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なりきりチャットに人生を捧げていた大人の思い出話10

さて、私とラインハルトの関係だがその後も仲良くはやっていたが度々トラブルもあった。

ラインハルトはとにかくモテるのだ。
私とカップルになった後もとにかく色んなキャラクターからアプローチされていたように思う。
その度にモヤモヤはするのだが、突然

「こいつは俺と付き合ってんだけど?」

と割り込むのは失礼な気がして、ラインハルトがアプローチされている最中はそっと見守るしかなかった。

と、いうのをラインハルトに伝えたら

「いや、そこは割り込んでこいよ!」

とのことで、これについては長い間悩んだものだ。

リカルドの話の時も少し触れたが、「なりきり」といえど背後にいるのは人間なので相手にマイナス印象を与えないでこういう行動をするのは難しい。
しかしよくよく考えてみれば、ラインハルトのことが好きな人は元々自分のことを良くは思わないだろうし、マイナスから始まるならプラスに変えてゆけばいいだけなのだ。

その後は

「こいつは俺と付き合ってんだけど?」

というようなあからさまに喧嘩を売ることはせず、相手の前でラインハルトと親しげな様子をさりげなく見せることで諦めさせていったように思う。

相手は自分にマイナス印象を抱くのは当然だが、何かの機会でまた話すことがあったら嫌な思いはさせない会話運びをする。
「意外とこいついい奴だな」
と思ってくれればそれでいい。

もちろん、すべての人に好かれるのは不可能なので私のキャラクターを良く思ってない人はたくさんいるだろう。
ただ、それが当時の最低限のネットマナーな気がしていたのだ。

あくまでこれはヘタレで甘ちゃんな私の考えなので、全く正しいとは言えない。
ただ、どうしても背後にいる人間の気持ちを考えてしまうのが自分のプラス面でもあるし、マイナス面でもあるのだ。

ラインハルトとはプレイヤー本人とも話す機会が沢山あり、「なりきり」ではない雑談などもよくしていた。
もちろんお互いの年齢も明かしたが、相手は自分より10以上も年上の女性で、しっかりとした経済力のある大人だったので、当時大学生で遊びまわっていた自分にとっては、遠い世界の人のように思えたものだ。
しかしゲーマーだった私は、ゲームの話になると対等に話せることには一種の安心感のようなものがあった。
いのりさんと仲良くしていた時も感じていたことだが、共通の趣味があると、たとえ年齢差があっても仲良くなれるということがオタクの強みだなと思った。

やがて私たちは「街中にお互いが住める家を借りた」という設定で二人だけで会話できるチャットを作った。

そこでは……
まあ主にエロいチャットをしていたのだが、お互いのキャラクター設定の掘り下げなどもよくしていたように思う。
相手の発言で自分の作ったキャラクターの深みが増すのはとても楽しかった。

しかし、だんだんとその遊びだけで満足してしまう部分があり、私たちは大勢の人がいるサイトのチャットルームにはあまり顔を出さなくなった。
決まった相手ができてしまうと二人だけの世界で完結してしまうことは以前もあったことで

「どこもこんなものなのかな?」

と、少なくともこの時は軽く考えていた。

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