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半導体向けの水素需要量予測と想定需要家について


<半導体製造における水素の必要性>

半導体製造では、微細な不純物があるだけでも回路に損傷が起こり、性能が低下する等の致命的な問題が発生します。
そのため、残留物を洗い流す工程が必要になりますが、ここで洗浄液の役割を担うのがフッ化水素です。
集積度が日増しに高まる半導体工程の特性を考えると、不良率を最小限に抑えるには、超高純度のフッ化水素が必要です。

1.日本における半導体製造に関わる水素の現状

日本の水素産業は世界をリードしており、2兆円のグリーンイノベーション基金を活用し、その動きがさらに加速しています。
日本政府は、主に半導体製造に使うフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3品目の対韓輸出管理について、2019年7月に実施した厳格化措置を緩和することを決めました。
また、日本では政府が、「水素基本戦略」の改定版を取りまとめ、今後15年間で官民で15兆円の投資計画や、2040年に水素の供給量を現状比6倍の1200万トン程度に拡大する目標等を盛り込んでいます。
これらのことからも半導体製造における水素の必要性と現状は、日本の半導体産業にとって重要な要素であることがわかります。

2.日本での半導体用水素の年間需要予測

さて、ここで日本の半導体用水素の年間需要を推定し、2030年に予想される顧客を予測するには、現在のデータ、業界の動向、半導体製造プロセスに関する具体的な考慮事項を組み合わせる必要があります。

 1)現在のシナリオ(2022年)からの仮説
現在の半導体用の水素の年間需要を推定するには、半導体製造施設での平均水素消費量(ウェーハあたり)を考慮し、それに日本で年間生産されるウェーハの総数を掛けることができます。
ウェーハあたりの平均水素消費量がX立方メートルで、日本で年間に生産されるウェーハの総数がYであると仮定します。現在の半導体の年間水素需要はX×Yとなります。

 2)想定される顧客とプロセス
想定される顧客とプロセスは以下の通りです。
 ①イメージセンサーメーカー:イメージセンサーの製造中の洗浄とパッシベーションのため、半導体製造プロセスで水素が一般的に使用されます。
 ②ロジック半導体メーカー:ロジック半導体の製造には、エッチング、蒸着、イオン注入等の様々なプロセスが含まれます。水素は、プラズマ化学蒸着(PECVD)やアニーリング等のプロセスで使用される場合があります。
 ③ウェーハ製造メーカー:ウェーハの製造では、洗浄や表面処理の工程で水素がよく使用されます。

3.2030年の需要予測

2030年の需要を見積もるには、半導体産業の成長、特にTSMCの新工場建設を考慮する必要があります。TSMCの新しい工場からの追加需要は個別に計算され、推定される業界の成長に加算されます。
TSMCからの追加需要をZと表します。2030年の半導体向け推定年間水素需要は(X×Y)+Zとなります。

4.試算ロジック

需要量を試算をするするには、国内で年間に生産されるウェーハ総枚数を考慮し、現状のウェーハ当たりの水素消費量を把握し、新規設備による追加需要も考慮しています。使用されるロジックは、水素消費量が半導体生産量に直接比例するという仮定に基づきます。
但し、実際の水素消費量は技術の進歩、プロセスの変更、効率の向上によって変化する可能性があることを考慮することも重要です。
より正確な推定には、製造プロセスごとの水素消費量、半導体施設の能力や成長予測に関する業界固有のデータが必要となります。業界の専門家と協力し、半導体メーカーと協議することで、詳細な分析のためのより正確な数値を得ることが出来ます。

<半導体用水素需要推移>

ここで、過去20年程度の半導体向けの水素需要の推移を振り返ってみましょう。

1.半導体の年間水素需要(2000年~2023年)

 1)歴史的背景
半導体産業における水素の使用は、長年にわたって大幅に進化してきました。当初、水素は主に精製および化学産業内の従来の用途に使用されていました。

 2)最近の傾向
世界的に水素の使用は増加傾向にありますが、需要は依然として上記の分野に集中しています。使用される水素のほとんどは未処理の化石燃料から生成されます。

 3)低排出水素への移行
気候目標を達成するには、既存の水素用途を低排出水素に移行することが緊急に必要です。さらに、水素の利用を重工業や長距離輸送における新たな用途に拡大することが重要です。

 4)2030年の見通し
 ①2030年までに、技術の進歩と産業の成長により、半導体用の水素需要が大幅に増加すると予想されます。
 ②必要とされる重要な要素
 (a)TSMCの新工場:台湾積体電路製造会社(TSMC)は、半導体製造の大手企業です。その新しい工場はさらなる水素需要に貢献するでしょう。
 ③想定される顧客とプロセス
 (a)イメージセンサーメーカー:これらの会社は、カメラ、スマートフォン、その他のデバイスで使用されるセンサーを製造しています。水素はエッチングや成膜等様々なプロセスで使用されます。
 ④ロジック半導体メーカー:ロジックチップはコンピューティングデバイスに電力を供給します。水素はイオン注入等のプロセスで役割を果たします。

 5)水素需要予測
 ①関連情報
2000年から2023年までの半導体における水素需要の履歴データは、国際エネルギー機関(IEA)が世界の水素の生産と需要データを提供しています。
出版物ではGlobalHydrogenReviewが、世界中の水素トレンドについて整理されています。
詳細な過去のデータについては、IEAのレポートやその他の関連情報源を参照することをお勧めします。

 6)その他、関連情報

https://www.mckinsey.com/industries/oil-and-gas/our-insights/global-energy-perspective-2023-hydrogen-outlook

https://observatory.clean-hydrogen.europa.eu/sites/default/files/2023-11/Report%2001%20-%20November%202023%20-%20The%20European%20hydrogen%20market%20landscape.pdf

https://hydrogencouncil.com/wp-content/uploads/2023/11/Global-Hydrogen-Flows-2023-Update.pdf

 ②グローバル水素レビュー(IEA)
国際エネルギー機関(IEA)は、「グローバル水素レビュー」を毎年発行しています。このレポートは、インフラ開発、貿易、政策、規制、投資、イノベーション等の重要な分野を含む、世界中の水素の生産と需要を追跡しています。
残念ながら、半導体固有の水素需要に関する詳細な過去のデータは、このレポートでは明示的に提供されていません。
ただし、IEAのグローバル水素レビューは、需要が主に精製や化学産業等の伝統的な分野に集中している、世界的な水素利用の増加を強調しています。この水素の大部分は、未処理の化石燃料から生成されます。
気候目標を達成するために、既存の水素用途を低排出水素に移行し、その使用を重工業や長距離輸送における新しい用途に拡大する必要性が高まっています。

 ②2030年の予測
2030年までに、技術の進歩と産業の成長により、半導体用の水素需要が大幅に増加すると予想されます。
重要な要素には、TSMCの新工場と想定される顧客(イメージセンサーメーカーやロジック半導体メーカー等)が含まれます。
水素は、エッチング、成膜、イオン注入等の様々な半導体プロセスで使用されます。

 ③追加リソース
半導体の水素需要に関する具体的な表やグラフは直接入手できませんが、包括的な考察については、IEAのGlobalHydrogenReviewやその他の関連レポートを参照することをおすすめします。
これらのレポートは、水素のトレンドに関するより広範な背景を提供し、エネルギーと気候の目標を達成する上での水素の役割に関する議論に情報を提供しています。

これらの推定値は概算であり、半導体の水素需要に関する具体的なデータには業界固有の調査が必要であることをご承知置き下さい。
水素イノベーションに対する日本の取り組みとその戦略的ビジョンにより、水素は探求にとって魅力的な地域となっていると感じています。
GlobalHydrogenReview2023では、インフラ開発、貿易、政策、規制、投資、イノベーション等の重要な分野の進歩を含む、世界中の水素の生産と需要に関する詳細な情報を提供していますので参考にして下さい。

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