お医者さんの好き嫌い問題
好感を持てるお医者さんに出会えるかどうかは、運なのだろうか。
もし感じがいいな、好きだなと思える先生に出会えたら、ラッキーと思っていいかもしれない。この際、腕がいいかどうかは置いておいて。
わたしの場合、今まで好きになれない先生もいたし、会えてよかったと思える先生もいた。
最初にわたしが関わったお医者さんは、おそらく小児科の先生だ。その先生のことは、なかなかに好きだった。
わたしは物心つく前に手術をしている。
それで、1歳頃にはお医者さんや看護士さんに沢山お世話になっていたらしい。記憶にはないけれど。
物心ついてからは、年に一度くらいの頻度で手術時からお世話になっている小児科の先生のもとに通っていた。
小学校低学年のとき、病院を訪れるとなぜかその先生に感動された。
「大きくなったなぁ!」とか、「字書けるのか!」とか。
あまりに大げさに褒められるので、そのときは子供心に恥ずかしく思ったのだけど、今となっては先生の気持ちもわかる。
赤ん坊の頃から見ているのだから、わたしが会うたび大きくなっていくのに感動があったのだろう。
その先生が、「もしあかねちゃんが生まれたのが50年前だったら、長生きはできなかったかもしれないよ」と教えてくれた。
50年前だったら、私の心臓病を治すことは難しかったらしい。医学は日進月歩だ。現代に生まれてよかった。
わたしにとって最初のお医者さんは、そんな発見をくれた人だった。
成長して大人になり、父が医者にかかるようになってからは、いいなと思う人、嫌だなって思う人、両方のタイプのお医者さんと会った。
わたしが「この人嫌だな」と思った先生は、治療するだけが仕事の人だった。
「やれることはやったので」とイライラした様子で言い、父の病気に対する偏見をわたしや母にぶつけてくるような人だった。
そもそも医者が病気に対して偏見を持っている時点でヒドイと思ったし、それを父に直接伝えない代わりに娘と妻にぶつけてこられて困った。
イライラした様子で話すのが気になって、
「なんか怒ってますか?」
って聞いたら、
「いや別に……そんなことないですけど……」
と戸惑っていた。
先生には先生なりの思いがあったのかもしれないけど。それにしたって、患者に言えないからといって家族を責められてもな、と思ってしまった。
あとは、薬だけ渡せばいいと思っている心療内科の先生。そういう人は嫌い。頼むから薬だけぽんぽん出すのはやめてほしい。
一方で、この先生に出会えてよかったな、と思う先生もいた。
その人は、「治療すれば終わり」ではなかった。
病気になった父の人生の、その先を考えてくれる人だった。偏見も持たず、一人間として接してくれていた。
「あなたは、まだ人生終わってないんですよ」と。
医者と患者。それは家族でも恋人でもなく、他人でしかない関係だ。
だけどその先生は、人間として一対一で患者と向き合ってくれているのを感じた。
それを目の当たりにして、病気を治療するだけがお医者さんの仕事じゃないんだな、と思うようになった。
病気になって、改めて自分の人生を考える人はきっと多い。
そんなタイミングで、誰かの人生と一緒に向き合い、寄り添う仕事をしてる人たちのことを尊く思う。
そんなお医者さんが増えてくれたら、ラッキーどころかとてもハッピーです、わたしは。
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