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『三国駅』を聴いて思い出す人のこと

特定の曲を聴くと、思い浮かぶ人がいる。

Spotifyでaikoの三国駅を聴いていたら、なかなか会えずにいる友達を思い出した。実際に見たこともないのに、ふと、歌詞に出てくるボーリング場を思い浮かべてみたりする。

その友達と出会ったのは大学生の冬で、とある農園で2週間くらいの農協体験をさせてもらったときだった。彼女はそこで農業をしていて、わたしより少し年上で、初めて会ったときは25歳くらいだったと思う。

農園があるのは香川県で、その2週間は社員寮として使われているアパートに泊まらせてもらった。正確にいうと、その友達が住んでるアパートの一室を貸してもらった。

農業は朝早くて、冬だから外は寒くて、たくさん動くからヘトヘトだった。てきぱき動くのが苦手なわたしには向いてなかったけど、農園の人たちはとても良くしてくれた。

その2週間で知り合った人や見た景色はわたしにとってかけがえのないもので、ずっと胸に残っている。


彼女は面白くて優しくて、すぐに大好きになった。出会った初日には、お好み焼きを「おかず」として、わたしの分のお昼を用意してくれていた。

大阪の人はお好み焼きをおかずにご飯を食べるって噂は本当だったのか、とそのとき初めて知った。生まれて初めて、ご飯とお好み焼きを一緒に食べた。意外と美味しかったし、案の定お腹いっぱいになった。

それから2週間と少しの間、友達と二人暮らしみたいな時間を過ごした。

自身の出身地である大阪がとても好きで、大阪あるあるをたくさん教えてくれた。『Yシャツ』じゃなくて『カッターシャツ』って呼ぶこととか、「いくらやったと思う?」って聞いて、安いのを自慢することとか。

その友達はなぜか少しだけベースを弾けて、ある日の夜、椎名林檎の丸の内サディスティックをかけて、弾いて見せてくれた。かっこよかった。

「カラオケでなに歌うん?」って聞かれて、あんまりカラオケ行かないけど「aikoとかかなぁ」って答えた。そしたら、「三国駅って曲があんねん」(大阪弁はうろ覚え)と。歌詞に出てくる『あそこのボーリング場』は、本当にあるんだって教えてくれた。

記憶って本当に頼りなくて、三国駅の詳しいエピソードも、笑い転げるくらいのいろいろな話も、そのほとんどを忘れていて少し悲しい。

ただ、農業体験を終えて帰る前、最後の夜は、なぜか同じ部屋に布団並べて寝たのを覚えている。修学旅行の夜みたいに、ぽつぽつ、くすくす話した。同じ部屋で一緒に寝るなんて、嬉しくてちょっとドキドキした。別れる日の朝は、案の定号泣した。数えてみたら、もう6年も前のことだ。

最初の出会いから6年、その間、2度ほど大阪で会った。最後に会ったのは3年くらい前だから、そろそろ会いたいなーと思う。今の状況、早く落ち着いてほしい。

1年くらい前に近況報告を兼ねて「ライターの仕事をしてる」って言ったら、「すごいなあ!記事送ってな!」と言ってくれた。ただ、書いてしまった以上、これを読まれたら恥ずかしいので、note書いてることはぜったい教えないぞ、と今思った。

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