平成最後の夏、じゃなくても。
去年の夏の終わり、彼と車に乗っていたら、ラジオからフジファブリックの「若者のすべて」が流れてきた。
「夏が終わったんだな」と寂しく思ったのを今でも覚えている。
今年の夏も、もうすぐ終わる。
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今年は、なんだか特別な夏だった。そんな空気感がある。
きっとそれぞれが「平成最後の夏」として思い出す情景を、ひとつやふたつ胸にしまっているに違いない。
一方わたしはというと、今年の夏を代表するようなエピソードを持っていない。 沖縄旅行とか“夏っぽいこと”はいくつかあるけれど、わかりやすいことを思い出の代表にしてしまうのも味気ないな、と思ってしまう。
今年の夏の思い出。
・ラムネやお酒を片手に誰かとおしゃべりする時間が最高だった。
・アイスが美味しかった。人と一緒にアイス食べる幸福感は無敵だ。
・沖縄で、夕ご飯になぜかケンタッキー食べたの意味わからなくて忘れられない。
・混雑したビアガーデンで「もうダメだーー」って気持ちになり、ひとり帰ったら少し気が楽になった。
・逃げるように家を出ようとしたのに、おばあちゃんが野菜とティッシュに包んだ一万円札をくれて泣いてしまった。
いくつか考えてみたけど、どれも夏を語るには不十分すぎるし、甲乙つけ難いくらい十分すぎる。
目立つエピソードじゃなくても、それぞれの夏が特別で最高。
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去年の夏、車中のラジオで聞いた「若者のすべて」を、今年はテレビで聞いた。CMの曲で使われていたのだった。
来年も、きっとまた何かのきっかけでこの曲を聴くんだろうな。それで、「夏が終わるね」って言ったり思ったりしてるんだろうな。
去年も今年も来年も、思えばいつだって最後の夏だ。 最初や最後はすごく大事にするのに、不思議とそれ以外はあまり気に留めてなかったりする。
今年に限らず、その年最後の夏を大切にできればいいのにな、と思う。
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