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かかとを上げる運動って本当に大事なの?

アルコネクト代表市川です!

歩行時の歩行速度を向上するためには”推進力”が影響し、重要な役割を果すのが「Trailing Limb Angle(TLA)」です。

TLAとは、大転子から第5中足骨頭へのベクトルと垂直軸のなす角度と
定義され、この角度が大きいほど、推進力が大きいと言われています。

図1 Trailing Limb Angle (TLA) 

さらに脳卒中の患者さんでは、マヒ側の推進力と連続歩行距離(長く歩く力)には関係があるとも言われており、歩行のリハビリテーションにおいて重要なテーマと言えるかと思います。

推進力を考えたときに、TLAとセットで大切なのが足関節底屈(つま先を下げる)です。

TLAと足関節底屈との関係性をみると、歩行速度を上げていくときに、影響が大きいのがTLAとされています。(TLA:足関節モーメント=3~4:1)

しかし、足関節底屈は歩行速度や歩幅の変動との関係があるとも言われており、TLAと比べて関与が小さいとは言え、重要な役割を果します。

足関節底屈筋力を筋力低下させたシミュレーションでは、60%ほど
低下させると歩行に変化がみられたとしています。

つまり足関節底屈が十分に発揮できない状態では、歩き方まで影響があるということです。

では、足関節底屈の筋力を鍛えれば推進力が上がるのか?
答えはノーです。

脳卒中患者さんのマヒ側の推進力は、歩行速度と関連があったものの、
なんと足関節底屈筋力とは関係性が低かったと言われています。

ポイントになるのが、セントラルドライブです。

セントラルドライブは、最大随意筋力(自ら出せる最大限の力)に
電気で補助して、限界を引き出したときの力です。
このセントラルドライブとマヒ側の推進力には関係性があり
セントラルドライブが大きい方が、推進力が高い傾向があると
言われています。

筋トレに効果がないわけではありません。
筋トレを行うと、足関節底屈の筋力が向上・歩行速度も上がります。

しかし力を調節に注目したフォーストレーニングを行うことで、
歩行速度だけでなく歩幅の変動が減少したとしています。
筋トレではみられなかった歩行の質的な部分に効果がみられたのです。

ちなみにフォーストレーニングでは、筋力向上はみられませんでした。
以上を踏まえると、ベースアップとして筋トレを実施しつつ、歩き方の修正や筋肉を使い方を練習する必要があるのかも知れません。

さらに歩行時の推進力は、腓腹筋・ヒラメ筋・大腿四頭筋・そして大殿筋が重要な役割をします。さらに機能的な歩行を考えると中殿筋の働きも
見逃せませんし、歩行練習も大切です。

歩行速度向上には推進力が関係しながらも、推進力が高い=歩行速度が速いということが成り立たない場合があります。

少しややこしいですよね。

脳卒中患者さんでは、推進力は低くくても非マヒ側(マヒの影響がない側)で頑張りすぎてしまい、歩行速度が速いことがあります。
特に、歩行速度が速くすればするほど非マヒ側の頑張りが増したとされています。

練習場面では、その点に注意が必要なのかなと思っています。

こちらの動画は、かかと挙げの練習を行っているところです。

私が注意しているポイントは2点です。
①体幹や股関節など足関節以外のアライメントが整っているか?
 (悪い姿勢になっていないか)  
②挙げる高さ・速度を変化させる


本コラムが少しでも皆さまのお役に立てましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

【参考文献】 
1)Roelker, Sarah A et al.
“Paretic propulsion as a measure of walkingperformance and functional motor recoverypost-stroke: A review.” Gait & posture vol. 68 (2019): 6-14. doi:10.1016/j.gaitpost.2018.10.027

2)Awad, Louis N et al. “Paretic Propulsionand Trailing Limb Angle Are Key Determinantsof Long-Distance Walking Function After Stroke.
” Neurorehabilitation and neural repair vol. 29,6 (2015): 499-508.
doi:10.1177/1545968314554625

3)Hsiao, HaoYuan et al.
“Mechanisms to increase propulsive forcefor individuals poststroke.” Journal of neuroengineering and rehabilitationvol. 12 40. 18 Apr. 2015,
doi:10.1186/s12984-015-0030-8

4)Waterval, N F J et al.
“Validation of forwardsimulations to predict the effects of bilateral
plantarflexor weakness on gait.” Gait & posture vol. 87 (2021): 33-42. doi:10.1016/j.gaitpost.2021.04.020

5)Chung, Chul-Min et al.
“Determination of the Predictors with the Greatest Influence on Walking in the Elderly.” Medicina (Kaunas, Lithuania)vol. 58,11 1640. 13 Nov. 2022,
doi:10.3390/medicina58111640

6)Awad, Louis N et al.
“Central Drive to the Paretic Ankle PlantarflexorsAffects the Relationship Between Propulsion and Walking Speed After Stroke.” Journal of
neurologic physical therapy : JNPT  vol. 44,1 (2020): 42-48. doi:10.1097/
NPT.0000000000000299