見出し画像

"特別"を大人買いしたらなんか違った話

185㎖の缶飲料で「午後の紅茶エスプレッソティー」が発売された。
最初にこれが発売されたのは11年前、2010年の秋だったと記憶している。

そのとき私は大学3年生で、今のように缶コーヒーが飲めなかったので缶飲料を買うという習慣がなかった。
けれども大学の自販機でそれを見つけたとき、ちょっぴり高級感のあるデザインに惹かれたのとミルクティーがもともと好きであることから、気になって1本買って飲んだ。

それはこれまで飲んだミルクティーとは全然違っていた。
苦いのに飲みやすい、落ち着きのある味。
それは私の中で「特別」と形容するのがぴったりな飲み物となった。

貧乏学生だったのでそう頻繁に買うわけにもいかず、時々の楽しみという位置づけだった。
やがていつの間にか生産終了となっていて、午後の紅茶エスプレッソティーと共に在った時間もなんだか夢のような感覚となってしまった。

そうしてこの春、再販となっているのを見つけた。
早速1本買って飲む。当時と変わらない味、香り。
2010年の私は間違いなくそこにいたと思わせてくれた。
失くしものを見つけたときのような嬉しさを感じた。

今なら大人だから午後の紅茶エスプレッソティーだって好きなだけ買える。
大学生のときの自分の願いを叶えるかのように、30本入りの箱を注文した。
発送に1週間かかるということで、その間は本当に楽しみで仕方がなかった。

そうして待ちに待ったその日。
重たい箱を受け取って開封して、30本並んだ缶を見てまず思ったのは「しまった」だった。
「特別」はこんなに沢山あるものじゃない。
願いを叶えすぎてしまったらそれは只の日常になってしまうのだ。

だから夏になると発売される「Boss地中海ブレンド」を今年初めて見かけたとき、箱では買うまいと思った。

(とはいえ「特別」がすぐそこにあるのはやっぱり嬉しく、冷蔵庫には常に2本ずつ「午後の紅茶エスプレッソティー」が冷やされている。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?