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なりきりチャットに人生を捧げていた大人の思い出話15

ラインハルトのプレイヤーは、会うなりハイテンションではしゃいでいた。
私は昨夜の出来事を思い出しながらも

「折角会えた機会なんだし、今日は今日で楽しもう」

と、気持ちを切り替えた。

どこへ行ったらいいかわからなかったので、よく行くアニメショップやカフェを案内した。

機嫌が悪くなったり、メールが大量に送られてきたりする時は怖いけど
二人で過ごしたり、話したりする時間は楽しい。

このまま何事もなく今日が終わってくれれば………

しかし、夜に差し掛かるに連れて徐々にラインハルトのプレイヤーは私にベタベタとするようになった。
手を繋いだり腕を組んだり、まるでクリスマスにデートをする恋人同士のように。

「あのさ………」
私が何か言おうと開くと
「ねえ、いっち。このまま私を一生離さないで、お願い。ずっと傍にいてね」

一瞬言葉に詰まった。
しかし、ここできちんと断らなくては。
「そのことなんだけど」

「いっちが私のこと捨てたら、死んじゃうかも」

頭を殴られたような衝撃だった。

死ぬ………?

私がここで断ったらラインハルトのプレイヤーは、自殺………?
いや、そんなことは考えたくない。

その日、とうとう駅で別れるまでラインハルトのプレイヤーに何も肝心なことが言えなかった。

ーー私が別れを切り出せば、ラインハルトのプレイヤーが死ぬ。

そして、彼女の実の兄から「妹を任せる」と言われた事実。

私は、一体どうすればいいんだろう。

一つだけ確信していることといえば、自分の手では決して彼女を幸せにすることはできない、ということだけだった。

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