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【二次創作小説】放課後の駒音(SIDE:鮎川陽太)

囲碁将棋部の部室はせまい。

いや、本当は他の部室と比べてせまいわけじゃないが、顔を見たことのない先輩たちは棋書も棋譜もその他資料もごちゃごちゃに放置したまま卒業していってしまったので、モノであふれる部室は必然的にせまい。

まぁでも、机と椅子さえ空いていれば問題ない。将棋盤をひとつ広げるスペースさえ確保できればいい。
部員は俺ひとりだから。

囲碁将棋部は静かだ。
手元で駒を動かす音、棋書をめくる音が耳に心地いい。

無音というわけではない。
遠くから、グラウンドで叫ぶ運動部の声と、音楽室で演奏する吹奏楽部の練習の音も聞こえてくる。
いつもの放課後の音だ。

今日は先週の王位戦の棋譜を並べている。
接戦の末、挑戦者が第3局を制して連敗を止めた。

ぱちん、ぱちんと、棋譜に沿って駒を進めていく。

終盤が難解だったんだよな…。
秒読みに入ってたから早すぎて俺には読みきれんかった。
そう、この辺から。

ここで銀を上がったら?
ぱちん。

で、こう受けると?
ぱちん。

ふむ、なるほど。
で、こうなるわけか。
ぱち。ぱち。ぱち。ぱち。

真剣に考え始めると遠くの音は完全に消えて、駒音だけが残る。
こういう時、頭の芯がとてもクリアだ。

ふと、視界の端に黄色いものが横切った気がした。
顔を上げると、開け放したドアからボールがころころと転がっているのが見えた。
減速して止まる。

「…テニスボール?」

何でこんなところに?
外から飛び込んできたのかな。

ゆっくりと立ち上がってドアまで歩き、ボールを手に取った。

すると、廊下で背の高い女子がキョロキョロしていることに気づいた。
よく知っている後ろ姿。

「もしかして、探してるのこれ?」

ボールを見せながら話しかける。
きょとんとした顔で振り返ったのは、やはり岩田さんだった。


岩田さんはクラスメイトで、俺の隣の席の女子だ。
テニス部に所属している。

おっとりしていて、口数の少ないところが俺にちょっと似ている。

目立つのが苦手なところや、真面目でそれなりに勉強ができて、先生や友達から何かと押し付けられがちなところも。

俺は井中町出身だ。
中学では1クラス7人しかいなくて、みんな家族みたいに育った。
札幌の大きな高校に馴染めるか不安だったけど、ペコさんと岩田さんのおかげで毎日のんびり過ごせていると思う。

ペコさんは寮母さんだ。
世話焼きで、料理が上手くてとてもおいしい。
おかげで少食の俺でも箸が進むのがありがたい。

面倒見のいいところは岩田さんにちょっと似てる。


「ありが……!!」

部室のドアのところまでテニスボールを取りに来た岩田さんが、囲碁将棋部の中を見て固まった。

「ボ、ボールのせいで?」
「いやこんななんだ部室いつも」
「…ピタゴラスイッチみたいになったのかと思った」

いや、ならないだろ。
岩田さんはたまに発想が面白い。

「将棋…部?」
「囲碁将棋部。今 部員、俺ひとりで」
「えっひとり?ひとりで何するの?」
「詰め将棋したり…」

実は将棋はひとりでもできることはいろいろある。
詰め将棋、手筋の勉強、定跡の研究、棋譜並べ、プロの対局観戦。
囲碁も同じだ。
ひとりでも時間を持て余すことはない。

でも対局だけは無理だ。
アプリを使ってAIや画面の向こうの知らない人となら指せるけど、将棋盤をはさんで対局する時の、あのわくわくする気持ちだけはひとりじゃ体験できない。

ふと気づいた。
岩田さんならやったことあるんじゃないかな。

「岩田さん、将棋できる?」
「え……駒の動かし方知ってるくらい……」

やっぱり。

「俺のほう駒落とすからやらない?」
「絶対それでも相手にならないよ、面白くないよ」

将棋をやってると相手の弱点を把握する癖がつく。
岩田さんを動かすには。

「俺に勝てたら、ゴミ拾いの時、なんで神城が怒ったか教えようか」

「………じゃあ、鮎川くんは王将だけで…」

やっぱり乗ってきた。

「それはさすがに。歩と金はちょうだい」

8枚落ちで交渉成立。
岩田さんの口ぶりだと10枚落ちでもいけそうだったけど、神城の話を勝手に持ち出した以上、負けられないので念のため。

神城悪いな。
今回は利用させてもらうよ。

将棋盤に駒を並べる。
部室に俺と岩田さんの駒音が響く。

「鮎川くん、飛車と角ってここで良かった?」
「そう」

小学校の学童で少し遊んだことがある程度と言っていたが、岩田さんが駒を並べる手つきに迷いはない。

対局開始。
駒落ちなので俺が上手(うわて)で先手(せんて)だ。
9筋の端攻めを狙って初手は8四歩とした。

何となく予想はしてたけど、岩田さんはこれだけ数の差があっても全く攻めてこない。
玉将を囲うこともしない。

囲い方は知らないだけだと思うけど、ひたすら相手の様子を見るのは岩田さんらしいな。

駒落ちの上手は駒同士を連携させて少しずつ自陣を広げていくのがセオリー。
大駒を使わせず、と金をたくさん作る。

岩田さんにはどんどん駒をぶつけていこう。
とりあえず8八の角を狙う。

角頭を歩で叩いたら、岩田さんが長考モードになった。

思い切った手は指さないところ、駒がぶつかったら真面目に考え込むところ、やっぱり岩田さんだな。

真剣に考え込んで動かないつむじを見て、こっそり笑う。
そして交渉のネタにした、4月のゴミ拾いの時のことを思い返す。


北高は入学式の翌日に裏山のゴミ拾いをする伝統があるらしい。

前日に席順で男女6人のグループ分けがあって、そのメンバーで作業をする。

席は五十音順なので、男子の1番の俺と女子の1番の岩田さんは隣同士。
グループも同じになった。
と言っても当日の作業中はすぐ男女で分かれたけど。

男子メンバーの神城は明るくて良い奴。
サッカー部でガタイもいい。
なかなか筋肉のつかない俺には羨ましい。

もうひとりの井沢はあまり好きじゃない。
あいつはデリカシーの意味を辞書で引いた方がいい。

初対面の岩田さんに、いきなり「八郎」というあだ名をつけようとして驚いた。
八郎って、絵本に出てくる大男じゃないか。

岩田さんは確かに背が高い。
井中町にはこんなに背の高い女子はいなかったから、初めて見た時は目を奪われた。

でもちっとも八郎じゃない。
こんなに感じが良くて控えめな八郎がいるわけない。

井沢に変なあだ名をつけられそうになっても、岩田さんは怒るどころか、えへへと笑ってその場の空気を壊さないように気を配っていた。
岩田さんと同中の神城が「中学の時は岩ちゃんて呼ばれてたよね」と話に割り込んだくらいだ。

それでも井沢は懲りずに、男子グループでゴミ拾いをしている最中にも岩田さんのあだ名の話を蒸し返した。

「岩ちゃんより八郎の方が似合ってるよ絶対」
「そう思わん?」
「ウケる〜」

本人が近くにいなくても愉快なものではない。

一言言ってやろうかな、と顔を上げた瞬間、神城が井沢を盛大に蹴飛ばしていた。

思わずぽかんと口が開いた。
井沢は高台の上から斜面を転がり落ちていく。

おいおい神城。
それはやりすぎだろ。

斜面の下を覗き込むとちょうど女子グループがいた。
岩田さんは木につかまって、転げ落ちた井沢を助けようとしている。

「朔英!!助けなくていいから!!」

今度は神城の大声に驚いた。
ていうか、呼び捨て???

「自力で上がれるから!!甘えんな優心!!」

おいおい神城。
岩田さん、顔真っ赤だぞ。
やりすぎだろー…。


岩田さんがようやく次の手を指した。
9筋に角を上がって逃げた。
うん、まぁそうだよね。

じゃあ、これは?

また長考が始まった。
俺の一手一手に岩田さんが悩むのがちょっと楽しい。


もうひとつ思い出すことがある。
つい最近の英フェスの打ち上げのことだ。

英フェスは校内イベントだ。
クラス単位で英語劇を発表する。

7月の一大イベントを終えて、クラスで焼き肉食べ放題に行くことになった。

俺と岩田さんは一緒にプロンプターをやって結構仲良くなった。
話してて波長が合うこともわかった。

俺は岩田さん以外に親しく話す相手はいないし、そんなに量を食べられないので、大部屋の隅で楽しそうなみんなを眺めていた。

岩田さんは普段、小野寺さん香川さんと一緒にいることが多い。
でもその日はひとりで部屋の隅にいて、目が合ったので隣に移動してみた。

「あっちで一緒に盛り上がらないの?」
「私は見てるのが好きで」
「あー俺もだわ、楽しそうなの見てるのいいよね」

やっぱり、気が合うんだよな。

「英フェスありがとう、岩田さんのおかげでラクだった」
「私も鮎川くんいたから安心してた、全然緊張とかしなかった」
「え、俺、岩田さん落ち着いてるから頼もしいと思って安心してたよ」
「えっそうだったんだ」

他愛のない会話も楽しい。

「神城が岩田さん助けてたね」
「……友達だから…」
「中学一緒だったんだっけ?」
「小学校も……」
「長いなー、いいな仲良いんだね」

英フェスの劇の最中、岩田さんは突然キャストの前に飛び出し、ステージの下に落ちた。
プロンプターは黒子だから本来ステージには出ない。
突然のことに俺がびっくりしている間に、ライオン役の神城がさっと岩田さんに手を伸ばして引っ張り上げた。

神城は人前で動くことを厭わない。
岩田さんが困ってたら即座に助ける。
あいつのそういうところに最初は驚いたけど、最近は少し眩しく感じる。

何で突然ステージに出たのか訊いてみたかったけど、岩田さんの歯切れが悪いので、この話はやめることにした。

「俺中学遠くて、寮だから知ってる人誰もいなくて」
「え、寮とかあるんだ知らなかった、どこから来たの?」
「井中町ってところ」
「知らない」

道民でも知らないよな。
観光資源も名産品もない辺鄙な町だから無理もない。

「同級生、クマに洗濯機こわされたりとかしてたよ」
「えっ洗濯機 外にあるの?」
「うん」

「どうしてこの学校にしたの?」
「プール学習がないから」

岩田さんはよくわからない顔をしてる。

「俺細くて、食べても全然太んなくて。
ずっと細すぎるのがコンプレックスで」

少しだけ迷ったけど、言った。
岩田さんも体格いいのがコンプレックスだと思うし、そんなところも俺たち似てると思うから、正直に打ち明けた。

「筋トレしても全然太くならないんだよ」
俺は長袖シャツをめくって腕を出して見せてみた。
細くてかっこ悪いんだよな。

と、同時に岩田さんが腕をにゅっと出したから面食らった。

「どうして……?」
「えっ比べるんじゃないの?」

素でボケてる。
思わず笑ってしまった。

と、ここでキャストの女子ふたりが声をかけてきた。
「岩田さんと鮎川くん、プロンプターおつかれさま」

岩田さんが応じる。
「あっうん、キャストお疲れさま」
「うん、ありがと」

「ふたり、研修の時も一緒に走ってたよね。
もしかしてふたりって付き合ってるの?」

一瞬、変な空気になった。

「…俺たち、付き合ってないよね?」
俺が言う。

「ないよね?」
岩田さんが言う。

「えーそうなんだ…」
「でもお似合いだよねふたりー」
「うんふたりいいと思うけどな〜」

当事者の俺たちを置いて話が進んでいる。
あんまり経験したことのない雰囲気でこそばゆい。

「あのさ」
周りにも聞こえていたのか、岩田さんと仲の良い小野寺さんと香川さんが話に入ってきた。

小野寺さんが意外と強い口調で言う。
「そーゆーノリやめなよ、小学生じゃないんだからさ。迷惑だと思う」

「別に俺は迷惑ではないけど」

気づいたら口に出していた。
うん、別に迷惑ではない。

「もうみんな食べ終わった?」
部活の試合で遅れていた神城が到着して声をかけてきた。

「何かあったの?」
微妙な空気を察したのか訊いてくる。

そこで岩田さんがすごい勢いで立ち上がった。
「お肉とってくる!!」

岩田さんが食いしん坊なのは把握済だ。
運動部だし、肉、好きそうだよな。

そう思って岩田さんが肉を焼き始めたのを眺めていたけど、岩田さんは網の上の肉には目もくれず、一点を眺めている。
いやいや、肉、焦げるんじゃね?

視線を辿ると、遠くで友達と笑ってる神城の後ろ姿。

あー……。
うん。なるほど。そういうことか。

正直、その夜はなかなか寝つけなかった。


岩田さんとの対局は最終盤に入った。

もらった大駒はぜんぶ駒台の上だ。
たくさんの詰みをわざと逃して、反撃のチャンスをちりばめながら、ゆっくりじわじわと進軍した。
この対局がいつまでも続けばいいと思ったから。

それでも岩田さんは防戦一方で反撃しないので、どうしても一方的な展開になる。

受けてばかりで楽しいとは思えないのに、岩田さんは一手一手真剣に考えている。

「岩田さんて無言に強いんだね」

話しかけたら、岩田さんが顔を上げた。

「俺あんまりしゃべるほうじゃないから。
沈黙が続くと何かしゃべった方がいいんだろうなと思うんだけど。
岩田さんとは………気をつかわなくて楽だな」

「あ、私お母さんぽいとか言われるから。
恋愛対象じゃないみたいな。
友達ぽい…?」

「いや、はっきり分けなくてよくない?
友達の好きとか、恋愛の好きとか、
俺は分けて考えたことない」

岩田さんからの返事はなかった。
でも伝わった感触がある。
その後は、またお互い無言で指し続けた。

ぱちん。
指し慣れてない岩田さんの駒音は俺よりもだいぶ小さくて、そんなところすら、控えめな岩田さんらしいと思った。

ぱちん。
4八とで王手をかけた。
とうとう岩田さんの玉将には逃げ場がなくなった。
詰みだ。

「鮎川くん、私詰んでる?」
「まあ」
「王手して取っちゃってよ〜!!」
「岩田さんが『負けました』って言わないと」

そんな話をしていたら、入口から神城が入ってきた。

神城、岩田さんがいるところにはすぐ現れるな。
番犬か?

岩田さんも気づいて振り返る。

「ルールわかんないけどどういう状況?」
「鮎川くん強くて」
「遊ばれた?」
「うん」

俺は正直に言った。
「すぐ終わったらもったいないと思って」

神城の顔がこわばった。
言葉の意味を正確に理解したらしい。

「あ、いつもひとりでやってるから?」

残念ながら岩田さんにはいまいち伝わってない。
けどまぁ、的外れでもない。

「うん」

「強そうだな鮎川」
言いながら、神城が将棋盤の横に右手をついた。
岩田さんの後ろから腕を伸ばして今にも密着しそうだ。
やっぱり番犬だな。
仲良しアピールのようだが、岩田さんの身体が若干こわばっているのを俺は見逃さなかった。

俺からも神城に話しかける。
「サッカー部だっけ?部活終わったの?」
「うん」

岩田さんが訊く。
「…ひとりで帰るの?」
「いや、今渡辺が先生に怒られてて待ってんの」

俺も訊く。
「なんで?」
「渡辺バリアート入れてさ」
「バリアート?あ、こういうやつ?」
「そう『校則で禁止されてない』って言ってモメてる」

岩田さんが立ち上がって言う。
「私帰ろうかなそろそろ」

感想戦は無理か。
もう少し話したかったけど、仕方ない。
「岩田さん、また気が向いたら来て」

岩田さんの返事を待たず、神城が会話に割りこんできた。

「岩田!休みわかったら夜ラインすんね!」 

休みに出かけるアピールとライン知ってるアピールをコンボで入れてきた。
はー。番犬…。

その夜、俺はクラスのグループラインのリストから岩田さんを探して友だち申請した。
アカウントがわかるんだから、別にいつでもつながれる。

どうせなら今夜だ。
ふたりの会話を少しでも邪魔できるかもしれない。

ベッドで横になり、腕を上に伸ばしてスマホをいじってたら、パジャマの袖が下にずり落ちてきた。

露出した自分の腕を見て、にゅっと突き出してきた岩田さんの腕を思い出した。
ふふ、と勝手に頬がゆるむ。

腕の細さがあんなに嫌だったのに、今は凹むどころか楽しい思い出に変わってる。

スマホを片付け、電気を消しながら俺は考える。

岩田さんと話すとほっとする。
ちょっとおっちょこちょいなところが面白いし、俺と話してにこにこしてくれるのが嬉しい。

普段無口な岩田さんが、俺といる時には楽しそうに会話のキャッチボールをしてるように見える。

岩田さんは背が高い。
そのぶん、並んで話すと顔が近くなる。

岩田さんはすごく顔に出る。
真剣な顔、困ってほほえむ顔、焦って言葉を探してる顔、ころころ変わる表情を間近で見られる。

寝返りを打ちながら俺は決めた。

これからは岩田さんが困ってたらすぐに助けられるようにそばにいよう。

まだふたりは付き合ってはいないはずだ。
投了するまで対局は終わらない。
劣勢からの逆転勝ちは珍しいことじゃない。

考えることを放棄したら負けだ。
最後まで粘り強く指し続けた方が勝つんだ。


こちら、少女マンガ「太陽よりも眩しい星」の二次創作小説になります。

主要人物のひとり、鮎川くん目線で書かせていただきました。

本編のネタバレと、私個人の妄想が混ざったものになりますのでご注意ください。

個人的なお話ですが、以前少しだけ将棋をかじったことがあります。
(初心者のまま辞めてしまいましたが…)

鮎川くんは私のイメージする将棋男子そのもの。

寡黙で、でも頭の中では常に思考を巡らせていて。
将棋に興味を持ってくれる人は大歓迎。
対局したらみんなマブダチ、みたいな。笑

あと、対局相手の指し手を見て、どんな性格なのか自然に把握したりもすると思います。
この小説ではその方面の脚色が強めです。

ヘッダーの写真は自前の将棋盤と駒で投了図を再現したものです。
囲碁将棋部の使い込まれた盤駒のイメージとはちょっと違いますがご容赦ください。

勝手なイメージですが、鮎川くんは居飛車の攻め将棋だと思ってます。
(神城は将棋を知らないけど、指すならきっと自由奔放な振り飛車)

原作でもまだまだ攻めモードの鮎川くんを見られますように♡

最後におまけとして、将棋用語の解説を載せておきます。
原作を楽しむのにここまでの知識は不要ですが、鮎川くんファンの方々に捧げるつもりで書きましたので、よろしければご査収ください。笑

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

2023年1月 ちー


おまけ:将棋用語のざっくり解説

・王位戦
将棋の8大タイトル戦のひとつ。
夏に行われ、地方新聞社の合同開催のため、全7局のうちのいずれかが札幌で開催されることがある。
参考サイト→

・棋譜
将棋のスコアボード的なもの。
指し手が記録されている。
「棋譜並べ」は、プロの対局などお手本にしたい将棋を実際に将棋盤と駒を用いて並べてみること。
プロの対局では、勝敗はもちろん重要だが、「評価される良い棋譜を残すこと」も同じくらい重要とされている。

・秒読み
一般的に将棋の対局は時間制で、両対局者に持ち時間が与えられる。
※持ち時間は棋戦により異なる。

持ち時間を使い切った状態が秒読み。
持ち時間がなくなったら即座に負けるわけではなく、手番ごとに30秒ないしは60秒が与えられ、その中で指せばOKというルールが一般的。
秒読みの時間内に指せなければ負けとなる。

※棋戦によっては別途「考慮時間」が与えられることもありますが、複雑なので説明を割愛します。

・詰め将棋
主に終盤力のトレーニングに用いられる。
特定の盤面と持ち駒で、いかにムダなく相手玉を詰ませられるかを考える。
将棋は時間制のため、終盤に持ち時間を使い切ることが多く、30〜60秒しかない状態でも間違った手を指さずに勝ち切ることが大切。
繰り返し詰め将棋を解くことで、「この盤面と持ち駒なら詰む」というのを瞬時に判断できるようになることを目指す。
なお、実践的なものばかりではなく、長手数で芸術的な問題もある。

・手筋
将棋のテクニック。
知っておくと実戦で非常に役立つ。
主に序盤、中盤で活用することが多い。

・定跡
将棋の戦法。
主だったものは研究され、途中までの進行は「この進め方が正解」とされるものがあることが多い。
多岐にわたる変化とその対応を記憶する必要がある。
なお囲碁の「定石」と書き間違えられることが多いが「定跡」が正解。(囲碁は碁石を使うので「定石」と言う)

・駒落ち
両対局者に実力差がある場合、上級者が駒の数を減らして対局すること。
指導対局でよく用いられる。
8枚落ちは飛車1枚+角1枚+銀2枚+桂2枚+香2枚の計8枚の駒を減らした対局。(王将+金2枚+歩9枚を使う)
10枚落ちは8枚落ちからさらに金2枚を減らした対局。(王将+歩9枚を使う)

・上手(うわて)と下手(しもて)、先手(せんて)と後手(ごて)
とてもわかりやすい説明がありましたので参考サイトをどうぞ→

・端攻め
1筋または9筋の端から攻めて切り崩す戦術。

・囲い
定跡のひとつ。
王将(玉将)を守るため、周りに効果的に駒を配置する。
穴熊、美濃囲い、舟囲いなどがある。

・感想戦
対局後に、初手から対局内容を振り返って、勝負所となった分岐点についてそれぞれの感想を言い合う。
(ある程度の将棋プレイヤーは初手から終局までの駒の動きをすべて覚えています)
駒落ちの場合は、上級者が「ここでこう指す良い手があったよ」と指導するケースがメイン。

・投了
負けを認めて「負けました」「参りました」などと挨拶をし、対局を終わらせること。
口に出して言うのがマナーだが、将棋盤に手をかけてお辞儀して示すケースもある。
投了図は投了した局面の図のこと。
アマチュア級位者なら詰みまで対局することが多いが、有段者同士の場合は「詰みが見える展開で、この先この相手が間違えるとは思えない」と判断した段階で投了する。
なお、投了前に「形作り」という慣習が行われることもある。→

※他にもご不明な単語がありましたら、お気軽にコメント欄にてお知らせください。


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