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タイ旅行記⑦【水は幾重にも流れ、また湧き出でる】

カフェのお姉さんに声をかけられ振り向きながら立ち上がると、「あちらの人たちがこれから滝へ行くから、あなたを車に乗せて行ってくれるって」

?!耳を疑う…

だって、こんな展開あるーーー?!😳

ご家族連れだろうか、大人や子ども何人かの人たちがカフェの奥の席から私のいる入口の方に来て、その中のお父さんらしき人が「サームランに行くよ」と話しかけてくれる。サームランというのは、私が行きたい滝の名前だ。

ありがとうございます!
お父さんに言って、それからカフェのお姉さんにもお礼を言っておじぎをする。
「ありがとうございます!!」

「いいよいいよ、バイクタクシーに電話してね」お姉さんは、いいからいいからという感じで見送ってくれた。
きっと他のお客さんにこの後の予定を聞いて、あの人乗せてあげられない?と聞いてくれたんだろう。
レモンソーダ1杯じゃとても足りないくらいのお世話になってしまった。

(バイクタクシーのドライバーさんには後で電話したけど、お互いにカタコト英語なのであまり通じなくて、たぶんよく理解できなかったと思う…おじさんごめんなさい…)

お父さんが「さぁ行こう行こう」と朗らかに言って駐車場の方へ誘導してくれる。
小学生くらいの男の子が小走りで私たちを追い抜かし、振り返って「go with me〜♪」と微笑んだ。

お父さんが旅程を聞いてくれて、今日バンコクに戻り、明日は日本に帰国することを話しながらも、まだこの幸運が信じられなくて、どこかボーッとしたまま皆さんについて行く。

車にたどり着き、お子さんがシートへ案内してくれる。
車はワゴン車🚐 、4列シートで車内はとても広い。私は運転席後ろの席に座らせてもらった。
けっこう大人数のご家族だなと思っていたら、車に乗って7人いるとわかった。大人3人と子ども4人。子どもはさっきの小学生くらいの子、中学生くらいの子が2人、高校生くらいの子が1人。2家族なのかもしれない。

車はサームラン滝へ向けて走り出した💨

一度はあきらめかけたサラブリー行きが叶い、そして今、サラブリーで2つ目の目的地へと向かうことができている奇跡✨
何人もの親切な人たちに出逢え、助けてもらえたことに感謝しかない。

「ねぇ見て」斜め後ろの席の"go with me〜♪"の子が話しかけてくる。
手に握られているのはルービックキューブ。
それを私に渡してきて、解くからぐちゃぐちゃにしてと言っているようだ。

適当に10回くらい回して返そうとすると、「easy easy〜」と笑って、受け取ろうとしない。
さらに追加で回して返すと、余裕そうな顔😏ニヤリ

「40seconds〜」運転席のお父さんが言う。
これは、40秒チャレンジということか?
男の子の隣席の子がスマホのストップウォッチをスタートする⏱

カチャカチャカチャカチャ…高速で手とキューブが動いていく。

動画で撮ってたのを切り取ったらこんなスピード💨

ルービックキューブが得意な人の脳みそがどうなっているのか、ゴールまでの道のりがどう描かれているのか、私にはまったくわからない。
ただただ、意思を持ったよどみない手の動きに目を奪われる。車内のみんなが見守っている。
あっという間に色の揃った面が増えていく。

できた!🟥🟧🟨🟩🟦🟪

最後の方はもう”揃ったな”って感じでニコニコしながら回してた😁

完全に色の揃ったキューブを私に見せてドヤ笑顔の彼。隣席の子がすかさずストップウォッチを止めて見せてくれる。46秒!天才や!

Awesome!!👏👏👏👏👏✨

得意げな顔がとってもかわいい☺️

車は舗装されていない林道のようなところを入って行く。滝に近づいて行っている気配。
ずっと滝、滝と言っているが、向かう先は「Namtok Samlan National Park(ナムトック・サームラン国立公園)」という場所。そう、国立公園なんである。
滝だけがあるわけではなく、広大で自然豊かな国立公園の中に滝があり、キャンプ場があり、という場所なんである(後で調べたら、公園の面積は約44.57平方キロメートル!)。

そりゃカフェのお姉さんも徒歩で行くのに難色を示すわな。歩いて来る人なんておらんでしょ。とにかく計画が甘い私…

林道の脇に小屋のようなものが現れるとお父さんが車を一時停止させ、小屋の外にいる人にお金を支払っている。
きっとここが国立公園の入口か、その駐車場の入口なのだ。
払っているのは駐車場代?それとも入場料?
国立公園だから入場料かかるよね。そうだよ調べたとき有料って書いてあったじゃん。
お金のことを聞くと、お父さんもお母さんも「いやいや、いらないいらない」と言ってくれたけど、私の分も出してくれたんだと思う。

駐車場で車を降り、滝へ向かう。
ルービックキューブの少年が行こう行こうと一緒に歩いてくれ、「あなたのお名前は?僕は〇〇だよ」(この旅行記ではPくんと呼ぶことにする)と話しかけてくれる。
彼はルービックキューブだけでなく英語も上手でまた感心する。しかも大人の私より会話がスムーズ。

ほどなく、「Samlan Waterfall」の看板が現れる。「300ぐにゃぐにゃ」の表記は、滝まで300mの意味だろう。

サームラン滝まで300ぐにゃぐにゃ(300メートル)

ここでご家族が記念写真を撮ってくれる。まるで”もともと知り合いで、一緒に公園に遊びに来た人たち”みたいな写真だ。

フレンドリーなご家族のおかげで、
15分くらい前に知り合ったばかりなのにもともと知り合いだった感ある☺️

道はトレッキングの様相を帯びてくる。
岩があり、砂利があり、草が生え、木の根が這い、水たまりがそこここにある。
横に並んで歩けないところはPくんが私の先を行ってくれるのでついて行く。
足元を見ていないと歩けないような道なので、Pくんの行くところと自分の足元のあたりを見ていると、自然Pくんが通るところを同じように踏んで行くことになる。
彼の選ぶルートはなかなかにヤンチャだ。ぬかるみも水たまりも躊躇なく通って行く。同じルートを行く私の足はすぐにびしょ濡れ。とくに水陸両用でもないサンダルを濡れないようにするのは早々にあきらめた。
本当のところ、濡れるのなんか気にしないで彼のようなワイルドルートを選ぶ方が私も好きなのだ。

そこ行くかーっていう水のあるとこをジャブジャブ入っていくPくん🚶

後ろから来る女性陣は、上手いこと木の根や岩の上を飛び飛びに歩いて来ている。

助け合いながら上手いこと水たまりを避けて歩く皆さん

しばらく行くと小さな滝が現れ、Pくんが笑顔で振り向く。
落差の小さな、横に広い滝だ。小さくても水の音はゴウゴウと激しい。
求めていた滝、求めていた水辺に出会うことができて、何とも言えない気持ちになる。

さらに進むと再び「Samlan Waterfall」の看板。落差はそれほどでもないが、横幅のある滝が何段も棚田のように重なっている。飛沫の白と、周囲の森林の緑が眩しい✨ここがサームラン滝!

サームラン滝到着‼️🙌

「写真を撮ったら?」Pくんが言って、滝がよく見える位置を譲ってくれる。
水辺の景色と水の音が、静かな高揚感と落ち着きをもたらしてくれる。
自然の中に身を置くと、自分の体と心がぴったり重なる気がして、体にも心にも実感が湧いてくる。

人はけっこういる。その多くが水着を着て水浴びをしている。その様子がまた、この場所の清涼感を増している。
水着を持っていたら飛び込みたいところだけれど、泳いでいる人たちを見ているだけでも気持ちがいい。

写真を撮って振り向くと、ご家族の数人がサンダルを脱いで水の中に足を浸けていた。
空いているスペースに入れてくれて、私もサンダルを脱いで水に足を潜らせる。実際に足を入れると、やっぱり見ているだけよりもっと気持ちがいい。

水辺だから涼しいと思われるかもしれないが、気温は高く、ここまでのトレッキングで全身が汗ばんでいる。
足の一部であっても、水浴びすると汗が引いていく心地がしてリラックスできる。滝や泳いでいる人たちを眺めながら、ふくらはぎから下の足でちゃぷちゃぷと水を弄ぶ。

👣♪✨

隣りに座っていたお母さんが、さらに上があるから良かったら行って来たらと言うのでそれならと、濡れた足を雑に手ぬぐいで拭き、サンダルを履いてまたトレッキング。
ご家族のうち、高校生くらいの女の子が一緒に行ってくれる。
今度はさっきまでよりもさらに山道だ。細いので、下って来る人たちと道を譲り合いながら登って行く。
時には木に掴まらないと越えられない段差なんかもあり、アドベンチャー感満載の道のり。

横にはずっと棚田のような滝の景色が続き、その一番上が見えるところまで歩いて、来た道を引き返す。

一緒に来てくれた、というか先導してくれた彼女はPくんとは対照的な道選びで、ほとんど靴を濡らさずにここまで来ているのだからすごいフットワークだ。

彼女(Lちゃんと呼ぶことにする)は日本の食べものが好きだと言う。
Lちゃんは英語を話せないと言っていたけれど、こうしてコミュニケーションを取ろうとしてくれる。
どんな日本食が好きなの?と聞いてみる。
「ハトムギ」
!ハトムギ!思わず大きい声で繰り返してしまう。そんなマニアックな答えが来るとは思わなかった!

下山してご家族と合流し、「サームラン滝まで300m」のところまで戻る。

滝のある公園まで車に乗せていただくつもりが、滝まで連れて行ってもらい、すっかり一緒に過ごさせてもらった。
一人で来るのの何十倍も楽しい時間だったなぁ、ここからの帰りはタクシーを呼んで…と思っていると、駐車場から来た道とは別の方向に進んで行くご家族。

「この公園には3つの滝エリアがあって、サームラン滝はそのうちの1つなんです」
Lちゃんが説明してくれる。これから2つ目の滝エリアへ向かうと言う。
終わりと思ったらまだ滝を楽しめるの!?なんてうれしい滝三昧♪

「Po Hin Dad Waterfall 350ぐにょぐにょ」の看板が現れ、「ポヒンダッド」滝だよとお父さんが教えてくれる(ダッドのドはほとんど発音しない感じだった)。

ポヒンダッド滝まで350ぐにょぐにょ(350メートル)を指差すお父さん👈

お父さんはキレイめカジュアルな靴で来ていたので、たぶんあまり濡らすわけには行かず、行っておいでと私たちを見送ってくれる。
「セルフィーも撮って来るんだよ」の声が優しい。
お父さんがああいう靴だったのは、もしかして滝に来る予定ではなかったのでは?とちょっと思ってしまう。こんなに都合良く、あのお寺に行ってからこの滝に行く人に会えるものだろうか?

ポヒンダッド滝はサームラン滝より小規模だけれど雰囲気が異なる。
ごつごつとした岩肌を縫って落ちてくる水の筋は野生的で、サームランより落差がある。
こちらでも水着で水浴びを楽しんでいる人たちがいた。そういえばサラブリー県は海に接していないから、水遊びと言うとこうして皆さん滝に来るんだろうか。

途中の道で大きなムカデに驚きながら(20×2cm +足足足…くらいあった🐛)、お父さんお母さんが待っているところまで下ると、みんなとの記念写真を撮ってくれた。これがとってもいい写真😍

👍🫶🫶🫶✌️

そこからさらに下山。本格的にではないにしろ久々の山登りはけっこう足にキテいるようで、膝から下にあまり力が入らなくなって湿った道の上で何度も滑る。
皆さんが疲れた?と心配してくれる。
足は疲れているかもしれないけど精神的には疲れるどころか元気になったので、疲れてないと言うと、「疲れてないってー」「そうかそうかー」と皆さん微笑んでくれた。

サームラン滝からの分岐まで戻りそのまま駐車場の方向へ行くとトイレがあり、行くかどうか聞いてくれたので大丈夫と言ったけれど、行っておこうと誘ってくれる。
ここでまたペーパーがなく水で流すタイプのトイレなので時間がかかってしまったのだけど、女性陣の皆さんがトイレの出入口で待っていてくれた。

そうして一向は駐車場へ向かう。どうやら3つ目の滝までは行かないようだ。
車のドアを開けて促してくれたので私も車に乗り込む。
だけど帰るならここからはタクシーで…と思っていると、Lちゃんが車にケースで積んであったミネラルウォーターを取り出して、1本私に手渡してくれる。

水ー!!ここまでしてくれた上にさらに水ー!!😭😭
ここはもうあれですかね、天国ちゅうとこですかね?来るとこ来ちゃったかんじですかね?

結局のところ、水にも車にも甘えてしまい、そのまま車は発進。
隣席のLちゃんやお父さんお母さんがいろいろ話しかけてくれる。

Lちゃんは日本のドラマ「First Love」が好きだと言って、ネットで検索して見せてくれた。
私は見たことがないけど、この俳優さんは日本で有名な俳優さんだよと言うと、タイでも有名で、共演の俳優さんも有名だと教えてくれる。
ハトムギのことと言い、Lちゃんは私より日本通だ。
私の方も、タイドラマを見て出演俳優さんがサラブリー出身で、それでここに来たというようなことを話す。

お父さんがタイで他にどこか行ったか聞いてくれたので、バンコクとサラブリーだけだと答えると、アユタヤを勧めてくれた。歴史ある見どころの多いところだからぜひ行くといいという熱心な勧めに、アユタヤへ行きたい気持ちが募る。
時間があればこの後アユタヤに行きたかったけれど、ベトナム料理レストランへ行ったらその時間はもうないだろう。次回きっと行くぞとアユタヤへの想いを強くする。

「バンコクへはバス?それとも電車?」
「電車です」
「何時の電車?もう切符は買ってあるの?まだなら調べようか?」
「あ、いえ、あの、行きたいベトナム料理レストランがあって、そこに寄ってからバンコクへ戻ろうかと」
運転中のお父さんと会話しながら隣りのLちゃんにレストランの情報を見せると、Lちゃんがタイ語でお父さんお母さんに話しかけ、そしてお父さんが私に…

「そのレストランへ送って行ってあげる」

レストランへはサラブリー駅から近くまで行くバスがありそうで、時間も10分ほど。最悪歩いても行けなくない距離のようだった(すぐ歩こうとする💦)ので、もちろん自力で行くつもりだった。
それが、たぶん駅まで送ってくださろうとしていた途中で、さらに先の場所まで行ってくれると言うのだ…!

始めからこのご家族にはまさかの展開でここまでご一緒させていただいたけれど、ここでまたまさかの展開。大大大感謝しかない。

「雨が降るなぁ」濃い色の雲が空の向こうに見えてきて、お父さんが言う。スコールが来そうだ。
ご家族の優しさに感動して、私の方が空より先に泣きそうな気持ちになってくる。

やがて車はサラブリーの中心地へ。踏切待ちの車の列の前を、貨物列車が通って行く。「ここを右に行くと電車の駅だよ」お父さんが教えてくれる。

Lちゃんがレストランの場所を調べてお父さんに伝え、車は店が立ち並ぶ交通量の多い繁華街を進んで行く。
地図によると、レストランは繁華街の表通りには面していない。Lちゃんのナビで車が細い路地に入って行くと、その道にもお店がいくつか並んでいる。
数十メートル行くと、ネットで見覚えのあるレストランが現れた。

昨日のファンミ(タイ旅行記③)でステージに立っていたFirstさんのお父さんが店の外へ出て来て、奥の駐車場へ誘導してくれる。

車は私を降ろすためにいったん駐車場に停車。
半日お世話になり、自然の中を一緒に冒険したこのご家族ともお別れの時。
心からの感謝の気持ちを、タイ語では一言でしか表せなかったけど皆さんへ伝える。Pくんにはルービックキューブパフォーマンスのお礼も。
皆さん疲れていただろうけれど、最後まであたたかい笑顔で返してくれた。私の中にあたたかい気持ちが滝のように湧き出しては溢れる。

Lちゃんが私より先に車を降りて、Firstさんのお父さんへ何かお話ししに行ってくれる。どうやらお客が私一人であること、日本人でタイ語が話せないことなどを伝えてくれているよう。

大きなワゴン車が来て大人数のお客さんが入ると思っただろうに、Firstさんのお父さんはガッカリした顔を見せずに私を歓迎してくれた。

Lちゃんにもう一度お礼を言って、それから道中で看護学校生と聞いたので「頑張ってね」とタイ語で言ってみた。通じただろうか。
Lちゃんが車に乗り、車が動き出す。皆さんと手を振り合い、車が行ってしまうのを見送るまでのあいだ、Firstさんのお父さんは待っていてくれる。

見送ってFirstさんのお父さんの方へ向き直ると、おそらくは珍しい外国人の一人客にちょっと不思議そうな表情を浮かべながらも、笑顔でお店の中へ招き入れてくれた。

(タイ旅行記⑧へつづく)サラブリーの旅もそろそろ終盤…

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