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企業と顧客の「価値共創」

読書ログとして、テーマごとに書籍を読んでまとめているnoteですが、今回は「サービス・ドミナント・ロジック」について以下の論文を読みました。

文脈視点による価値共創経営:事後創発的ダイナミックプロセスモデルの構築に向けて
製造のサービス化:「サービス・ドミナント・ロジック」による考察
S-Dロジックの文脈価値に関する一考察

サービス・ドミナント・ロジックについては、これらの論文を読んだだけではさわりの概念を理解できる程度にしかなっていないことを前提に、この世界ではどのような価値共創が行われていくのかを整理したい。

サービス・ドミナント・ロジックとは

論文ないではS-Dロジックを理解するために、G-Dロジックと対比しながら整理が行われている。

【G-DロジックとS-Dロジックの違い】
①サービス観の違い
②価値概念の違い
③顧客像の違い

G-Dロジックが、世の中には「モノ」と「モノ以外の何か(=サービス)」がある、という世界観だとすると、S-Dロジックは、世の中で行われている経済活動をすべてサービスととらえ、「モノを伴うサービス」と「モノを伴わないサービス」がある、とする世界観である(①サービス観の違い)

G-Dロジックは、価値を生み出すのは企業であり、顧客は企業から生み出した価値を消費する、という企業から顧客への一方的・分業的な「価値生産」と「価値消費」を前提とする。S-Dロジックは、価値を生み出すのは企業と顧客の双方であり、相互作用を通じて価値を創造する、という双方向的・協業的な「価値共創」を前提とする。
また、G-Dロジックは、企業がつくったモノやサービスが市場で対価と交換されることを通じて実現する「交換価値」を重視し、S-Dロジックは、企業と顧客の双方で製品やサービスの購買時前後に、さまざまなやり取りをする文脈の中で実現する「使用価値」や「文脈価値」を重視する。(②価値概念の違い)

G-Dロジックにおける顧客は、企業が創り出す価値を消費する消費者であり、企業活動の対象としての客体としてとらえられ、価値創造活動における役割は限定的である。S-Dロジックでは、顧客は消費者であると同時に価値の生産者としての役割も担い、企業活動の客体としてではなく、企業と協働して価値を共創する主体であると捉えられ、価値創造活動において主要な役割を担うと考えられる(③顧客像の違い)

価値共創の動機と事後創発性

顧客が価値共創に従事する3つの動機として記載されているが、どの動機をもって従事しているのかは対象となるサービスの特性、共創の度合い、価値共創をしていることを自覚しているのか、無自覚なのか様々な要因によって異なると思っている。

・経済的動機
・心理的動機
・社会的動機

そのため、論文でも記載されている通り、企業と顧客が関わり合う最初の段階では、事前計画として想定していなかった企業側の価値提案や顧客側の動機が双方の関わりを通じて事後創発的に生み出されているということを知ることは非常に重要だと感じた。

顧客と共に、価値共創を行いたいと思っている企業は多数存在するし、価値共創が成功すれば競争優位にもつながるだろう。

しかし、価値共創にはプロセスが存在していることを理解していないと単発的な取り組みになってしまい、顧客に実感のない状態に終わってしまうことがあるのではないかと思った。

価値共創を行う上で大切なこと

リアルな場でのファンイベントやオンラインでの活動も含めた、ブランドコミュニティの支援を行っている経験と今回改めて論文を読んで明確に大切だと再確認した点は以下の通り。

・まずは、顧客自身が価値共創に参加すること自体に体験する楽しみや達成感を味わえるようにする
・顧客が参加する動機をプロセスごとに仮説設計しておく
・価値共創に参加している顧客が、持っている「使用価値」「文脈価値」を特定し、価値共創するときの顧客タイプを判別しておく
・価値共創できるポイントはどこなのかを決めておく(商品開発?Webサイトのコンテンツ制作?PRイベントへの登壇?など)

ブランドコミュニティでは、顧客を巻き込み価値共創をしていくことを前提に考えていく潮流があるが、だからこそ顧客を理解して、中途半端にならないようなプロセスの設計が重要だと感じた。

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