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猫は寄り添うだけ〜愛猫家のStrayプレイ感想〜

今回は何かと話題の「猫のゲーム」、「Stray」をクリアしたのでレビューしてゆく。
このゲームは個人的に、発表当初から楽しみにしていたゲームのひとつで、猫が好きなこと、サイバーパンクの世界観が好きなことも相成って期待度が高かった。

実際発売したところ、話題になり注目を集めたが、「猫が痛い目に遭う描写が耐えられない」「ホラー描写がある」等、物議を醸し出した面もあるので今回はこういった評価が気になり購入を戸惑っている人向けのレビューを書こうと考えている。

核心の部分には触れないが、ゲームの雰囲気がどんなものか伝わるよう少しだけネタバレも含む。
なのでどんな内容かあらかじめ確認した上でプレイしたい人向けのレビューであり、前情報を入れずにプレイしたい人にはお勧めしない。

まずはこれを見てほしい

愛猫のりんちゃんである。
世界一可愛い猫だ。

りんちゃんは私が11年前、少しでも何か助けにならないかと東日本大震災で飼い主を亡くしたペット達が集まる里親会に参加したものの、そのような境遇のペット達は既に里親が決まった後だったため、ついでに出されていた世田谷区の地域猫をもらったという経緯がある。

つまりは世田谷区をウロついていた元野良猫である。

地域猫なのに何故里親を捜されていたのかというと、あまりにも人懐っこい為、虐待等する悪い大人に連れ去られる危険を避けるためだったらしい。
なので引き取った時には既に3~4歳くらいじゃないかと言われていた。

私はかれこれ13年猫を飼っているが、最初に迎えた猫は先天的な病気で1歳半程で亡くなってしまった。
門脈シャントという難しい病気を抱えた猫で、子猫の頃から病院に通う毎日だった。

りんちゃんは2代目の猫だが、現在15歳ということもあり、猫の宿命である腎臓病を患っており、過去、獣医さんに2回死を宣告されたこともある。
なので猫が苦しそうな様子や辛そうな様子を沢山見てきたし、それをつきっきりで看病した経験もある。

その上でプレイしたStray、果たして私の目にはどう映ったのか。

猫が死ぬ描写があるのかということ

多くの人が気になっていることだと思う。
結論から言うと「YES」である。猫が死ぬ描写はある。
Strayにおける「猫」はかつて栄えた文明が滅び、人間の真似事を繰り返すロボット達の前に現れたいわば救世主だ。
RPGにおける勇者と呼ばれる存在と言っていい。

考えてほしいのが、RPGの主人公である勇者は必ずしも世界を救う為に苦難を乗り越える描写があるのではないかということ。
つまりそれを猫に置き換えたゲームがStrayだ。

しかし猫、されど猫であるので、猫らしい理念に基づいて行動している。
救世主と呼ばれた猫の目的は世界を救う為ではなく、ただ仲間の元へ帰るという、ただそれだけである。
だから猫が突然人間のような考えを持ったり、行動をしたりすることはない。
成り行きで救世主になってしまっているだけだ。

進路を邪魔する敵と呼ばれる存在の攻撃が当たると死んでしまうが、すばしっこく避けることもできるし、反撃もできる。
そして、失敗して死んだからといってそれによって凄く苦しんだり、悲しそうな描写があるわけではない。
パタッと倒れてコンテニューするという実にアッサリしたものだ。
Strayはグラフィックが繊細だが、その上で猫がやられるシーンを極力シンプルに仕上げたのは製作者の猫に対する愛を感じる。
猫飼いの経験上の意見としては、猫が弱っていく様子の描写や、人の身勝手な都合で悲しい目に遭ったりする描写が一番辛いので、そういったものが一切ないのは有り難かった。

更に言うとこのゲームにはアクション性があるが、難易度は易し目で、猫の着地や飛び乗りが100%成功するようにできている。
つまり接地判定がないのだ。
言い換えると猫という生き物が着地や飛び乗りに失敗することはあり得ない!ということだ。
なので着地に失敗したから死ぬとか、そういうことは一切ない。

アクション要素を易し目にしたのは製作者の意図的なものかどうかはわからないが、アクションゲームが得意な人は猫が死ぬ描写を見ることは極力避けられるのではないだろうか。

しかし、それでも、やはり猫が死ぬというだけで辛いという人にはまずこのゲームはお勧めしない。

飼い猫の気持ちが理解できるゲーム

猫飼いや猫好きにこそStrayをお勧めしたい。

Strayの世界には至る所に細かい置物や、ガラクタが沢山ある。
それをメチャクチャにすることもできるし、意味もなく高い場所から下に落としたりできる。
こういった「猫あるある」な行動を繰り返すことに、私は長い時間を費やした。
まさに飼い猫の気持ちに寄り添ったと言ってもいい。

雀卓に飛び乗り、ロボット達の麻雀の試合を台無しにする描写は特に傑作だと思った。
ロボット達は怒り出したり、悲しんだりするのだが、まず何をいってるかわならないし、自分の知ったことではないという気分だ。

悪戯好きの猫が同じことを繰り返す理由とはまさにこれで、人間達が呆れたり怒ったりしても自分には関係なく、そんなことよりも麻雀牌をメチャクチャにする方が楽しいのである。

そんな猫だが、自分に寄り添ってくれた存在には精一杯の礼を尽くす。
猫の相棒であるロボットB-12への思いや、旅先で出会ったロボット達に対する愛情はまさに飼い主へのそれだと思った。
そしてロボットたちが無条件に猫を愛したり寄り添ったりするのは、まさしく猫を愛する人間が与えるそれである。

このゲームをプレイすることで、飼い猫が自分の膝に座っていたり、一緒に眠ったりすることがどれだけ愛情深いことか理解できたし、それはとても貴重な時間だと感じた。

雀卓をメチャクチャにするネコチャン

ポストアポカリプス好きとしての満足度

ポストアポカリプスものが大好きな自分としては、遠い昔に滅んだ人類の真似事をしているロボットのみ存在している世界というだけでワクワクが止まらなかった。
それと同時に、旅先で立ち寄る各エリアの描写が「お約束」といった感じのものを余すことなく詰め込んでくるので、文句のつけようがない。
特に街や集落の描写が細かすぎる。

ボロボロになった室外機が沢山並ぶビルとか、謎の文字が書かれたネオン看板とかみんな好きでしょ!?

至る場所にある飲食店の存在も謎で、果たしてロボットが飲食が必要なのかと思うところではあるが、それについては是非自分の目で確かめてほしい。
個人的にはファーストフード店やラーメン屋の描写がグッときた。

全体なプレイ時間は短めのゲームだが、よくもここまで詰め込んだと思うほどの満足感だ。

美しいサイバーパンクの街並み

ホラー描写はどうなのか

話題になっているホラー描写についてだが、大まかに言ってしまえば「SFあるある」である。
普段SF映画を見慣れている人や、異世界が舞台のアクションゲーム(フロムゲーやデビルメイクライ等)をやり慣れている人なら「ああ、こういうのね」という感想で済まされるものであるとは思う。

普段あまりSF映画を見ない人や、CEROAのゲームしかプレイ経験がないという人はちょっとビックリするかもしれない。
StrayのCEROはBだが、ややC寄りなんじゃないかと思う処もある。

ただ、このホラー描写は一部のチャプターのみに限定されるので、どうしても無理!という人はそこだけ家族や友達、恋人等にやってもらうのもアリだと思う。

素晴らしいサウンド

Strayは音楽も素晴らしい。
ジャンルとしてはアンビエント、エレクトロニカあたりだと思うが、同じ場所でも進行具合によって変化するのでプレイをしていてテンションが上がる。
人の真似事をするロボット達が音楽に関心を持つ描写が数多くあり、サウンドがミニイベントに絡んでくることもある。

文明の滅びた世界でかつての人類が残した音楽が重要視される描写はお約束と言えばお約束なのだが、必要不可欠なものだとも思っているのでここに力を入れてくれるのは本当に嬉しかった。
Steamで購入する際は是非サントラ付きをお勧めしたい。

ガチで非の打ち所がないのか

そうとも言い難い。
カメラワークにやや難ありな部分があるし、PS4版に限るのかもしれないのだが、バグが多い。
一箇所意味深な描写があったので、深い意味があるのかと考察を巡らせていたが、クリア後に調べたら唯のバグと判明したところもある。
途中、バグで着地が不可能になってしまった箇所もあり、これはどうしようもなかったのでチャプターの最初からやり直した。
ただ、バグに関しては今後パッチで修正されてゆくことが期待できる上、カメラワークもアクション要素が易しいのでそれほどは気にはならない。

最後に

Strayはサイバーパンク及びポストアポカリプスと猫モノという異色の組み合わせで、そのひとつひとつの描写に一切手を抜くことがなく成功を収めたゲームだと思う。

全体的にクリア時間は8時間前後と短めだが、その中で得るものはとても大きい。
何よりも、普段猫をよく観察している人ほど、猫がますます好きになる要素が無数に散りばめられている。

猫はただ寄り添うだけなのだから。

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