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「Unpacking」 アンパッキング レビュー〜人生とは引っ越しと再生の連続である〜

「引っ越し」というとどんなイメージを持つだろうか?
「心機一転するのに最適」と思う人もいれば、「面倒臭い」と感じる人もいる
生活の変化で仕方なく引っ越しを強いられた人はマイナスイメージかもしれない
そもそも引っ越し自体をしたことがないからよくわからないという人もいるだろう


自分はというと実は引っ越しが大好きだ
こう言うと様々な場所を転々としているイメージを持たれるかもしれないが、人生で引っ越しをしたのは3回である
1回目は子供の頃だったのであまり覚えていないが、うち2回は大人になってから自分で決めた場所に住んだので、それに至った経緯や場所を思い出すと感慨深い

今住んでいる家はかなり気に入っているが、それでも無性に引っ越しをしたくなる時がある
まだ見ぬ新しい場所や生活に思いを馳せてしまうのだ
友人に、1〜2年で引っ越しを繰り返す人がいるが、同じ気持ちだと語ってくれた
「生活をリセットさせる」という意味でこれ程有効的な手段はないのではないかと思う

私の好きなYouTuber(VTuber)の”すあだ”氏もよく引っ越しをしているイメージがある
引っ越しをする度に新居に「マイブーム」が反映されていて、その話を楽しそうにしてくれるが、彼の引っ越し話は本当に面白い
中でも新居の壁が薄すぎた為、10日で引っ越した「引っ越しRTA」の話は最高なので興味のある人は是非見て欲しい

※「バーチャルおばあちゃん」って誰やねん、さっき「”すあだ”氏」とか言ってなかった?と思った人は説明がめんど.........複雑なので自分でググッて調べてください

前置きが長くなってしまったが、そんな引っ越し好きの方にお勧めしたいのがこの「Unpacking」というゲームだ

筆者のハウジングゲームに対する思い

どんなゲームなのか?
これを説明する前に自分がどんなゲームを好む人間なのかまず語りたい。
「お前の語りはどうでもいい、早くゲームをレビューしてくれ」
という人は見出しの「ここからレビューです」まで飛んでほしい(序盤のネタバレあり)

私は「どうぶつの森」シリーズは好きだが「Minecraft」が苦手だ(人のプレイを見るのは大好きです)
「ハウジングできるゲームが好き」というとこの2つを勧められがちだが両者は似て非なるものである

家を用意されて、家具や小物を使って好きにコーディネイトしてくれ!と言われると無限にやってしまうのだが、資材をあげるから建造物から作ってくれ!と言われると何をしたらいいかわからない

なので「どうぶつの森」シリーズの最新作である「あつまれどうぶつの森」の島クリエイト機能は正直苦手だった
早く小物を島中に飾りたかったので、島の構造作りはかなり適当にやってしまった記憶がある

島の外より中を飾る方が好き
特にダイナー家具がお気に入り

「どうぶつの森」は「ハッピーホームデザイナー」というひたすら街の施設や家をコーディネイトするシリーズがあるのだが、こちらの方が自分には向いているように思う

ハッピーホームデザイナー
「売れない芸人の二人が暮らす家」
というテーマでハウジングした

そう、自分は世界創造をしたいのではなく、家具や小物を家の中に配置したり、飾ったりする行為が好きなのだ

MMOのハウジング機能も大好きな要素の一つだ
ドラゴンクエスト10のハウジングには何十時間も費やしたと思う
ただ、ドラクエ10は1キャラクターにつき家を3軒までしか所有できず、かつ課金で買った家具などは複数キャラクターで共有ができない為、金銭的な理由でハウンジングは3軒までしかしていない
どうしてもやりたい時は作っては壊して.........を繰り返してきた

「海と街の路地が見えるホテル」というテーマでハウジングしたDQ10の家

ドラゴンクエスト10のいわゆる「ハウジング勢」と呼ばれる人たちは別キャラクターを沢山作り、他のキャラクターでも持てる家具を駆使してハウジングしたり、テーマを決めてピンポイントで課金家具を買って上手にハウジングしたりしているが、自分は存在している家具をある程度持っている状態からスタートしないとストレスが溜まってしまうので、なかなかメインキャラクター以外でのハウジングを踏み切れないでいる

我儘すぎてドラクエ10では「ハウジング好き」とも名乗り辛いなんとも中途半端な存在、それが私だ

しかし、この「Unpacking」というゲーム
この自分のよくわからないハウジングゲームへのこだわり、そして時折湧き上がる「引っ越し欲」を全て解消してくれた

ハウジングゲームをする前にまず考えることってなんだろうか?
私は、そこに住んでる人がどういう人物か、どういう経緯でその場所に住むに至ったか.........そんなことを考えながら、時には文字におこしてみたりしながら構築してゆく

「ゲームでそんな難しいこと考えたことがない」
と思うかもしれない
でもハウジングゲーム好きの人は1度は自分が住んでみたい家を作った経験があるはずだ
つまり、少なからずともハウジングには自分の経験や好み、つまり人生の積み重ねのようなものが反映されている

「Unpacking」はその逆で、引っ越しの荷解きやハウジングを通して主人公の人生を知るゲームである

※ここからはゲーム序盤のネタバレを含めてレビューしていこうと思うので、ネタバレなしでプレイしたい人はここで読むのをやめるのをお勧めする

ここからレビューです(序盤のネタバレあり)

1997年のアルバムを開くと始まる本編



子供部屋に積み上げられた大きな段ボールを荷解きしながら小物を設置してゆく
段ボールの中から出てくるのはサッカーボールやヒーローフィギュア.....この部屋の主は小さな男の子なのかな?と思いきや、アメリカンナイズな可愛らしい犬(?)のポスターや、月のマークがついたリュックが出てきた時気付かされる

この部屋の主はサッカー好きな女の子だ!

サッカーのトロフィーまであるのだから相当運動神経の良い子なのだろう

セーラームーンモチーフみたいなバッグ
可愛い

まず驚いたのが小物ひとつひとつのグラフィックの作り込みの凄さである
「あつまれどうぶつの森」でも小物のディティールの細かさには驚いたが、「どうぶつの森」との大きな違いは、この「Unpacking」、全てドットで描かれている
ドット絵好きは小物を拡大して眺めるだけでもテンションが上がるだろう

色とろどりのカセットテープのケースが懐かしい

配色センスの良さにも感動を覚える
一見カラフルで統一感のないように見えるが、いざ並べてしまえばどう並べても洗練された絵面になるのだ
これはもうアートである

そして、配置していて気持ちが良いのは「音」の表現だ
ぬいぐるみ、本、フィギュアを置く音....その全てが細かく違っていて、本を置こうと配置した瞬間「カンッ」という音がしたのでよくよく見るとDVDのケースだった、なんてこともよくある
視覚と音で両方楽しむことができる

何より小物を並べながら少しづつ部屋の主の人物像が見えてくるのがすごい
このゲームは最初から最後まで主人公がどういった人物なのか説明がない
だが、持ち物から主人公がどんな人物なのか、どんな人生を送っているのかが徐々に見えてくるのだ

2ステージ目 2004年



主人公は成長して一人暮らしを始めたようだ
このゲームのすごいところをまたあげると「生活の生々しさ」だ

女性用下着も一つ一つクローゼットに並べなければいけないし、トイレ&洗面所には生理用品やタンポンまである

いろとりどりのパンツ!
こんなもんまであるのか!とびっくり


私がずっと気になっていたのはここまで女性の生活の生々しさを描いているにも関わらず、コスメ類が一切ないなということ
あまりメイクをしないタイプの女性なのだろうかと思いきや、これを見て「なるほど!」と思った

主人公はポーチにメイク道具を全部ぶっ込んでそのまま出さないタイプである

このポーチは3ステージ目から出てきた

確かにこの方がそのまま外出時持っていけるから楽なのだ
洗面所に出しておくと外出時にはまた、いちいちポーチに移し替えないといけないからね

この頃から部屋の小物に「TRPGのルルブ」が追加されていたり、デッサン人形やスケッチブック、コピックがあったりと

こいつ、サッカー少女からTRPG好きで絵を描くオタクになったんだ

という謎の親近感が湧いてきた

あーっこれは!TRPGのルルブ!
一人暮らし始めたてなのにデスクトップPCがあるところが「この時代のオタク」って感じで良いですね

3ステージ目 2007年

ひときわ目をひくこれ

作りかけのコスプレ衣装やんけ!

TRPGやって絵も描いてコスプレやるオタクなのか?
サラブレッドすぎだろ

と思いきやどうやらここはシェアハウスの様子
ということはシェアハウスメンバーの一人がレイヤーなのかな?

これは俗に言うオタクシェアハウスというやつなのでは

TRPGのキャラシやコマ、ゲーム機やボドゲ、DVDの多さから様々なオタクと住んでるようでめちゃくちゃ楽しそう
まさに夢に見た憧れの生活だな.........と思いながら次のステージへ

シェアハウスのメンバーでTRPGのセッションやってるの?羨ましい!

4ステージ目 2010年

男の気配がします

男のパンツもきちんと並べます

主人公に男ができてどうやら同棲を始めたみたいなのだが、悲しいことに主人公の趣味スペースが大幅に縮小されている
ノートPCと小さなタブレットらしきものはあるのだがリビングにしか置けないし、デスクトップPCはどうした??
と、いうなんともやるせない気持ちになってくる

シァアハウスではあんなに楽しそうにオタクライフを満喫していたのに………

主人公はおそらくイラストで何らかの賞をとっているようなのだが、その賞状が壁に飾れずベッドの下に置くしか手段がないと気づいた時

チクショオオ〜〜なんで壁に飾れないんだよぉおおお

別れてくれ

という気持ちが込み上げてくる
が、幸せのかたちは人それぞれだ
趣味を縮小したとしても、なお得る幸せもあるのだろう

とりあえずルルブが捨てられていなくて良かった

何はともあれTRPGだ


5ステージ目 2012年

別れている

なんと別れて実家に戻ってきたようだ
この描写の生々しさよ

男と別れて実家の子供部屋に戻ってきたぞ!

ミシンがあるということは主人公もコスプレを嗜むのだろうか

クッキー缶は裁縫道具が入ってるんだろうなあ

ともあれTRPGやってゲーマーで絵も描いてコスプレやるオタクとしての主人公が復活した
何より賞状を壁に飾れるのが嬉しかった

別れた男の写真に画鋲が刺さってるのが怖えな、と思いながらコルクボードにそのまま飾っておこうとするとエラー表示が出る

別れた男の顔に画鋲が……

なるほど、と思い唯ー置くことのできる「棚の中」に収納したのだった

遊んでくれて ありがとう。つまらなかったわ。


ルルブ、D20、キャラコマ(未塗装)全部あります
セッションよろしくお願いします

序盤だけひととおりレビューしてしまったが、この後主人公がどうなるのかは是非ゲームをプレイしてほしい

自分のよくわからんハウジングゲームへのこだわり、そして時々湧き上がる「引っ越し欲」

最初の方で「Unpackingをやることで「満たされた」と言ったこの二つの欲

「ありったけの小物を家中に配置して良い」という、私がハウジングゲームで最も好きな要素が何もかも実現されている楽しさがあった
ハウジングにおいて持てるものに制限があるとたちまち萎える自分としては、溢れんばかりの小物に最初から囲まれているのが幸せだった
中には置く場所が決まっている物もある
これが、このゲームのパズル要素のひとつでもあるので、「好きな位置に好きなものを配置したい」という人は少し引っかかる部分かもしれない

そっして引っ越し欲
一人暮らしをしたり、同棲したり別れたり、このゲームの「引っ越し」とはまさに人生リセット&スタートの連続である
まだ見ぬ新しい場所や生活に憧れはするけど早々できるもんじゃない、という人はお手軽に引っ越し気分を味わえるのではないだろうか

「Unpacking」は激しいアクションや派手な演出があるわけではない
しかし、可愛いドットのグラフィックを眺めながら、ゆっくりゲームがしたいという人にオススメである

主人公の人生を見届けた時、きっとさまざまな思いが込み上げてくるに違いない


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