールを送ると

「わかった」

と一言だけ返信が返ってきた。

納得してくれたのかな、と思ったのもつかの間
大量の長文メールが送られてきた。
全てキャラクターの言葉で、なりきりだ。

「はじまった」

と思った。
私が飲み会に集中できないように、なりきりを続けるよう促してくるのだ。
暫く無視していると
「早く返信してくれ」
と何度もメールが来る。

「飲み会だから返信が難しい」
と返すと

「私のいない場所で、私の知らない人といっちが楽しくしているのが不愉快なの。
私のことが嫌いなの?好きなら早く返信してほしい。」

「早く帰ってきて」

「何時まででも待ってるから」

3つに分けられたメールが送られてきた。
飲み会は2次会のカラオケへと突入することになったが、私は誘いを断り家路を急ぐ。

家に帰ってPCを立ち上げると

「やっと帰ってきてくれた!」

とICQにラインハルトからメッセージが届いた。
ICQというのは、PCのみで使えるメッセンジャーのことだ。

「もう2時近いよ……ラインハルトは寝なくて大丈夫なの?」
私がそう送ると
「毎日2時間くらいしか寝てないけど平気。いっちの為なら……」
といった具合だ。

「今日は何する?ゲーム?チャット?私はエロチャがしたいんだけど……」
ラインハルトが言う。

エロチャはほぼ毎日している。
ネタも尽きてきたし、割と頭を使うので勘弁してほしいのだが。
しかし、やらないと彼女の機嫌は収まらなかった。

こんな異常な生活を1年以上繰り返していた。
体力的にも、精神的にも限界を迎えつつあったが、ただラインハルトを失うのが怖かった。

”ある日突然消えてしまったらどうしよう”

そんなことばかり考えていたように思う。

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